予算の2次補正と、震災復興と、内閣不信任案

 昨日(17日)、自民党公明党が、「政府が今の国会会期中に2011年度予算の2次補正案を提出しなければ、内閣不信任案を提出する」意向を、公表しました。
 複数のメディアで報じられてます。


 アタシは、民主党を支持してるわけじゃぁないんで、自民、公明、不信任案出すんなら出せばいい、と思います。
 ただ、菅内閣には、東日本大震災の復興と、福島原発の終息及び賠償、そして、エネルギー政策の根本からの見直しは、今の路線で推し進めてほしいと思ってますけど。
 それって、民主党支持とは違うんだわ。


 さて、報じられた「内閣不信任の理由付け」ですけど、自民党が言ってることも、公明党が言ってることも、アタシには理解し難いです。
 もっと、ちゃんとした理由を説明してくんないと、有権者の大勢には納得しがたいんじゃぁないかしら?
 そう思えるので、内閣不信任案、出すんなら、出してみればいい、と思うわけです。


 まず、菅首相の方が、予算2次補正案の国会提出を8月以降と示唆してる理由付けですけど。
 16日の衆院予算委員会での答弁で、「東日本大震災で被災した自治体から復興計画を7、8月に出したいとの意向が伝えられている」ので「地元の意向を踏まえて考える。拙速は気を付けなければならない」と述べてます。


 今回の自民、公明の、不信任案提出は16日の菅首相の国会答弁に反応してのものなのでしょう。

 自民党谷垣総裁のアナウンスは、「まだ復旧分野でやるべきことが多い。それを予算化していくことが必要だ。原発災害の損害賠償スキームもまとまっていない。国民の不安を解消できないなら政権担当能力はなく、不信任案も考えないといけない」、と報じられています。

 公明党の山口代表のアナウンスは、「(予算を)そのまま放置して国会を閉じるのは不信任の1つになりうる」。

 複数のメディアで同様のコメントが報じられてるようなので、これは両党の最も公式なコメントとみていいと思います。


 どっちのアナウンスも、呆れるくらい具体性が乏しいんだわ。
 「先に通った、1次補正予算だけでは、まだ、これこれの部分の予算が足りない。だから、急いで2次補正を組む必要がある」って具体的指摘が伴ってない。

 「まだ復旧分野でやるべきことが多い」(谷垣総裁)ならば、その具体例を「予算との関連で」指摘しないとダメじゃーん。
 「復興関連のどの分野で予算がショートしてるか」指摘しながら、不信任案を出さないとダメなんだわ。
 だって、「2次補正予算案の提出が8月以降になること」を理由にしての、不信任案提出なのだから。


 実は、自民党石破茂政調会長が、5月中に自民党独自で東日本大震災の復興に向けた2011年度第2次補正予算案について概要をまとめる方針を公表したこと(11日の記者会見)、報じられてたんですけど。

 こっちなら話はわかるんです。
 自民党が独自案を国会に出して、もし、政府がちゃんと検討しなかったら、その時に不信任案って展開でもわかる。
 後先が逆ってゆうか、本末転倒だと思えます。まず、不信任案ありきみたいな今回の発表は。


 だいたい、谷垣総裁の言ってる「原発災害の損害賠償スキームもまとまっていない」って、これ変な言いがかりよね。
 「まとまってないけど、2次補正予算案出せ」って言ってることになっちゃう。

 アタシは、今政府が整えつつある「原発災害の損害賠償スキーム」は、いい方向性と思ってるんで書くけれど。
 自民党って、やっぱり政府案の損害賠償スキームが固まると困るから、脚引っ張ろうとしてるんじゃぁないの?
 菅首相が「原発事故は東電の責任だけじゃなくて、(長年続いた)国策の責任もある」って認めたことが、そんなに気に食わないのかしら??

 勘ぐりすぎって言うなら言ってもいいわよー。勘ぐられても仕方ないこと、先に言ったの谷垣自民党総裁の方なんだから。


 さて、震災復興に関連して、1次補正を加えられた予算が、今、足りないとしたら、どの分野でしょうか?

 例えば、仮設住宅でしょうか?
 確かに仮設住宅の建設ペースは、過去の震災からの復興と比べて遅めになってる、と報じられてます。
 けれど、その理由は、予算の不手際かしら?
 そうは思えない。

 報じられてるとこによれば、被災範囲が広範だったこととか、適性のある建築用地確保が困難な被災地が少なくないとか、仮設住宅建設用資材の一時的不足、などなどの事情が重なっての遅れであるように思えます。

 つまり、1次補正予算が通った後、予算のショートは仮設住宅関係では生じてないんじゃぁないか?? と思える。


 自民党も、公明党も、不信任案を出すなら出して構わないから「仮設住宅用の予算が足りない」とか、「予算との関係」での理由づけをちゃんと指摘しなくっちゃ。仮設住宅以外の分野でもいいんです。理由があるなら、是非、具体的に挙げてほしい。
 「まだ復旧分野でやるべきことが多い」なんて、そんなのあったり前じゃん。あれだけの大規模震災だったんだから。
 中学生でも言えるような感想を、内閣不信任案の理由付けにして、公式アナウンスしないでよね。聞いてるほうが情けなくなるから。


 震災被災地では、交通網の復旧はかなり整備された、ライフラインの復旧もそれなりに達成されてるように聞いてます。
 仮設住宅の建築は、遅くれめだけど、どうにか目処はたってきてる。

 そうすると、今、近々に予算が足りないとしたら、瓦礫撤去や処分の予算かしら?
 あるいは、海水に浸った農地の土壌改良とか??

 アタシは、「瓦礫撤去や処分」も、「海水に浸った農地の土壌改良」も、広範な被災地の自治体ごとに異なる、被災程度、地形や風土、産業構造に合わせて、「うちの自治体ではこういうふうにしたい」だから「これくらいの予算が欲しい」って要望を聴いていって、聴きながら調整してった方が、ずっといいはず、と思うんだけど。
 どう考えてるのかしら? 自民党も、公明党も??


 自民党の石原幹事長は、「2次補正を今国会に速やかに出すべきだ。(首相が)自分の都合で閉じるようなことがあれば万死に値する」と、記者会見で述べた、と報じられてます。

 「被災自治体から復興計画を7、8月に出したいとの意向」があるので「地元の意向を踏まえて考える」だから、2次補正予算の提出は8月以降になる、って理由付けの、どこが「自分の都合」なのかしら?

 そこんとが、アタシ、根本的にわかんないだわ。
 よくわかんないままに、印象で書いちゃうと、揚げ足取りに因縁つけてるようにしか聞こえない。


 もしかして、アレ? 中央集権路線の自民党としては、「地元の意向なんか待たないで、国会と中央省庁で、とっとと予算を組んで被災地に押し付ければいい」、それをしないのは「万死に値する」みたな意見??
 それとも、エネルギー政策の白紙からの見直しと、本気でやられたら、自民党としては困るから?


 もし、そんなんじゃぁない、って言うなら「首相は、『地元の意向を踏まえて考える』と言ってるけど、それはごまかしだ、なぜならこれこれの事情があるから」とか、きちんと説明するべきです。
 あるいは(さっきも書いたけど)「すでに、1次補正予算では、これこれの分野で予算が足りてない」と、具体的に挙げてくれてもいい。
 石破自民党政調会長が記者会見で言った「自民党案の第二次補正予算案」を国会に出して、「その後からの」不信任案提出なら、なおいい。


 具体的な理由付けを伴った不信任案提出なら、まともに考えてみるつもりはありますけれど。
 イメージ先行の政略的な不信任案提起でしかないなら、政府の脚を引っ張ること狙い、としか思えない。


 震災被災地の皆さんに、復興のペースが遅いことに、不安も不満もあるだろうことは、アタシも理解できます。
 ただ、今のとこ、報じられてる自民、公明の不信任案提出意向は、「被災者の不満を代弁」したものとは思えないんです。そうではなくて「被災者の不安を煽る」イメージ政略としか思えません。

 ここが一番腹が立つ。

 自民党公明党が、不信任案提出は「被災者の不安を煽るイメージ政略」なんかじゃぁない、って言うなら、もっとちゃんと不信任の理由付けを具体的に挙げるべきです。


 曖昧な理由付けの不信任案提出で、解散総選挙にもってって、国民の支持が自党に集められるとか、甘いこと考えてるなら、自民党公明党も、早く不信任案出せばいい。

 不信任案をちらつかせる駆け引きで、震災復興政策、原発事故被害者救済、エネルギー政策の根本からの見直し、などの脚を、ズルズル引っ張り続けられるよりは、その方が、まだマシ、とアタシは思います。