「サンデー・フロントライン」(テレビ朝日)15日放送分は、中曽根元首相へのインタビューとかも観応えありました

 15日(日曜日)の午前中、テレビ朝日で放送された「サンデー・フロントライン」は、観ごたえがありました
 15日付の記事では、ハイライト・シーンにあたるはずの、民主党玄葉光一郎政調会長自民党石破茂政調会長の対談のことを簡単に書きました。

 「サンデー・フロントライン」が、番組構成の基本パターンで言うと、普段は、2時間枠の番組のはじめ2/3ほどを、様々な、事実報道、検証報道に、ニュース解説やパネル・ディスカッション形式のスタジオ・トークを織り交ぜて。終盤1/3ほどでは、やや長めの現地レポートをメインに流すって構成。


 15日放送分の構成は、ことのほか、凝ってたんですよね。

 大筋で言うと、まず、冒頭「消えた原子力の火」ってタイトルで14日(土曜日)に浜岡原子力発電所が停止されたことを報じてから、3月19日に浜岡原発内部にカメラを入れた取材画像を使って、「(原発)推進派」「(原発)慎重派」の研究者の人各1名様ずつに、安全対策の評価を求めたコメントで構成。
 ここは、両論併記の形で、番組からは積極的な論評を加えてない。そこがいいのよ、画像レポート自体は、現地レポート、事実報道に徹してて。

 報道ってこれでいいのよね。
 信頼できる諸説をできるだけ等分に、公正に(フェアに)紹介したら、最終的な評価は視聴者のそれぞれに委ねちゃっていいのよ。


 続けて「揺れる“原発城下町”」と題されたセクションに。
 このセクションは、地元御前崎市の街頭インタビューから入って、浜岡に中部電力原子力発電所が誘致された経緯を検証報道+誘致後の地域行政への恩恵を事実報道。
 ここは、「検証報道」って呼ぶにはやや簡便だったけど、浜岡町役場(当時)で、発電所立地を担当して、後に町長にもなった方の談話クリップなども織り交ぜて、結構頑張ってました。

 ただ、元町長さんの談話を幾つかに分割して、間に取材画像を挟んだ構成は、アタシは懲りすぎと思いました。
 人の談話には、話の流れってものも話の筋ってものもあるから、報道画像で、細切れにして使うのは、感心しません。
(原則的に感心しないけど、原発内部の取材画像と、研究者のコメントを交互に映してくなんてのは、巧い工夫だと思いました)


 さて、「揺れる“原発城下町”」の後、玄葉光一郎氏、石破茂氏、両政調会長対談の前不利で、浜岡原発停止に関連するコメントを求めてた。

 次のセクションが結構、観応えがあったのよ。
 「気がつけば“原発大国”」って題されたセクションで、日本の戦後原発開発史を駆け足に、検証報道。
 ハッキリ書くと、このセクションの検証報道は、際どく、辛うじて検証報道として成り立ってた感じ。
 つまり、単品のドキュメンタリー作品としては、検証が手薄だったとは思います。

 でも、「気がつけば“原発大国”」のハイライトは、中曽根元首相への長めのインタビュー画像だったのね。
 だから、検証報道のパートは「単品ドキュメンタリー作品」としては、検証が手薄だったけど、中曽根元首相が長めのインタビューで語るお話を、視聴者が理解しやすくする背景解説としては、かなり良かったと思います。

 「中曽根元首相への長めのインタビュー」は、興味深かったし、観応えありました。
 中曽根元首相は、1918年生まれなんですけど。その世代の方のお考えとしては、「(原発が危険だからと言って廃止するのは)反文明の考え方」、先進的な技術は取り入れていかないといけないって趣旨の意見は、アタシは仕方ないと感じました。
(念のため書いとくと、中曽根元総理大臣、福島原発の事故についてはカメラに向かって「原発の恩恵に浴して、恩恵のままにノリすぎて、危険性とか配慮というものが少し薄くなってきたと思う」とは言ってられました。
 「少し」かどうかってのは、突っ込みどこのはずですけど。ここでは、あの世代の方の発言ってことでお聞きしときたいと思います)


 アタシの考えだと、今の産業段階では、再生可能エネルギーを「先進的な技術」で実用化して「取り入れていく」方が、文明的だと思うんですね。
 だって、高速増殖炉とか、結構研究費費やしてきたけど、実用化に至らなかったわけじゃん。
 国内原発だけでも、たまりにたまってる使用済み燃料棒をどう処理するか、ってのをきちんと筋道立てる方が、「文明的」だと思うんだわ。


 そして、中曽根元首相への長めのインタビューをハイライトにした「気がつけば“原発大国”」セクションの次が、両政調会長対談のメインパートでした。
 両政調会長対談が終えると、番組冒頭からの2/3ほどを費やしてたってのが、15日放送分の「サンデー・フロントライン」の大枠構成。
 ここまでの構成を再整理してみると:

  • 「消えた原子力の火」で、停止された浜岡原発の安全性を検証報道。
  • 「揺れる“原発城下町”」で、浜岡原発立地の検証報道と、御前崎市の今の現地レポートを報道。
  • 「気がつけば“原発大国”」で、中曽根元首相へのインタビューをメインにしながら、戦後日本の原発開発史を(駆け足だけど)検証報道。
  • 玄葉光一郎氏、石破茂氏、両政調会長対談。この対談の趣旨は、蓋を開けてみたら「長期的なエネルギー政策、原発政策の見直しを念頭におきながら、福島原発事故の対策のあり方について意見を交わす」みたいな流れになって、とても高密度でした。


 この構成、すごく凝ってるのよね。
 「両政調会長対談」以前の報道は、全部、「長期的なエネルギー政策、原発政策の見直し」対談を観る視聴者にとって、参考にできる中身になってた。

 「消えた原子力の火」で、つい先週、日本の一箇所で起きた出来事を報じて、その浜岡原発の歴史背景を追ってから、日本全体の戦後原発史を、駆け足でも検証って流れ自体もよく練れてるじゃん。
 ほんとに駆け足だったけどね。


 「両政調会長対談」自体は、高密度でとても観応えあったけど、その件は、昨日付けの記事で書きました
 番組構成上、「両政調会長対談」に至るまでの報道も高速で、かなり充実してました。
 厳しい目で評価すれば、検証にはちょっと際どいとこもチラホラみられたんだけど、概ねは、報道のバランスも良かったと思います。
 色んな立場からの意見談話を種々取材構成してて、最終的な評価は視聴者に委ねられてた形。


 「サンデー・フロントライン」では、4月の10日放送分の「東日本大震災から1ヵ月」で、やっぱり番組冒頭の2/3ほどを使った、福島原発事故に関する報道も観応えあったんですよね
 月に1度ペースでいいから、この密度の原発関連、エネルギー政策関連の報道をやってくれるんなら、アタシは歓迎。

 もうちょっと視聴者にとってのユーザー・フレンドリーさも意識してくれるとなおいいと思いますけど。
 そうした面への期待も込めて、番組には期待してます☆