サンデー・フロントライン:今週の放送分は、アタシ的にはやや物足りなかった
テレビ朝日系で毎週日曜放送されるニュースショー形式の「サンデー・フロントライン」。
9月18日の放送分は、アタシの大雑把な評価だと、中の下。
この番組の普段の出来と比べて、そう酷く出来が悪いわけでもなかったけれど。全般に物足りなく感じました。
「中の下」って、ちょっと辛めの評価かもしれませんけど。「番組最初のパートで扱った、北朝鮮関連の報道が散漫だった」、「特集フロントライン『発掘人物秘話』がつまんなかった」ってのが主な理由。
アタシが思うには、「サンデー・フロントライン」って、観てると、関連した話題の追跡取材を報じてくれる時に、観応えが増してると思うんですね。
当たり前っちゃ、当たり前だけど。そんな当たり前のこともアピールしてくれない報道番組も、日本のTV放送だと珍しくない気がするし。
今週分の報道が、物足りなかったのは、アタシが思うには、追跡取材に基づいたパートが見当たらなかったからじゃぁないかな(??)。
逆を言えば、北朝鮮情勢とか、これを機に、今後、追跡取材性を強化してくれてってもいい、って思います。
今週出演のコメンテーターは、東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋さん、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗さんのおふたりでした。
毎週、基本的には、概ね3つのパートに大別されてる「サンデー・フロントライン」。
今週の番組構成は、大まかには、次のようでした。
- 最初のパートではまず、「人民軍までも栄養失調・・・/内部映像が語る脱北船漂着の背景」を紹介した後、「“復興増税”一直線?/財源は他にないのか」って話題の解説報道。
- 2番めのパートは、いつも通り、週間重大ニュースセレクト「これはニュースだ!」。
- 3番めのパートは「特集フロントライン」で、今週は「発掘人物秘話」。「インスタントラーメン王 安藤百福」で、日清食品創業者(安藤百福氏、故人)を、「執念のラーメン王」って人物像に整理して紹介。
まず、「人民軍までも栄養失調・・・/内部映像が語る脱北船漂着の背景」ですけど。
これは、アジアプレス・ネットワーク。が発行してる雑誌「リムジンガン」の現地記者さんが撮影した画像を紹介。
「アジアプレス・ネットワーク」のサイトでは、9月22日付で「栄養失調で衰弱する人民軍兵士『激痩せ』で動けぬ者も」ってコンテンツが公開されてます。
コンテンツによれば「撮影者のク記者は、秘密裏に中国に出て来て、撮影されたテープを筆者に渡」したとのこと。
サイトで公開された写真も、「サンデー・フロントライン」で放送された画像も、こうした経緯で得られたもの、ってことでしょう。
番組の方では、(放送された画像)が、アジアプレス・ネットワークの提供ってことはテロップで流されたし、“内部画像”の撮影者としてク記者の名前も語られてた。
けどね、「撮影者のク記者は、秘密裏に中国に出て来て、撮影されたテープを筆者に渡したそうだ」くらいのことは言ってほしかったのよね。
言うと言わないとで、視聴者が解する画像の素性イメージがかなり変わるから。
ぶっちゃけ「内部画像」みたいな呼び方もハショってるわよね。「北朝鮮の域内で撮影された画像」って意味でしょうけど。単に「内部画像」と聞けば、「向こうの政府部内者が撮った画像」って勘違いも出そうじゃん。
「北朝鮮のジャーナリストが撮影した」みたいなことは言ってくれてたけど。TV画像って流れてくもんだから、ポイントはきちんと押さえてくれないと、視聴者の内には、勘違いだって生じるはず。
一連の報道、13日に能登半島にいわゆる脱北者を乗せた船が、能登半島に漂着したことを受けての報道だろうと思います。タイムリーな報道を差し込んだ点は、いいと思う。
脱北の背景事情を探る方向で、「アジアプレス・ネットワーク」に画像提供を受けたのも良かった。評価したい。
けど、せっかく提供された、画像を焦点にした分析の整理が、散漫だったと思います。
(そりゃ、漂着船に乗ってた人の談話とかとれたらその方がいいけど。短時日では無理だった、ってことはあり得ると思う)
例えば、アジアプレス・ネットワークと関係ない第3者に画像を観てもらって論評を加えてもらったりしてるんだけど。
それ自体はいいと思うんだわ。けれど、第三者評論家の内には、「アジアプレス・ネットワーク提供画像」と関係ない、北朝鮮政府の画像をサンプルに示して「北朝鮮から出てくる画像は、現地の災害被災状況を大げさにアピールする例もある」みたいな例示にしてたり。
こんな論評は、今回提供された画像の、分析、解説としては、かなり的をはずしてる。それやこれやで、全体としては散漫になっちゃてました。
「“復興増税”一直線?/財源は他にないのか」って解説報道の方は、財務副大臣の五十嵐文彦氏をゲストに招いてのスタジオ座談がメイン。ここが、ゲストお一方に対して、番組側のコメンテーターお二人、プラス、司会者1人って形式だったんだけど。
にも関わらず、財務副大臣の御説を承る印象が強かったな。視聴者の多くが、ここが訊きたかったって思うようなコメントを聴きだすようなやりとりは、ほとんど観られなかったと思います。
まぁ、この点は、「サンデー・フロントライン」に限らず、日本のTV報道番組には、概ね感じられる傾向なんだけど。
週間重大ニュースセレクト「これはニュースだ!」は、概ね、いつもどおり。このコーナーは、いつもどおりで構わないって、思うな。
3番めのパート「特集フロントライン」でやった「発掘人物秘話」は、今週分、ことにつまんなかったと思います。
「インスタントラーメン王 安藤百福」で、日清食品創業者(安藤百福氏、故人)を、「執念のラーメン王」って人物像に整理して紹介。
安藤百福さんて方が、優れた実業家だっただろうってことはわかるんですけど。その業績を安易な精神論にまとめちゃった「発掘人物秘話」の作り方がつまんなかった。
例えば、安藤さんがアメリカにチキンラーメンの売り込みに行った時、食習慣の違いを強く認識。社内の反対を仕切って、カップヌードルの商品開発、販売展開を推し進めた、みたいなストーリーがまとめられてて。
1970年代を通じてブレイク・スルー、その後ワールドワイドに展開したカップヌードルの秘話は、興味深いんだけど。
“逆境にあっても諦めない精神”みたいな精神論でまとめちゃう作り方が、安易でつまんないのよね。
例えば、安藤さん以外の日本人営業マンが、同じようにアメリカに渡っても「食習慣の違い」を乗り越えるべき課題とみなさなかったかもしれない。安藤さんが、そこを重視できたのは何故か? とかね。
それは“逆境にあっても諦めない精神”みたいな切り出し方ではわからないポイントよね。実際、「発掘人物秘話」では描けてなかったし。
あるいは、安藤さんが、カップヌードルの商品開発を推し進めた時に、社内の反対論を説得するために、どんな手法をとったのか、も描かれてなかった。
だいたい、「100円は高いですよ。たかがラーメンじゃぁないですか」って、反対論も、多分、年配の視聴者でないとピンとこないものよね。
当時、どんぶりラーメンを外食しても一杯いくらだったか、とか、その程度の情報をインサートするだけで、視聴者の説得力は全然違うんですけど。例えば一杯50円とかの時代もあったわけよね。今とお金の値打ち(貨幣価値が)が違ってたんだけどさ。
そうした労さえ惜しんだ作りは、全体としては安易なものになってた。
今週の「これはニュースだ!」コーナー:
番組に不定期に出演したりしてる、評論家、解説者、コメンテーターの人たちが、その週の重要ニュースに、1位〜10位の重要度を評価して提起するコーナー。
重要度はポイント換算されて、ポイント集計。週のニュース10を重要度順に整理するって趣向の週間重要ニュース選です。
番組の公式サイトで、どんなニュースがセレクトされたか、読めるけど。
今週は、「リーマンショック3年欧州危機深刻」ってタイトルのニュースが、番組選定の重要度1位のニュースとしてセレクトされてました。
【番組選定の重要ニュースランキング】
- 1位「リーマンショック3年欧州危機深刻」
ギリシャの財政危機をきっかけにした、ユーロ圏諸国の財政危機問題を報道。「リーマンショックから3年」の部分の解説がほしかったかな。
- 2位「総理大臣“低姿勢”所信表明」
国会の会期延長でもめた件を糸口に。
- 3位「所得・タバコ税は? 復興増税案」
番組最初のパートでやった「“復興増税”一直線?」と、関連づけてました。>
- 4位「テロ追悼も…アフガン混迷」
2011年の9.11から10年って、切り口と結び付けてて、それはいいんだけど。アフガニスタンって国の10年についてはコメントが薄すぎたと思うな。
- 5位「教育費“公的支出” 最下位」
- 6位「『避難準備区域』帰還3月メド」
- 7位「八ツ場ダム建設が安価」
国土交通省が、いったん、中止された八ツ場ダム建設の建設費再検証結果をなぜか公表した件。見出しがわかりづらいけれど、ダムを作らないで流域護岸とかするより、ダムを作ったほうが安いんだ、って検証結果が公表された件。
- 8位「原発大国 核施設爆発」
- 9位「初圏外『アジア優良企業』」
U.S.の経済誌「フォーブス」が、アジア・太平洋地域の企業の収益性を調査。50位以内に日本企業がランクインしていなかった、ってニュース。
10位までに選出されなかったニュースとしては、今週は次のような話題が候補にあがっていたようです。
- 「英仏首相が利権狙い? リビア詣で」
- 「パレスチナ暫定自治政府、国連総会加盟申請へ」
- 「管制官『居眠り』貨物機2機十数分連絡取れず」
- 「民主党 石幹事長が強権発動“情報統制”か」
- 「VW・スズキ業務・資本提携解消へ」
- 「“証拠改ざん”大阪地検元特捜部長ら古巣と全面対決」
- 「“改革派官僚”古賀氏が辞任へ」
- 「マイクロソフト、ウィンドウズ8はタッチ式に」
- 「100歳以上41年連続増、4万7千人以上」
- 「米国で『貧困層』人口が過去最高」
- 「日中“アイドル外交”SMAP北京公演」
- 「意外な節電効果 スーパー&コンビに売上増加」
- 「『寒っ』『ら抜き』若者言葉が拡大」
- 「“カレログ”彼氏追求アプリ、川端総務大臣が問題点を検討」