自動販売機と節電
こないだの選挙で、石原慎太郎氏が4期連続の都知事に選任されてしまって。これからの4年、東京都民は酷いめに会うだろうって、予測はついてましたけど。
早速、「無駄なものは止めろ」って決め付けで、少数の特定業種をつるし上げ。
「自動販売機」と「パチンコ屋さん」をヤリ玉にあげて計画停電のしわ寄せを集中的に負わせていく意欲を見せました。
なんで、もっと薄く広く、計画停電の負担が分担されるように、調整しようって風に考えようとしないのかしらね?
と、呆れてたら、都議会の民主党会派が自販機について、負けず劣らず強引な条例案を提出すると政治パフォーマンス。
「落ち着け、東京都政」って思いましたね、アタシは。
◎「薄く広く」計画停電の負担を分担
「薄く広く、計画停電の負担を分担」って、例えばどんな?
例えば自販機。自動販売機の経営は、一般に、レンタル制度です。
地権者が、運営会社とレンタル契約を結んで、設置場所を提供。商品補充などの運用は運営会社がおこなって、契約をした地権者の方は、売り上げに応じたマージンを受け取る方式になってます。
電力消費と経済効率を図りにかけて考えるなら、例えば、大きなスーパーの前に客寄せ用に設置してある自販機、あるいは地下鉄や鉄道駅の構内などに売店とは別に設置されてる自販機の類を、電力消費のピーク時の間だけでも停止するよう、業界団体(スーパー関係の業界や鉄道会社)と、自販機レンタル会社の合議を行政主導で調整していけばいい。
もし、近くに店舗がある大手スーパーや駅などの自販機だけでもピーク時に停止する路線がとれれば、経済活動を萎縮しかねないマイナス作用は、近傍の売店とである程度の緩和が期待されます。
加えて、そうした売店が周囲にない場所に設置されてる自販機の恩恵は保護される。
ただし、自販機業界の方にも言い分はある様子です。「節電すでに実施済み」で、「夏場午後は冷却機能を停止して消費電力を10分の1以下にするなど省エネに取り組んでいる」とも。
だから業界団体同士の合議の必要があります。話し合って、妥協点を調整していくのが、民主主義社会ってもんですよね。
「どうせ無駄に決まってる」とか思考停止で決め付けて「全部とめちゃえばいいじゃないか」みたいのは、とても乱暴な考え。
例えば、運送業者の人、宅配業者の人、引越し業者の人、工事現場の作業員の人たちなどなど。この人たちの利便性を、頭から「贅沢」と決め付けるのは、決め付ける方の驕りです。
少なくとも、冷蔵庫が設置されてる屋内で暮らし、仕事をできる立場の人間が決め付けていいことではない。
決め付けはしないで、話し合って、妥協点を調整するのが、民主主義社会ってもんですよね。
道徳観から自粛を煽りたがってる人たちは、「屋外労働者も売店まで足を運べばいい」とか「水筒でも持てばいい」とか言い出し兼ねない勢いですが。
そういうことは、自分が水筒を持って宅配なり、屋外工事なりをやってみてから言ってほしいものです。
何が無駄だとかを、道徳的な価値判断で決め付けようって言うんなら、当然ですね。
◎パチンコ屋さんを全廃したら、東電も困るし、国民だって困る
「パチンコ屋を止めろも」首都の知事が唱えるにしては、大雑把すぎ、乱暴すぎの“政策”で、バカバカしくって検討する気も起きない。
どうも、石原都知事は、計画停電のポイントが「ピーク時の消費量の問題」であることをわざと無視して、自分の道徳観を東京都民に押し付けたいご様子。
果たして、パチンコ屋さんの次のヤリ玉は、アミューズメント・パークでしょうか? それとも映画館でしょうか?? これが、権力者による恣意的なつるし上げの怖さ。
パチンコ屋さんにも、ピーク時には節電に協力してもらうのは当然です。
けれど、オフ・ピークの早朝や深夜の電力消費は、パチンコ屋さんに限らず、許容される範囲で励んでもらわないと、東京電力だって困るでしょうに。
消費社会のメカニズムって、そういうもんです。
国民だって、東京電力には、できる限り、福島原発の賠償金払ってもらわなきゃなんないのに。
そうしなけりゃ、賠償を国庫が請け負う比率が増えてかないません。
◎都議会民主党会派は何を考えてるのかしら??
さて、石原都知事がぶち上げた乱暴な“政策”の件は、今はこのくらいにしておきます。
一部を槍玉にあげて、袋叩きにするよう世論を煽る扇動政治は、石原都政の得意技ですから。またですか、って思うだけです。
都議会民主党会派まで、自ら都下の経済活動を萎縮させようって政策に乗り出すのはどうしたことなのか?
飲料自販機の節電条例案提出へ=今夏の施行目指す-都議会民主
東京都議会民主党は14日、都内の清涼飲料水の自動販売機の消費電力を抑制する条例案を6月議会に提出する考えを明らかにした。東日本大震災の影響で電力不足が見込まれる夏に、自販機の冷却装置を停止する時間を拡大するよう飲料メーカーなどに努力義務を課す内容で、罰則規定は設けない。
飲料水の自販機は、既に省エネ対策として、7月から9月にかけ、午後1時から同4時まで冷却装置を停止し、保冷機能で製品を冷やしている。条例案は、冷却装置の停止時間を午前10時から午後9時に拡大するよう求める。
(時事ドットコム:2011/04/14-20:35)
「都議会の民主党会派が、自動販売機に対する条例案を提出する予定」ってニュースは、昨日のNHKでも「首都圏ネットワーク」(地上波)で放送されてました。
時事ドットコムの報道コンテンツでは触れられていないけど、NHKの報道クリップでは、都議会民主党会派が「この条例案を6月までに都議会に提案する予定だが、条例に従わなかった場合の罰則などは慎重に検討する。業界がさらなる節電に乗り出せば、条例案提出を見送ることも検討する」としている旨、アナウンサーが報じていました。
NHKの報道と、時事ドットコムの報道とで、ずいぶん話が違って聞こえますね。気になります。
NHKの報道では、日本自動販売機協会の理事さんが、取材カメラに向かって、街角で自動販売機があちこちに立っているから「例示し易いんでしょうね」とコメント。さすがに大人のビジネスマンだから、言葉を選んでたけど、アタシには「ヤリ玉にあげ易いんでしょうね」って聞こえたわね。
協会の理事さん曰く、我々は、節電の努力はこれまでもしてきているし、これからも絶え間なく続けていく、とも。なるほど。
電気を消費はしてるけれど、浪費はしていない。電気を消費してるのはテレビも同じではないか、とも。ごもっとも。
アタシは、都議民主党会派、NHKの報道を否定し修正を求めてくれたらいいな、と思います。
もし、NHKが報じた通りなら、この件の都議民主党会派のやり口は、「罰則も考えてるけど、業界団体が自主規制するなら、条例での規制は待ってあげるよ」って示威行動ですよね。
「政治的パフォーマンス」と言われても仕方ない。
自動販売機の業界を、ヤリ玉にあげて恫喝するヤリ口は、石原都知事と50歩100歩です。
東京都政は、いつから民主主義から恐怖政治にシフトしたんでしょうか?
都民ではないですけど、わが国の首都のことですから、気になります。
「落ち着け、東京都政」。