サンデー・フロントライン:今週は、番組の水準で普通に出来が良かったと思います。

 7月3日放送分の「サンデー・フロントライン」は、この番組の水準で、普通に出来が良かったと思います。
 “中の中”って書くと、なんか誉めてないみたいな感じもしちゃうけど。
 週イチの番組として、不可はなかった。今週は特にここが良かった、ってヵ所は記憶に残んなかったんですけど。悪くなかったです。


 概ね3つのパートで大別構成される「サンデー・フロントライン」。
 今週は、最初のパートが「日本の週末が激変/『15%節電』電力制限の波紋」で。
 2番めのパートが、恒例になった今週の重要ニュースセレクト「これはニュースだ!」のコーナー。
 3番めのパートが、不規則放送(と思う)のシリーズで、「発掘人物秘話」で、故高木仁三郎さんを紹介。
 このコーナーで、再現構成された、生前の高木氏が、原発の危険性について警鐘を伝えてたコーナーは、時節柄、狙いは良かったし、悪くなかったです。

 でも、辛めの評になるかもしれないけれど、実は惜しかったわね。


 「発掘人物秘話」のドキュメンタリー調で再現構成主体のレポート画像の後、スタジオ・トークで、コメンテーターの方が「生前の高木さんの警鐘は、自分も聞いていたんだけど、充分きちんと受け止めていなかった」旨を、「そういう危険性もあるのかな、くらいにしか聞いていなかった」的にコメントされてましたけど。
 これは、コメンテーターの方の率直な感慨だろうと思えました。

 レポート(「発掘人物秘話」)の方も、実際、事故が起こってみれば、主要なポイントは故高木さんが警告していた事態通りになってしまった、って趣旨は観てとれたな。
 じゃぁ、「日本の社会の側が、高木氏の警告をきちんと受け止められなかったのは何故か??」までを突っ込んで、追跡してくれれば、とても見ごたえのある検証報道になった、可能性、アタシは少なくないと思いました。

 もちろん、これは、週イチ2時間枠のニュースショー番組には、ムチャな期待だろうとは思います。1時間以上、90分か、120分枠の単独ドキュメンタリーでやってほしい題材とアプローチですものね。

今週の「これはニュースだ!」コーナー:
 番組に不定期に出演したりしてる、評論家、解説者、コメンテーターの人たちが、その週の重要ニュースに、1位〜10位の重要度を評価して提起するコーナー。
 重要度はポイント換算されて、ポイント集計。週のニュース10を重要度順に整理するって趣向の週間重要ニュース選です。

 番組の公式サイトで、どんなニュースがセレクトされたか、読めるけど。
 今週は、稼動が停止してる九州電力玄海原発をめぐるニュースが、番組の重要度1位としてセレクトされてました。

 このニュースが、「今週のニュース」で重要度が1位にくるセレクトは、アタシもわかる。
 我が国のエネルギー問題を巡る、議論や駆け引きに大きなインパクト与えたわよね。今週だけの話で済みそうもないし。

 玄海原子力発電所が立地してる佐賀県古川康知事は、政府の原発安全宣言に懐疑的だったのは、よくわかる事情だと思います。
 ところが、今週、佐賀県を訪れた海江田経産相と対談、「原発の安全は国が“ほしょう”する」との発言を受け、それは菅首相の考えでもある旨を経産相に確認した古川知事は、玄海原発の再稼動容認と採れる意向を公にされた。

 個人的には、本当にそれでいいの?? って思います。
 佐賀県民や、隣接他県の住民のみなさんで話し合って決める形が望ましいと思いますけれど。


 えーっと、古川知事が、県知事ってお立場から、原発の安全性懸念と、県の産業や経済、県民生活に及ぶ影響との間で、苦慮されてきているのはわかります。
 県知事として、停止してた玄海原発の再稼動容認って選択も政治選択の1つであると思います。

 ただ、メディアで報道されてる古川知事のコメントからは、知事がこれまで表明されてきてた原発安全対策に対する不審感が拭われたか、あるいは不問に付すことにされた、判断の筋道がわかんないんですよね。
(「拭われた」のか「不問」なのか、どちら寄りなのかは、メディアで報じられてるコメントだけからは判断し難いと思いますけど)
 「首相も『原発の安全は国が“ほしょう”する』とした」のがきっかけになった、てのはわかるんですけど。


 アタシが思うに、今の政府が浜岡原発以外の商業原子炉に“ほしょう”する、としてる「安全対策」は、緊急対処レベルの安全対策としか思えません。
 今政府が“ほしょう”するとしてる「原発の安全」は、「大きな地震とかが起きても、事故には対処できます」って“ほしょう”だとしか思えません。

 つまり、「地震が来ても、原発事故(つまり放射性物質の漏出)は起きません」って「保障」だとは、思えないんです。
 はっきり言って、今、政府が言ってる“ほしょう”って、「万一事故が起きても、福島の事故原発と同様に『補償』は政府が責任を持って処理します」って意味なんじゃぁないの??


 この件については「日本のエネルギー政策の白紙からの見直し」を唱え、それなりの政治行動もしてる菅首相にしては不釣合いだ、ってアタシでも思います。
(アタシは、民主党政権のシンパではないですけれど、菅内閣は、自民党政権や、連立与党時代の公明党より、まだマシって立場でいます)

 「日本のエネルギー政策の白紙からの見直し」するなら、当然「過去の原発安全基準も白紙から見直し再検討」する必要があるはずです。
 特に、施設の耐震基準ですね。
 建屋の類だけではなくて、施設のレイアウトや、配管などの耐震性も再検討されなくては、本当の意味で「安全」だなんて「保障」できるはずがない。


 ぶっちゃけ、「万一事故が起きても、福島の事故原発と同様に『補償』は政府が責任を持って処理します」って言うだけでも、菅内閣は、自民党公明党よりもはるかにマシ。
 それが、今の国政のお寒い現状だって、アタシは思ってるんですけれど。

 佐賀県知事の方は、佐賀県民の方は、そういうことで納得しちゃっていいのでしょうか??


 アタシは、さっき、玄海原発再稼動の是非は、地元や周辺地域の住民の総意を話し合って決められるべきって意味のことを書きました。

 例えば、原発から50kmとか80kmとかの範囲内の住民の話し合いで見当されるべき、ってのがアタシのイメージです。
 事故が起きたら、直接害が及ぶ可能性のある地域の住民の住民投票で決めるような制度が、整備されてくといいと思うんですよね。
 もちろん、住民投票の前に、きちんと住民参加の話し合いがされるべきって意味です。
 あるいは、フェアな(公正な)公開討論が、広く住民の質問にきちんと応えて説明してくような形でもいいと思うんですけど。

 これまで古川知事が、政府や九州電力玄海原発について説明してきた安全には納得できない、とされてきたのは良くわかると思います。それに比して、知事が今週、再稼動容認と採れる発言をされたのは何故か?
 知事には悪いけれど、政府や九州電力の説明に納得がいったとか、これまでの疑問が解けた、とかは、どうも思えないんですよね。


 番組で2位以下の重要度とされた今週のニュースは、以下のようです。

  • 2位「辞任3条件明示も国会空転」
  • 3位「『電力使用制限令』ついに発動」
  • 4位「消費税引き上げ “曖昧”決着」
  • 5位「循環冷却ミス頻発 避難区域では・・・」
  • 6位「『民・自・公嫌い』大臣で復興は・・・」
  • 7位「猛暑! 節電影響? 熱中症急増」
  • 8位「“新幹線”で中国共産党90周年」
  • 9位「“おひとりさま”顕著 単身3割超」
  • 10位「B型肝炎和解 総理が謝罪」


 今週も、国会政局のゴタゴタのニュースが、重要度2位にされちゃったのは、仕方ないところだとは、思います。
 アタシは、国会とか中央官庁とかのゴタゴタは、ほんと、わっけわかんないし。
 「サンデー・フロントライン」に限らず、どの報道メディアで観ても、ますますわけわかんなくなるばかり(苦笑)。

 アタシが思うには、国会、長期課題、中期課題、短期課題をごちゃ混ぜにしたまま進めようとしてるんで、ただでさえ、わけわかんなくなってると思えます。
 それだけのことでもないだろうとは思いはしますけれど。
 短期課題を重視するのはともかく(それは重視するのは大事です)、だからって、まるで、従来の政策路線を見直そうともしない自民党公明党の国会対策って、やっぱりどうかしてるとしか思えない。


 乱暴なこと言えば、「サンデー・フロントライン」で今週セレクトされたニュース10件の間では、3位以降がどの順で来ても、不思議じゃぁなかったわよね。
 アタシ的には、南沙諸島を巡る国際情勢と、シリア情勢も、わが国の将来に関わってくる重要ニュースだろうと思ったんですけど。