東京電力の、発電、送電を分離する案について

 昨日(18日)、菅首相は記者会見で、西日本新聞の記者さんからの質問にこたえる内で「東京電力の発電部門と送電部門の分離も、選択肢の1つに含めて議論をすべき」旨、述べてました。フリー記者の人の質問に答えても、同様のこと述べてられたと思います。

 複数のメディアで報じられてることですし、内閣広報室からリリースされてる記者会見の画像ファイル(菅内閣総理大臣記者会見-平成23年5月18日)も、政府インターネットテレビで観れます。

 この首相発言、当然、色んな論議を呼ぶはずです。
 呼ぶはずですけれど、少なくとも「選択肢の1つに含める」議論、検討は、是非やるべきだと思います。


 記者会見での菅首相発言は、「エネルギー政策の根本からの見直し」議論の一環として、「東京電力の発電部門と送電部門の分離も選択肢の1つに含める」旨、言ってました。

 つまり、長期視野の課題(「エネルギー政策の根本的見直し」)に関連付けて「東京電力の発電部門と送電部門の分離の可能性」に言及されたわけですけれど。
 アタシとしては、福島原発事故賠償って、短期、中期課題との関連でも「東京電力の発電部門と送電部門の分離」は、こちらは絶対、やるべきと思います。


 アタシの考えでは、福島原発事故の賠償のためのスキーム(枠組)の関連では、東電は、国庫からの資金援助を受ける前に、まず、送電網を売却すべきと思えます。
 送電網だけでなく、売れる資産は全部売却して、賠償金支払いに充てるべきです。
 国庫からの資金援助を受ける前に、保有資産の売却をやるべきなんです。

 従来の事業形態を維持したまま、国庫からの援助も求めようなんて、考えが甘すぎなんだわ。
菅首相は、福島原発の事故原因がもっと解明されないと、今時点では、そこまで踏み込んで論じる段階ではない、ってお考えの様子ですけど)


 アタシは、東電の送電区については、政府がいったん送電網を買い上げ、東電側はそのお金も賠償に使えばいいと思います。
 送電網運営の人員は、基本的には東電側ではリストラしてもらう形に。政府の側で、さしあたり関東圏送電公社みたいな事業体をいったんつくって、再雇用する形にもってけばいいと思うな。
 この事業体を公営にするか第3セクター型にするか、などについては、議論、検討が要ることでしょう。


 原発事故被害者の人たちに支払われるべき、数兆という賠償金に国庫からの資金も使うのは、東電送電網売却の後であるべきで。
 賠償金の国庫からの支援は税金に反映されさるを得ないし、他の電力会社からも供出される資金は電気代に反映されてくはずですけど。
 送電網を買い上げたお金は、関東圏送電公社(仮称)を黒字運営していけば、税金への反映さほど大きく見積もらなくてもいいはず。


 この、「東電送電網買い上げ⇒関東圏送電公社(仮称)」のもくろみは、当然、東電以外の大手電力会社には、警戒されるだろうと思います。反発もあることでしょう。
 例えば、日経Web刊19日付で公開したコンテンツ「首相『発送電分離 議論を』 定検中の原発 再稼働容認」も、その旨の予測が記されてます。

 アタシは、東電は原発事故起こしちゃったんだから、とっとと送電網売却すべきだと思ってますけど。
 他の電力会社については、数年かけて、じっくり議論、検討してっていいと思ってます。

 数年、たとえば3年とか5年かけて議論してくとして、落しどころとしては、他の電力会社の送電区については、従来の送電会社の出資、政府出資半々の公益事業体を株式で作ってもいい。
 あるいは、従来の送電会社の出資、その他の民間出資、政府出資1/3ずつとか、色々考えてもいい。

 こうした案が妥当かどうかの議論をしていきながら、関東圏広域送電公社(仮称)を、先行モデルとして検証していけばいい、と思います。


後日の意見修正:
 この記事に書いたアタシの意見(東電送電網の売却案)について、後日、意見に部分修正を加えました。
 詳しくは、5月21日付けの記事「原発事故賠償スキームと関連特例法案」に書いておきました。
 概略だけこちらにも書いとくと「東電の送電網売却(政府買い上げ)」は、短期的には「一旦の買い上げでよしとする」線に後退。中期、長期的には要検討の課題として、留保。
 この意見修正は、kg_noguさんがブログに書かれている記事「東電の賠償支援について考えてみました4」を読ませてもらって、「なるほど!!」って思い、参考にさせていただいたこと、お礼と共に、お断りさせていただきます。


参照記事:

東電の送電分離案、政府内で急浮上 電力各社は反発も日経Web刊、2011年5月19日)
 東京電力の発電部門と送電部門を分離する案が、政府内で急浮上してきた。東電福島第1原子力発電所事故をきっかけに長年の地域独占を見直し、新規参入を促すしくみを取り入れる内容だ。ただ、供給体制の抜本的な見直しとなるだけに、電力各社の反発も避けられそうにない。実現に向け課題は山積している。

 日本の電力は電力会社による発電と送電、小売りまでの一貫体制になっている。電力自由化の流れで電力ビジネスへの新規参入組も生まれたが、東電などの送電網を自由に使えるわけではない。
 3月の計画停電の際も電力の小売業者にあたる特定事業者は販売網を断たれた。東電が送電インフラを握るためだ。加えて、電力会社に払う送電線の賃借料は顧客に販売する電気料金の約2割を占めるとされる。送電網を握る大手電力が差別的な取り扱いをして新規参入を阻んでいるとの指摘もあり、電力販売に占める新規参入組のシェアは3%に満たない。
 枝野幸男官房長官は16日の記者会見で東電の送電部門分離について「選択肢としては十分あり得る」と発言。週末には玄葉光一郎国家戦略相(民主党政調会長)も「発電と送電の分離など電力事業の形態の議論を妨げることはない」と述べており、政府・与党で電力会社の地域独占体制の見直し機運が高まっている。
 政府は13日に決めた東電の賠償支援スキームに「電力事業形態のあり方などの見直しの検討を進め、所要の改革を行う」と明記。中長期の課題と位置付けた。ただスキームには野党から「東電救済策だ」との批判がつきまとう。国会論戦を乗り切るためにも、電力事業のあり方への切り込みを迫られている。

 電力会社の送電分離は、1990年代から議論が続く課題。既存の電力会社による一貫体制を見直し、新規参入事業者が送電設備を使いやすくすることが狙いだ。欧州では英国やドイツ、フランスなどが90年代に入ってから相次いで発電と送電を分離した。送電ネットワークが整備済みの先進国では、利点の方が大きいとされる。

 ただ電力会社からの反発は根強い。電圧など電気の品質を安定させにくくなるほか、電力の完全自由化につながるとの理由だ。経済産業省は約10年前に送電分離を目指したが、東電などが押し返した経緯がある。
 新規参入組にあたる全国の独立系発電事業者の発電能力は約740万キロワットで、このうち3割超の260万キロワット程度が東電管内。東電は賠償スキームの中で政府の管理下に置かれるため、比較的分離を実現しやすい。
 もっとも株式上場した民間企業の分割を政府が決められるのかという課題もある。東電の発電と送電の分離が実現に向けて動き出せば、他電力にも分離論は波及する。電力業界全体の反発へと広がれば、賠償のために設立する機構への各電力の負担金などにまで波乱が及ぶ展開も考えられる。

 菅首相の18日記者会見全般の報道としては、アタシが見てる範囲だと、東京新聞の19日付コンテンツが、バランスのいい報道かと思います。

首相「発送電分離 議論を」 定検中の原発 再稼働容認東京新聞、2011年5月19日)
 菅直人首相は十八日夕、官邸で記者会見し、電力会社の発電部門と送電部門の分離案について「自然エネルギーを大きく受け入れるとき必要な体制について、今後のエネルギー基本計画を考える中で当然議論が及ぶだろうし、そうすべきだ」と述べ、議論すべきだとの考えを表明した。
 電力会社の経営形態については「地域独占ではない形の在り方も含めて議論する段階がくる」とも述べた。

 首相はまた、近く設置する福島第一原発事故に関する調査委員会で「長年の原子力行政の在り方も十分検討してもらい、根本的な改革の方向性を見いだしたい」と述べ、経済産業省からの原子力安全・保安院の分離も検討する考えを示した。

 定期検査で運転停止中の原発については「緊急的な安全措置が講じられ、安全性が確認されれば稼働を認めていく」と明言。「より安全な活用の仕方がきちっと見いだせるなら、原子力をさらに活用していく」と述べ、原発からの全面撤退は考えていないとした。

 その一方で、自然エネルギーや省エネの比重を高めて「環境エネルギー先進国を目指す」と強調。今国会に提出された再生可能エネルギーの固定価格買い取り制導入法案の成立に意欲を示した。

 二十一日からの日中韓首脳会談のために来日する中国の温家宝首相と韓国の李明博(イミョンバク)大統領が被災地を訪問することについて「ありがたい」と謝意を示した。