今朝の「サンデーフロントライン」(テレビ朝日)、エネルギー政策原発政策見直しの対談が、観ごたえありました

 今日の午前中、テレビ朝日で放送された「サンデー・フロントライン」は、観ごたえがありました。

 ことに、民主党玄葉光一郎政調会長自民党石破茂政調会長の談話が、高密度で観ごたえがあって。
 この対談、ふたを開けてみたら「長期的なエネルギー政策、原発政策の見直しを念頭におきながら、福島原発事故の対策のあり方について意見を交わす」みたいな趣旨でやりとりされたと思います。

 石破茂政調会長は、記者会見で、日本の原子力政策について(福島第一原発の事故を受け)「長年与党として(自民党が)担ってきたことは間違いない事実だ。責任は全て今の政府・与党にあるわけではない。(自民党の政策の)どこが誤っていたのかきちんと検証しなければ、政府を追及する資格を持たない」とハッキリ言ってるなど、原発問題については、自民党所属議員では、筋の通ったことを言ってる、数少ない議員さんのお一人。

 それだけに、玄葉氏、石破氏、両政調会長対談は、原発推進派対反対派って無意味な構図にならない議論で、観応えがありました。


 この対談で注目されるのは、アタシが思うには、次のような発言かと思われます。
石破茂自民党政調会長発言:

  • 浜岡原発の停止について「これはこれで重く受け止めなければいけないものだと思う。ただ、幾つか問題点はありまして。1つは『止めたことでどれだけ安全性があがりますか?』ってこと(中略)。2番めは『なぜ、浜岡だけですか?』(中略)。3番目は『法的にはどうだったんでしょうか?』。(首相は)要請しただけですよね。そうすれば、責任は止めた中部電力が負うことになります。本当にそれでいいでしょうか? そしてこれから先の電力需給はどうなりますか?(後略)。」
  • 自民党が長期推し進めてきた原子力政策について反省点「危険性の配慮(が充分ではなかった)。もう1つは、原子力発電は本当にコストが安いのか?(中略) 確かに運転中は安いんですよ。ですけれども、廃炉にするコストまで考えたら、もしくは事故に対する賠償も含めて本当に安いのか? ってことですね。(中略)送配電の分離とかね、あるいは太陽光とか、さらには蓄電池をもっと研究しましょうとか、超伝導とか、そういうものをもっと進めなくてはいけなかったんだが、でも最後は原子力神話みたいなところで、思考停止しちゃうところがあったのではないか、と思います。私は、原子力発電というのを止めるってことは考えられないと思う。日本の産業が死んでしまうので。だけども、『原子力発電があるから大丈夫だ』というとこで思考停止していなかったか? と、いうことと、もう1つこれから議論になると思いますが、電力の、電力会社のビジネスモデル。これ本当に正しかったんですか? という議論、しなければいかんでしょう」
  • 原発の安全基準について「(止める、冷やす、閉じ込める)この3つが本当に機能するのか? ということは徹底して検証する必要があるでしょう。そして、浜岡だけじゃなくて、他の地域の原発だって、(地震の)確率87%って言いますけど、福島なんて0だったわけです。宮城は99%だったけどね。じゃ、複合的に起こったら、どうなるんだってこともあって。だから『浜岡だけ止めれば』、『浜岡だけ』という話、『止めればいいんだ』という話、そこでまた、思考停止しちゃいかんのですよ」
  • 再生可能エネルギー関連技術の開発について「結局ね、国家の優先順位の付け方の問題でしてね。例えば、地デジだって、何千億円という金を使ってきたわけですよね。(中略)スマートグリッド、賢い電力網って話も、なかなか日本で進んでこなかったのはなぜだろう? 『アメリカと違って、日本は停電なんかしないから、だいじょぶだよ。以上、おしまい』ということを変えていかないといけない」
  • 東電の賠償責任問題について「当面はですね、このスキーム(政府機構案)は、基本的に評価すべきものだと、私は思います。当面は、と申し上げたのは、これは永続性を持つもの(機構)なのか、ってことですよね」
  • 発送電の分離について「発電と送電の分離ていう話は、いままでタブーみたいになってたわけですよ。やっぱりそこはちゃんと議論しなくてはいけない。ただ、電力のビジネスモデルというのが必ず儲かるようになっていた。だからこそ、安定した社債も発行できてたわけで。そこがどうなるのかということと、自由競争になった場合、儲からないとこに電気行きませんよってことを避けるために、どうするかってお話は、もう与党がどうだ、野党がどうだって言ってもしょうがない。そこは詰めた議論をしなくちゃしょうがない」


玄葉光一郎民主党政調会長発言:

  • 「(原発を巡る議論の歴史は)二項対立の歴史だったと思うんですね。私は、それが不幸だったと思います。つまり、『賛成か反対か』。したがって、中間の立場の層が薄かったんじゃぁないのか。あるいは、声が小さかったんじゃぁないか。つまり、一定程度原発を認めながら、徹底して安全性を追及する、そういう立場の方が少なかった。(後略)」
  • 「私たちも力不足だったんですけれども。旧保安院の頃から、もう経産省から保安院は分離をして、安全性を徹底させるべきだ、と、さらなるチェックの体制を作るべきだ、と、もう10年以上前から、実は申し上げて来ました。で、政権交代して、その議論を内部ではじめていたところに、この事態が起きた、ということですので。非常にですね、このことは、我々、反省と共に考えなくてはならないと思います」
  • 原発の安全基準について「(原発について)これから高経年化の問題も出てきます。私は、既存原発について、新しい安全基準を作って、短期的にですね、動かさざるを得ないと思います。(後略)」
  • 東電の賠償責任問題について「私は、総合的に判断すれば(政府の)機構案がベターだと、やはり思います」。この発言は、東電支援ではなく、被害者への賠償仮払いを前倒しでおこなうためにベターとのこと。また、「電力会社の形態のあり方論というのは、これは、別途やらなくてはなりません」とも。「このスキーム(政府の機構案)が固まったからと言って、さきほどおっしゃったような発送電分離とか、様々な電力事業形態のあり方の議論を、妨げることはありませんし、妨げてはいけないと思います」


 この日の、両政調会長対談は、番組のハイライトだったと思います。
 少なくとも、番組の終盤放送される現地レポートの枠(これ、番組の基本構成のパターン)を除いた、番組冒頭から2/3ほどの報道のハイライトでした。

 ただ、関連する話題に多面的に触れる、高密度、高速の展開だった分、実は視聴者にとってのユーザー・フレンドリーさ……、例えば議論の飲み込みやすさとかは、やや低かったかもしれません。

 けれど、石破氏の言う「思考停止」、玄葉氏の言う「二項対立」を回避してて、それが観応えの理由になってたと思えます。
(石破氏の言う「思考停止」、玄葉氏の言う「二項対立」は、同じ思考法の違った面での顕れにすぎないですよね)