原発立地、及び、周辺自治体にNHKが独自アンケート

 NHKは、原発立地、及び、周辺の市町村、府県に独自アンケートを実施。その結果に、「原発の安全確保と、経済や雇用対策の両立を求められている実態が浮かび上がって」いる、との分析を添えて公表しました。
 「原発自体が立地している自治体には、運転再開容認が多く」、「隣接自治体には、判断に迷っているところが多い」といったアンケート結果であるようです。


 まず、NHKが公表してるアンケート結果の主要部分を抜き出し引用して整理してみます。
 調査対象からは、現在原発事故状態が継続してる福島県自治体と、原発停止が決まって作業も進んでる静岡県自治体は「除いて」、54の自治体にアンケート調査をした、とのこと。

東日本大震災の影響や、定期検査などのため現在停止中の原子力発電機の運転再開について:

  • 運転再開は「容認できる」「どちらかといえば容認できる」=計20
  • 運転再開は「容認できない」「どちらかと言えば容認できない」=計15
  • 運転再開について「現時点では回答できない」など=19

上記アンケート結果を、原発が立地している16市町村に絞ると――

  • 運転再開は「容認できる」「どちらかといえば容認できる」=計11
  • 運転再開は「どちらかといえば容認できない」=1
  • 残りの4自治体は未回答か(?)、報じられておらず不明。

一方、周辺市町村24に絞ると――

  • 運転再開は「容認できる」「どちらかといえば容認できる」=計9
  • 「容認できない」「どちらかといえば容認できない」「未回答」の数は、報じられておらず不明。

 また、運転再開を「容認できる」とした自治体に理由を訊いたところ、「国が適切に判断するものと考えているから」と答えた自治体が16で最多とも。
 一方、「容認できない」、「答えられない」とした自治体に理由を訊くと、「国の判断が明確に示されていない」とした自治体が19で最多とのこと。


 これらのアンケート結果を踏まえて、NHKは「原発立地、周辺の自治体に、政府が原子炉の運転再開を安全とした判断理由(浜岡以外の話)」についてのより詳しい説明を求めている、って趣旨の分析も述べてます。
 この分析は、アタシも概ね妥当だろうと思います。


 ただ、NHKはアンケート結果の分析を「原発の安全確保と、経済や雇用対策の両立が求められている実態が浮かび上がって」いるともしてるんですけど。
 そこまで言うものとしては、公開されたアンケート結果、論拠として弱いと思えますね。


 NHKのアンケート調査に限らないけれど、「原発の推進、容認、反対」を訊く、アンケートの類は、「原発の設計基準、安全運転の基準は、従来より厳しく改められるべきか?」って質問もしないと。
 そうした質問もあわせてやらないと、福島原発の事故が実際に起きてる(現在進行形)って状況とのリンクが弱くなるでしょう。


 今回のNHK調査に絞って言っても、「原発の設計基準、安全運転の基準は、従来より厳しく改められるべきか?」って、質問もあわせておこなって、やっと「政府が、浜岡原発以外の原子炉の運転再開を安全とした判断理由」について、自治体がより詳しく、どんな方向性の説明を求めてるかが、やっと「浮かび上がって」くるはずです。

 同じNHKが、別の記事で報じてることなんですけど、原発の周辺自治体には、電力会社との安全協定締結を求める動きも、広がってるんです。
 いわゆる“原発安全神話”が崩れたのが「福島原発の事故が実際に起きてる(現在進行形)って状況」なわけ。

 そこで、「原発の安全確保と、経済や雇用対策の両立が求められている」にしても(それは当然です)、原発の事故は起こりかねないって不安も多くの自治体が抱いてる。
 だからこそ「政府に安全と判断した根拠の、より詳しい説明を求める声が多い」って方が、より実情に近いのでは、って思えます。

 これって、「従来ラインの安全性確保と雇用」の間での選択って話よりも、数段複雑なはずだけど。NHKのアンケート調査と分析は、その複雑さを、充分浮かび上がらせてはいない。
 NHKの分析「原発の安全確保と、経済や雇用対策の両立が求められている」は、実情の整理を、シンプル化しすぎてる。もっときつくいえば、強引な分析になってるんじゃぁないか、と思えます。

立地自治体 運転再開容認多いNHKニュース、5月11日)
 東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、全国各地で運転を停止している原発の運転再開について、地元や周辺の自治体がどのように考えているのか、NHKがアンケート調査を行ったところ、原発が立地している自治体の方が、隣接する周辺の自治体より運転再開を容認する意見が多いことが分かりました。原発の立地は、地域経済への影響も大きく、原発の安全確保と経済対策の両立を求められている実態が浮かび上がっています。


 NHKでは、全国の原発が立地している道県と市町村、それに地域防災計画で原発事故を想定している周辺の府県と市町村を対象に、現在、運転を停止している原発の運転再開に対する考えをアンケート調査し、福島県内の自治体と、浜岡原発の運転停止が決まっている静岡県内の自治体を除き、54の自治体の回答をまとめました。それによりますと、運転再開を▽「容認できる」または「どちらかといえば容認できる」と答えた自治体が20、▽「容認できない」または「どちらかといえば容認できない」と答えた自治体が15で判断が分かれたほか、▽「現時点では答えられない」などとした自治体も19に上りました。また、▽運転再開を「容認できる」理由について尋ねたところ、「国が適切に判断するものと考えているから」と答えた自治体が16で最も多かった一方、▽「容認できない」、または「答えられない」とした理由でも、「国の判断が明確に示されていない」とした自治体が19で最も多く、ほとんどの自治体が国の判断基準に高い関心を持ち、詳しい説明を求めています。さらに、原発が立地している16の市町村に絞って見ますと、▽運転再開を「容認できる」または「どちらかといえば容認できる」と答えた自治体が11で、7割近くに上ったのに対し、「どちらかといえば容認できない」と答えたのは1自治体にとどまっていました。一方、隣接する周辺の24の市町村で見ますと、「容認できる」または「どちらかといえば容認できる」と答えた自治体は9市町村と、4割以下にとどまり、原発が立地している自治体の方が、隣接する周辺の自治体より運転再開を容認する意見が多いことが分かりました。立地の市町村の中には、容認の理由として「自治体の財政や地域経済への影響が大きいから」と答えるところもあり、原発の安全確保と、経済や雇用対策の両立を求められている実態が浮かび上がっています。