原発再稼動の是非を巡る「合意」

 16日の報道で、政府が「運転停止を休止した原子力発電所の再稼働の手続きについて、事前に説明して合意を得る地方自治体の範囲を、原則として原発から半径10キロメートル圏内とする」との方針を固めたことが報じられました。

 一方で、今の国会に提出されてる原子力規制庁設置関連法案が成立すれば、新たに半径30キロメートル圏内が「緊急時防護措置準備区域(UPZ)」に指定される見込み。圏内の自治体に防災計画の策定を求められるようです。

 日経Web刊の報道によれば、藤村官房長官が16日の記者会見で、「〔合意を求める対象と、UPZの範囲は〕内容が全然違う。連動しない」と表明したようです。
 短く要約された発言でしょうけど。
 それにしても意味がわかりません。


 「一部の周辺自治体は、防災指針の見直しの趣旨を踏まえ、30キロメートル圏に事前説明するよう求めている」とは、同じ日経の報道ですが。
 一部だけではなく、少なくとも、半径30km県内の自治体は、歩調を合わせて、事前説明を政府に要求すべきでしょう。ぜひ、していってほしい。

 さらに言えば、一方的な「事前説明」などではなく、公開性と透明性のある、「質疑応答」の手続きを求めるべきと思える。
 「合意を得る」と言うからには、「公開性と透明性のある、質疑応答の手続」は必要なはず。
 もちろん、メディアが“やらせ”と報じた、九電の粉飾的情報操作の類が無いように厳重にチェックして。
(九電がやってたやり口を、単に“やらせ”と呼ぶのは手ぬるいです。だって、まるで総会屋の手口ではないですか)


 アタシが思うには、半径30kmどころか、半径70kmの自治体は、そうした要求を政府にしていく必要があると思います。
 だって、原発で事故が起きた場合、最初に被害者難民を受け入れなければならない自治体だってあるわけですから。
 当然、3.11以降は、安全に避難できるルートの複数敷設、などは、電力会社の責任で整備してもらわないと。
(国庫からの資金で整備する、というなら、それも「安価」だと言われ続けていた原子力発電のコスト計算に含めてもらわないと)


 いったい、何がどう「連動しない」のか?? 藤村官房長官の発言は(報道を読むだけでは)アタシには、意味がわかりません。

 意味がわからないことは、「どういう意味ですか?」と尋ねるべきですが。
 この場合、周辺自治体には、足並みをそろえて「連動しないとは、どういう意味ですか? なぜ連動しないと言えるのですか??」てことも尋ねていっていただきたい。
 その類の地道なやりとりは、「3.11よりも前のやり方」と大差ない、不透明で信頼性の乏しい言いくるめを退けていくのに、必要なんだと思えます。


 アタシが思うには、原発再稼動は、してもいい電力会社と、させるわけにはいかない電力会社があると思います。
 もちろん、危険度の高い施設と、低い施設もあるでしょうけど。
 リスク管理意識の低い電力会社には、再稼動をさせるべきではないと思う。

 つまりは、アタシは一部再稼動は容認の立場なのですが。
 そんなアタシの立場でも、「311より前と変わらないような旧態然とした管理体制」のままでの、なし崩し再稼動は、ご免被りたい。

 反原発派の方々にも、性急な原発停止を求めるばかりでなく、アタシのような中間派とも共闘可能な路線も、考えてみていただきたい、と思います。
 原発停止(積極的脱原発)は、それはそれで数年の議論が無いと、広い合意や納得は得がたい主題と思います。

 別の記事でも書いてることですけれど、とりあえず、原発運転休止に持ち込んで、廃炉か再稼動かは、時間をかけて検討した方がいいように思えます。


【参照用コンテンツ引用】

原発再稼働、事前説明は10キロ圏自治体に限定/政府方針 30キロ圏自治体は反発日経web刊,2012年3月16日)

政府は16日、定期検査で運転停止中の原子力発電所の再稼働の手続きで、事前に説明して合意を得る地方自治体の範囲を、原則として原発から半径10キロメートル圏内とする方針を固めた。範囲を30キロメートル圏に広げるよう求めている一部の自治体は反発している。
内閣府原子力安全委員会が現在、原発の防災指針で定めている「防災対策重点地域(EPZ)」は半径10キロメートル。政府が今国会に提出した原子力規制庁設置関連法案が成立すれば、規制庁が従来の防災指針を改め、EPZに代わって新たに半径30キロメートル圏内を「緊急時防護措置準備区域(UPZ)」に指定、圏内の自治体に防災計画の策定を求める方針だ。

一部の周辺自治体は、防災指針の見直しの趣旨を踏まえ、30キロメートル圏に事前説明するよう求めている。藤村修官房長官は16日の記者会見で、合意を求める対象と、UPZの範囲は「内容が全然違う。連動しない」と表明し、10キロメートル圏の自治体に限る考えを示唆した。ただ「画一的に決めるわけではない。地元の状況をみながら最終的に政治レベルで判断する」とも語った。

再稼働の判断が近づいている関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の場合、半径30キロメートル圏には京都府滋賀県の一部が含まれるが、10キロメートル圏なら福井県内だけが対象になる。大飯原発の再稼働に難色を示している滋賀県嘉田由紀子知事は16日、「原発事故という前例のない大災害を引き起こした自覚が国にはないのではないか」と藤村長官の発言を批判した。

安全委は来週にも、大飯原発3、4号機のストレステスト(耐性調査)1次評価結果についての報告書をまとめる。これを受けて野田佳彦首相と藤村長官、枝野幸男経済産業相細野豪志原発事故担当相の3閣僚が協議。再稼働が可能と判断すれば、大飯原発の周辺自治体の合意を得る手続きに進む。