原子力規制庁を国会審議している間、再稼動/廃炉問題の検討は凍結(原発は運転休止)するといい

 ダイアモンド社のサイト、DIAMOND onlineにて、13日付で、自民党河野太郎衆議院議員へのインタビューが公開されていました。
 これは、「3.11−−あの日から1年/次世代に引き継ぐ大震災の教訓」と題された一連のコンテンツに含まれる「特別インタビュー」だそうです。
 聞き手の記名は、片田江康男さん。

 コンテンツの方にも、書かれていますけれど、河野議員は「電力行政の基礎を作ったのは、半世紀以上にわたって政権を担ってきた自民党」と、党の責任を早くから公に認めていた数少ない自民党議員。
 自民党の内で、「自民党が深く関わってきた原子力行政の仕組みついて検証するプロジェクトチーム」を立ち上げて、検証してられる。

 アタシは、自民党が「党として」自分たちが形を作った電力行政(原子力行政に限りません)の失敗を認めるまで、自民党の言うこと(党の言うこと)は、聞きたくないのですが。
 河野太郎議員や、福島県自民党議連(東電の福島第2原発を含めた、県内全原子炉の廃炉を求めてる)は、別です。

 個人的には、これらの方が、自民党を離脱していただいたら、有権者としての投票も楽に選択できるよねー、とか、思わないでもないですけど。
 まー、そーもいかないご事情が、それぞれおありなのでしょう。

      • -

 さて、河野議員が、自民党内で進めてられる「検証」作業については、アタシは、興味をもちつつも期待待ちです。

 DAIAMOND onlineのコンテンツは、いろいろ興味深いものとは思います。
 自民党の内部にいてキャリアのある方から、既得権集団の構図、みたいなものを説明されると、やっぱりそうなのね、とは思っても興味深い。


 けれどここでは、インタビュー内で、特段関心を引かれた次のコメントについて書いておきたい。

民主党環境省原子力規制庁を作ると言っているがまったく理解できない。環境省は『地球温暖化対策で原発を』と推進していた。その下に規制庁をつくってしまっては、経済産業省のなかに、推進役のエネルギー庁と規制役の原子力安全・保安院があった構図と一緒だ。どうして、それで原子力行政が変わるのか。完全な独立した組織を作ることは、IAEAのスタンダードなんですよ。

 アタシは、政府が国会に提出した原子力規制庁関連法案の審議に、野党がなぜ応じないか、よくわからないでいます。
 けれど、河野議員の考えはわかりました。
 本当に「完全な独立した組織を作る」というお話で国会議論が進むなら、審議にも、ある程度の時間は必要でしょう。
 ただし、この件について、自民党の党議が、河野議員のお考えとは、今は思っていません。


 この件は「自民党内の検証」よりも直裁に、アタシたち有権者国民の利益/不利益に関わる論題です。
 だから書こうと思ったのですが。

 アタシが思うには、ここは、河野議員、及び、自民党には、「原子力規制庁のあるべき形をきちんと国会で検討する必要機期間の間、全国の原発は休止にする(再稼動なり廃炉なりは、きちんと原子力規制庁が発足した後、再検討)」と、公に明言していただきたい。

 それくらいしてもらわないと、原子力規制庁の発足を遅らせて、3.11より前のスタンダードでの原発再稼動を既成事実化しようとしてる、そんな風に国民に疑われても仕方ない。
 もうね、そんな盗塁の滑り込み狙いみたいなやり方で、再稼動とかしてほしくないです。

 原子力安全・保安院経産省自民党は、それくらいの(疑われても仕方の無い)ことを続けてきている(現在進行形)なのは、もはや明白、と思えますので。
 国会で、原子力規制庁のあり方を、きちんと審議してる間に、各原発の地質調査なり、各電力会社の過去の粉飾、隠蔽など、どんどん精査していけばいいではないですか。
 その上で、原子力規制庁が正式発足した後、再稼動なり廃炉なりを、個別の発電所ごと、個別の電力会社ごとに住民投票でもなんでもしていけばいい。

 こう言うと、必ず、「原発ゼロになれば、日本経済にダメージが」って言われるでしょうけど。
 盗塁の滑り込み狙いみたいにして、再稼動して、また事故起こしたら、今度こそ、取り返しのつかないダメージが、日本経済に及ぶはずでしょう。
 「そんなことにならないようにストレステストしてる」て、説は通りませんよね。盗塁滑り込み狙いのストレステストでは。


【参照用コンテンツ引用】

電力行政の基礎をつくった自民党にも責任あり/ウラで蠢く“電力族”はオモテに出て議論すべし――河野太郎・衆議院議員インタビューDAIAMOND online,2012年3月13日)

自民党議員として長年、原子力などエネルギー政策について取り組む河野太郎衆議院議員。震災直後の原子力事故対応の稚拙さについては菅政権を批判するが、その電力行政の基礎を作ったのは、半世紀以上にわたって政権を担ってきた自民党に一定の責任があると認めている。現在、党内でかつて自民党が深く関わった原子力行政の仕組みついて検証するプロジェクトチームを立ち上げ、そこでも厳しく自民党の取り組みを検証している。そんな河野議員に、東日本大震災から1年経って電力行政や事故対応について、次世代に申し渡すべき事項、電力システムをどう変革すべきかについて聞いた。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)


最低限やるべき/データ取得もできなかった
「やるべきことはデータをきちんと取ることだった。それができなかったことは一番の反省点だろう。どれだけの放射線による汚染を、人間と自然に与えたのかをきちんと把握するべきだった。そもそも起きてはいけない事故で、そのこと自体反省すべきだが、記録を取ることさえもできなかった。極めて不完全だった。
記録が取れれば、放射能の怖さや知見を後世に残すことができた。極めてお粗末な対応で、教訓としてそれも残すことができなかった。教訓さえも得られていないというのが、一番ダメな点だ。
スピーディ(SPEEDI:緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)によるデータが活用されないなど、政府による情報の公開も不完全だった。学者や原子力関係者は、『直ちに深刻な事態にはなりません』と言っていた。しかし、後になってみるとメルトダウンは起きているし、深刻な放射の汚染が広がっている。もう、国民は政府と原子力関係者の言うことなんて、まったく信用していない。信頼はゼロだ。」

―― 原子力行政の仕組みを作ったのは、過去、政権を半世紀以上にわたって取っていた自民党だ。

地域独占、発送電一体、総括原価方式等、こうした利権が今回の事故の温床だ。学者もメディアもみんなグルだった。原子力行政のトップである経済産業大臣は代々、自民党から出してきた。事故の対応は菅政権がマズかったが、そうした仕組みを作って来たのは自民党だ。これは誰も否定することはできない。
先日、自民党として長年取り組んで来た原子力行政の検証チームが立ち上がった。政治献金をいくらもらってきたか、そういったことを公開していくことが最初にやることだ。また、東京電力の副社長をやった人間を参議院で擁立候補として出して、彼に原子力行政の何をやらせてきたのかも検証する。

自民党としての提言はあるが/電力族の抵抗にあっている
――党内では、そうした検証チームの動きはどうみられているのか。

「私は、昔からエネルギーや原子力について取り組んで来た。『原子力では変わっているよね』と言われ続けて来たが、昨年の3月11日で周囲はまったく変わった。今は電力システムの改革派と守旧派でせめぎあっている。去年までは私一人だった。驚天動地変わっている。
しかし、抵抗はある。自民党としては原子力規制庁は完全に独立した形で設置すべきだと言っている。自民党として、電力行政全体の案もまとめたのだが、これの発表は守旧派の抵抗で止まってしまっている。

――その抵抗には、どう対処するつもりか。

「電力族がウラで動いている。オモテに出てこないんだよ。これは執行部の力で、なんとしてもオモテで正々堂々議論しようということにしなければならない。」

――今後、原子力行政はどう変わるべきか。

「まず、電力業界の根本を変えることだ。独立した送電網の確立、総括原価方式の撤廃、地域独占もやめる。電力業界を普通の業界にしなければならない。
民主党環境省原子力規制庁を作ると言っているがまったく理解できない。環境省は『地球温暖化対策で原発を』と推進していた。その下に規制庁をつくってしまっては、経済産業省のなかに、推進役のエネルギー庁と規制役の原子力安全・保安院があった構図と一緒だ。どうして、それで原子力行政が変わるのか。完全な独立した組織を作ることは、IAEAのスタンダードなんですよ。」

――河野議員は早くから計画停電は必要なかったと言っていた。

「去年の計画停電はまったく必要なかった。計画停電で信号が止まって、その影響で交通事故による死亡者が出ている。これはほとんど殺人だ。
計画停電しなければ電力が足らない、だから原発の再稼働が必要だ、となる。こうした動きをたださないといけない。
需給調整契約は、『いざというときに電気を止めますよ。だから安い単価でいいですよ』というものだ。しかし今回、私が調べたところ、需給調整契約は実行されていない。需給調整契約で、私が聞いた中で一番安い料金は、1kW/hあたり7円というのがあった。普通の家庭の三分の一以下だ。
ところが、計画停電で、需給調整契約を結んでいるところと一般家庭を同じように扱った。なかには混乱を避けるために、需給調整契約を結んでいながら超大口需要家は計画停電の範囲から外している。こんなこと、ありえないでしょう。本来なら、安い単価で電気を使っているんだから、需給調整契約を結んでいるところから切っていくのが筋だ。

自由化と言っておきながら/中部電力は都庁に電力供給しない
――守旧派は、電力市場は自由化されていると反論する。

「『自由化されていて、相対取引だから需給調整契約の電力単価は公表できない』という言い訳に使われている。
また、自由化と言っておきながら、東京都が中部電力に電力供給を要請しても、中部電力東京電力のテリトリーを超えた入札はいっさいやらない。
福田内閣のころ、自民党事業仕分けをやった。そのとき、北海道の刑務所や東北刑務所、東京刑務所のワンパックにして、いくらになるか入札をすべきだということを提案した。複数の電力会社をまぜこぜにして、入札するということだ。そうしたら、電力族がでてきて、それはダメですと。あっさり、提案は却下された。

――電力族は産業界、政界に深く根を張っている。

「紛争審査会も、日本エネルギー法研究所から委員が来ている。こうした団体にはかなりのカネが電力業界から流れているはずだ。電事連もそう。しかし、両団体は任意団体だから、財務内容がわからない。今後の電力行政を考える場にそうした人たちが来ていていいのか。彼らは完全に癒着している。

――発送電分離の議論はどのように見ているか。

発送電分離はあたりまえだ。電力利権に事故の原因があることは、国民のだれもがわかっているはずだ。所有権分離にまで踏み込むのは当然だ。そうでなければ、分離にならないでしょう。
社内カンパニー制にすることはまったく意味がない。体質がそもそも問題なのだ。福島第一原発でおきた臨界事故を28年間も隠していた会社ですよ、東京電力は。」

――東京電力はどうすべきだったのか。

「今のようにゾンビ企業にしないで出直させるべきだった。だいたい、資本主義の世界で、当時官房長官だった枝野氏は特定の会社を取り上げて破綻させないと言った。こんなことがあっていいのか。しかもその会社の株は、市場で自由に売り買いされている。
知り合いの中小企業のオヤジさんたちは『じゃあ、うちの会社も破綻させないっていってくれよ。なんでもやるよ』と笑っている。

立地自治体の財政問題は/原発誘致時からわかっていたこと
――今後の電力供給体制はどのようにあるべきか。

「一番簡単なのはコンバインド・サイクルの天然ガスによる発電所を増やすことだ。二酸化炭素を大量に排出する石炭火力は減らすべきだ。原子力発電に関しては、何基再稼働が必要なのかを政府は示す必要がある。いずれにしても、電力会社や電力供給システムの改革を行うことが、なによりも先だ。

――原発の立地自治体は財政の半分程度を原発マネーに頼り、雇用も頼っている。日本では今後、原発は減っていく。立地自治体は困難に直面する。

「少なくとも原発の雇用が廃炉の雇用に変わることになる。原発が止まるからといって、すぐに雇用がなくなることはない。
地方財政と経済の中心となっているのは分かる。しかし、原発マネーを何に投資するかを決めて来たのは、地元の首長であり議員であり、その人たちを選んだ住民達だ。電源三法交付金は、使い道が決まっているから柔軟な使い方ができないと言ったって、それははじめから分かっていたことだ。将来につながる投資ができなかった、ということだ。もっとも、これは原発立地自治体すべてに共通する問題だ。
こういう原子力の制度を設計したのは自民党だ。もし、国民の皆さんに自民党が政権を取ったら、これまでのような原子力行政を続けると思われていたら、自民党は政権を取ることはできないだろう。電力、特に原子力行政については社会保障や消費税と並ぶ争点となっている。」