敦賀市市長の「原子力規制庁の立ち上げがないと原発再稼動の議論はできない」て意見はもっとも

 報道によれば、日本原子力発電が運営する敦賀発電所を擁す福井県敦賀市の河瀬一治市長は、22日、枝野経済産相と会談。その後の記者会県で、「原子力規制庁の立ち上げがないと原発再稼動の議論はできない」と発言するなど、原発の安全規制には規制庁の発足が欠かせない旨、主張されたそうです。

 これは、当然、敦賀市長としては、そのように考えざるを得ない、という意味でしょう。

 NHKのNEWS webにて公開されたコンテンツ「保安院“規制庁発足するまで業務”」他、複数の報道メディアが報じていました。
 NHKの報道は、原子力規制庁が4月1日に発足することが難しくなっている国会情勢を受け、原子力安全・保安院側から「規制庁発足まで、安全・保安院が安全規制の業務に当たっていく」と表明したことをメインに報じたコンテンツです。

 で、NHK報道によれば、安全・保安院側は「保安院への信頼については、いろいろ意見があると思うが、規制庁が発足するまでは最大限努力していく」と、述べたとも。


 アタシは、敦賀市市長の意見の方がもっともだと思います。
 安全・保安院にしてみれば、「やることになってる仕事」を粛々としなくてはならない、立場なのでしょうけれど。

 例えば、敦賀原発と同じ福井県にある大飯原発関西電力)について、原子力安全委員会は、安全・保安院が評価をとりまとめたストレステスト1次を了承しつつ、同時に、「2次評価も加えなければ安全性の確認はできない」としています。

 もし、原子力安全・保安院が、その業務について「最大限努力していく」と、本心から言っているなら。政府に対して「2次評価をまとめるまで、再稼動の政治判断は待っていただきたい」「そうでなけば、業務責任を果たせない」と上申すべきでしょう。
 保安院がそうした筋も通せないなら、「原子力規制庁の立ち上げがないと原発再稼動の議論はできない」と、敦賀市市長が言われるのも当たり前です。

 敦賀市の河瀬一治市長さんが、どのような方は、アタシは存じ上げていませんけれど。少なくとも反原発路線の政治家さんではないだろと、思えます。
 アタシ自身も原発容認派なので、推測できるつもりですが。例えば、河瀬一治市長は文部科学省副大臣に、実験用高速増殖炉もんじゅの運用継続を要請なさったことも、報じられています。
 そういう立場の市長さんが、「原子力規制庁の立ち上げがないと原発再稼動の議論はできない」とまで言われたことを、政府は、野田首相は重く受け止めるべきです。


 他方、福井県の西川一誠知事は、国に「福島第1原発事故の知見を反映した安全基準を示すよう」求めている、とも伝えられています。
 アタシが思うには、敦賀市市長も福井県県知事も、「少なくとも、原子力規制庁が発足するまでは、原発再稼動の検討は凍結(規制庁発足後に、検討再開)する」ように、政府に要請していただくとよいように思います。同時に、国会の代議士たちにも働きかけていただければ。

 原子力規制庁が発足まで、原発再稼動の検討は凍結しながらも、各電力会社のリスク管理思想や、施設の安全性の精査は、安全・保安院他に重ねてもらえばいいのではないですか?
 その方が、安全・保安院も「最大限」の努力ができるはずでしょう。


 関東人で、神奈川県民のアタシが、他地域、他県の行政にあれこれ言うのもナンですけど。
 「少なくとも、原子力規制庁が発足するまでは、原発再稼動の検討は凍結」の要望を、政府と国会に働きかけていただければ、それは、アタシたち国民全体の利益につながりますので。期待したいと思います。


 ちなみに、アタシは、個人的には、原子力安全・保安院には、まったく信頼は置いていません。

 理由は簡単。
 原子力安全・保安院は、2011年の国会答弁で、チリ津波級の大津波が押し寄せたとしても、メルトダウンが起きないような原子炉運用を監督してる、って主張をしてた組織だからです。
 2011年当時は、そうした保安院の主張を国民が信任してきた形になっていたわけですけど、3.11以降は、もうそんな信任成り立ちません。保安院の監督下で、メルトダウン起こしちゃったんですから。


【参照用コンテンツ引用】

保安院“規制庁発足するまで業務”NHKNEWS web,3月22日)

国の原子力の安全規制を担う「原子力規制庁」が来月1日に発足することが難しくなっていることについて、原子力安全・保安院の森山善原子力災害対策監は「作業に空白が生じないよう最善の努力を尽くす」と述べ、規制庁が発足するまでの間、安全規制の業務に当たっていく考えを示しました。

東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、政府は、原子力の安全規制の業務を一元的に行う「原子力規制庁」を環境省の外局として来月1日に発足させる予定でしたが、設置法案の取り扱いを巡って与野党の調整が難航し、来月1日の発足は難しい情勢です。
これについて、原子力安全・保安院の森山善原子力災害対策監は「ストレステストの審査や福島第一原発の安全確保を維持する対策など、規制機関としてやるべき課題がある以上、組織が存続する間は作業に空白が生じないよう最善の努力を尽くす」と述べ、規制庁が発足するまでの間、安全規制の業務に当たっていく考えを示しました。
一方、原発が立地する福井県敦賀市の河瀬一治市長が枝野経済産業大臣と会談した際、「原子力規制庁の立ち上げがないと原発再稼動の議論はできない」と発言するなど、原発の安全規制には規制庁の発足が欠かせないという指摘も出ています。
これについて、森山原子力災害対策監は「保安院への信頼については、いろいろ意見があると思うが、規制庁が発足するまでは最大限努力していく」と述べました。

「安全性の担保なければ議論できない」と敦賀市長msn産経ニュース,3月22日)
日本原子力発電敦賀原発が立地する福井県敦賀市の河瀬一治市長は22日、東京都内で記者団に対し、法案審議が遅れている原子力規制庁の発足や暫定的な安全基準の提示で安全性が担保されない限り、「再稼働の議論はできない」と話した。
河瀬市長はこれに先立って枝野幸男経済産業相と会談し、安全対策の充実を要望。また、原発が市の収入や雇用に貢献してきたことに触れたうえで、「(原発の長期停止で)経済や雇用への不安もある」と述べ、交付金の手当などの財政支援を求めた。
これに対して枝野経産相は、敦賀市が長年にわたって原発に協力してきたことを指摘。「必ずそのことを踏まえた対応を行っていく。そのことは地元に対する責任だ」と話した。
政府は原発の安全規制の役割を経産省原子力安全・保安院から環境省の下に新設される原子力規制庁に移す方針。しかし国会で関連法案の審議が始まっておらず、発足時期が予定されていた4月からずれ込む公算が大きくなっている。

福井・大飯原発:安全委が「評価」了承 班目氏「2次も重要」毎日jp,3月24日)

内閣府原子力安全委員会は23日、定期検査で停止している関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働の前提となる安全評価(ストレステスト)の1次評価について、問題ないとの確認結果を決定した。安全委が安全評価を了承したのは初。近く、野田佳彦首相と関係閣僚が協議し安全を確認。地元説明に入り、理解が得られれば再稼働を政治判断する。だが、福井県などは再稼働に慎重な姿勢を示している。

安全評価は、原発が想定を超える地震津波に襲われた時、深刻な事故に至るまでにどの程度余裕があるかを調べる。再稼働の判断に使う1次評価と、運転継続を判断する2次評価がある。

関電によると、両基は想定より1.8倍大きい地震の揺れや、4倍の高さの津波でも炉心損傷しないとした。経済産業省原子力安全・保安院も妥当と判断した。安全委は23日の会議で、「東京電力福島第1原発事故を踏まえ、(非常用電源の確保など)緊急安全対策の効果が示されたことは重要なステップ」との見解を示し、問題はないと結論づけた。会議が5分で終了すると、傍聴者が「2次評価なしで安全性の責任が取れるのか」と叫び騒然となった。

終了後、記者会見した班目(まだらめ)春樹委員長は「1次だけでは不十分で、2次まできちんとやってほしい。安全性の確認は保安院が責任をもってやるべきで、安全委はその確認をするだけ。再稼働の判断をするのは政府だ」と語った。

一方、福井県の西川一誠知事は、国に福島第1原発事故の知見を反映した安全基準を示すよう求めているが、その基準の実施を盛り込んだ法案成立の見通しは立たず、原因究明を目指す政府や国会の事故調査委員会の調査も終了していない。【河内敏康、岡田英】