サンデー・フロントライン:今週は「フロントライン・フォーカス」の追跡取材が頑張ってくれてた

 7月17日放送分の「サンデー・フロントライン」。番組終盤の「フロントライン・フォーカス」でやった、「過信の代償・・・福島第一メルトダウン」が、ことに観応えあってよかったんだわ。


 毎週、基本的には、概ね3つのパートに大別されてる「サンデー・フロントライン」。
 今週の番組構成は、大まかには、こんな感じ。

  • 最初のパートは、さらに3つのセクションが含まれてて。まず、放射性セシウム汚染牛肉のニュースを「新たに肉牛84頭が流通/消費者も農家もショック」などとして報道。次に、細野豪志原発担当大臣を交えた座談を交えながら「いつまで続く? 節電の夏」って重点報道ぽいセクションに。
  • 2番めのパートは、週間重大ニュースセレクト「これはニュースだ!」
  • 3番めのパートが、「フロントライン・フォーカス」で、今週は過信の代償・・・福島第一メルトダウン」。これは、日本の原子力施設の安全設計指針が「長期間の全電源喪失の可能性を考慮する必要がない」としきてる件についての調査報道。4月10日放送分の番組5月22日放送分から断続した、追跡取材にもなってて、「サンデー・フロントライン」頑張ってる。


サンデー・フロントライン「過信の代償・・・福島第一メルトダウン」:
 過去に原子力安全委員会が策定した、日本の原子力施設の安全設計指針は「長期間の全電源喪失の可能性を考慮する必要がない」としきてるわけだけど。
 実は、過去に数回「長期間全電源喪失の可能性も見込むべきか」的な指摘も内部で成されてたそうです(以前の「サンデー・フロントライン」報道による)。にも関わらず、関連する検討会議などで、正式に議論された形跡が見当たらない、らしい。
 これは、何故か、って疑問は、4月10日放送分の番組の中でも言われてた。おそらく、それ以来の追跡取材の成果が17日に放送された、と思うんだけど。番組内では「2ヶ月の取材」って言ってたわね。


 今週の「過信の代償」で、1番優れてたのは、アメリカ(U.S.)の原子力発電所や規制についての取材報道。報道レポートとしては、現在もU.S.で稼動中の原子力発電所で、福島第一原発で事故を起こした原子炉と同型の物もある施設の内部を取材。
 U.S.では「全電源喪失に備える設備の整備」が、1988年から法規で義務付けられてる。こういうのは、実際にどんな設備がどんなふうに設けられてるかを映してくれると説得力増すわよね。


 U.S.では、1988年の法規改訂のことを「(法規の)ポスト・スリーマイル改訂」とか言うらしいんだけど。スリーマイル島原発事故って1979年。
 改訂には、9年くらいかかってるわけよね。


 日本の原子力施設安全設計指針については、5月、今の原子力安全委員会委員長、班目春樹さんは「(現在の)安全設計指針は間違っている」旨を公に述べて、改善する必要性も述べてる。

 ところで、日本では、今の安全設計指針がまとめられたのは1990年なんだけど、当時、指針策定に関与したお役人(官僚)や、研究者には、今だに「安全設計指針は間違ってない」とか言ってる人もいることを、取材して談話も撮ってきたのが「サンデー・フロントライン」。
 例えば、1990年に原子炉安全基準作業部会のトップだった人が、カメラに向かってそう言ってた。もちろん、当時の関係者に「失敗だった」って認めてる人もいるんですけど。


 1990年当事の原子炉安全基準作業部会トップの放送された談話、アタシには不審感が強く感じられました。
 だって「安全設備ってのは多ければミスも増える、充分な数に押さえることが必要」とか言ってるんだもん。福島原発が事故を起こしたのって、「安全設備が充分」ではなかったからなわけじゃん。
 例えば、原発に送電してる鉄塔が地震で倒壊して送電が止まっちゃったわけだけど、この鉄塔の耐震強度、一般の建造物並みだったって話。


 残念なことに、当事の原子炉安全基準作業部会トップの談話は、長いやりとりから要点をクリップした形での放送になってた。
 つまり、“部分可視化”みたいなまとめ方をしちゃってたわけ。

 本当なら、こういうのは、インタビュアーの質問も含めて“全面可視化”にあたる形で報道してほしい。
 そうでないと、いくら不審感の強い談話でも、談話自体におかしいとこがあるのか、クリップした編集のために、話の筋がわかんなくなってるのか、判断し難さも生じちゃうじゃん。

 理想を言えば「今の指針は間違ってない」とか、今だに言ってる関係者には、「班目委員長は5月に『間違っている』って評価を下しましたが、この判断も間違いですか?」とか訊いてほしいのよね。

 そーゆー訊き方しちゃうと、取材画像の放送に同意してもらえないのかもしれないけどさ。そうしたら、そういうふうに放送しちゃえばいいのよ。「取材で、これこれって訊いたところ、コメントを拒否されました」とか。


 そうは言っても「サンデー・フロントライン」、2ヶ月か、もしかしたらそれ以上に渡る追跡取材、頑張ってくれた、とは思いました。


今週の「これはニュースだ!」コーナー:
 このコーナー、番組に不定期に出演したりしてる、評論家、解説者、コメンテーターの人たちが、その週の重要ニュースに、1位〜10位の重要度を評価して提起。重要度はポイント換算されて、ポイント集計。週のニュース10を重要度順に整理するって趣向の週間重要ニュース選。


 番組の公式サイトで、どんなニュースがセレクトされたか、読めるけど。
 今週は、世界1になった、「菅総理脱原発依存”発言の波紋」て題された報道が、番組の重要度1位としてセレクトされてました。
 これは、今週の番組、最初のパートでも重点的に取り上げられてた一連のニュース。


 今週は重要度2位以降10位までには、以下のようなニュースが選ばれてました。 

  • 2位「“セシウム汚染牛肉” 急拡大」
  • 3位「1ドル78円台で日本経済は?」

 これは、主に、ランク外になってたニュース「オバマ政権“政府債務限度”で議会と正面対決」「米・債務上限引き上げ交渉難航 近づくデフォルト危機」の関連と思うな。

  • 4位「“やらせ” 賛否逆転も・・・再稼動は?」

 九州電力の内部調査によれば、副社長、佐賀支店長、原子力発電本部長の合議が発端になって、具体的な文案まで伴った指示文書まで発送してたとのこと。呆れるしかない話よね。

  • 5位「初の栄冠へ! “なでしこ”決勝進出」
  • 6位「日本の貧困率過去最悪の16%」

 全国民に対して「貧困層」にあたる低所得世帯が2009年の統計で16%と、厚生労働省が発表。これが「過去最悪」ってニュース。

 見出しは「三浦半島も・・・」ってなってるけど、この週、政府の地震調査委員会が「東日本大震災の影響で、地震発生の危険が増した」と公表したのは、三浦半島断層郡。大震災以降、これまでに同様の危険が指摘されてきた「双葉断層(宮城、福島)」、「立川断層帯(立川、東京)」、「牛伏寺断層(長野)」に次いで4件めの指摘。

  • 9位「古賀氏退職勧奨拒否」

 経済産業省の古河茂明さん、15日を期限にいわゆる“肩叩き”をされてたんだけど、応じなかったって話。経産省の方にも、きっと処分するような理由がを挙げれないのではないでしょうか。そりゃ「内部告発禁止」とかは、経産省だって言えないわよね、表立っては。


 ちなみに、番組のサイトを見ると、重要ニュース選定者はピックアップしてたけど、セレクトで10位までに入らなかったニュースには以下のようなものもあったそうです。順不動ってことで。

  • アフガニスタンカルザイ大統領の弟暗殺」
  • オバマ政権“政府債務限度”で議会と正面対決」「米・債務上限引き上げ交渉難航 近づくデフォルト危機」
  • 「東部アフリカ干ばつ」
  • 「初の栄冠へ! “なでしこ”決勝進出」
  • 竹島問題で大韓航空を“ボイコット”」
  • 「ムンバイ・テロ事件」
  • 「過去にも公約破棄…群馬県知事“お泊り”の波紋」
  • もんじゅ開発中止も! 文科相が検討表明」
  • 「160億円!? ダヴィンチ幻の絵画発見」
  • 「英国日曜紙の違法取材問題」「英議会がマードック氏召還へ! FBIも捜査」
  • 「岐阜中署が拘留者に睡眠導入剤
  • 「賃貸住宅“更新料”訴訟で最高裁判決」
  • 「過労原因で躁状態に・・・松本前大臣が入院」
  • 「中国引き続き高い成長率! インフレも」
  • 日銀総裁が電力不足に強い懸念」
  • 「ブッシュ前大統領“拷問訴追”で狭まる包囲網」

 「岐阜中署が拘留者に睡眠導入剤」は、警察官十数人が、留置場に拘留してた容疑者などに睡眠導入剤入りのお茶を出してたって事件。岐阜県警の発表で、薬事法違反、特別公務員暴行陵虐などの容疑で捜査、とかいってるけど、代用監獄である留置場に容疑者を長期拘留すること事態が問題なのよね。

 アタシ的には、インドの「ムンバイ・テロ事件」や、「ブッシュ前大統領“拷問訴追”で狭まる包囲網」、「もんじゅ開発中止も! 文科相が検討表明」などのニュースにも関心を惹かれました。