今週の“HARDtalk”:U.S.の新保守主義政界人2人のインタビューが聴けて、頭が痛かった(苦笑)

 BBCのロングランなインタビュー番組“HARDtalk”。
 BBC WORLD NEWSの日本語放送でも観れる、辛口インタビュー番組で、マン・ツー・マンのディベートって感じの番組です。
 30分枠で、月〜金の日替わりプログラムとして放映。実は、WORLD NEWSで流される番宣スポットだと、Mon〜Thuって表示されてるんだけど。BBC JAPANの放送だと、このとこ月〜金でやってくれてる。どうなってるのかしら??

 中身の方は、回ごとに当たり外れもあるけど、平均点は高いと思います。

 今週放送された“HARDtalk”は、いずれもホスト・インタビュアーは、メインのスティーフェン・サッカー(Stephen Sackur)。
 5日の月曜日から9日の金曜日にかけて、次のようなゲストを招いた番組が放送されました。

  • 5日(月):北イタリアで開催されてる国際フォーラムを訪れ、ブッシュ政権国連大使だったジョン・ボルトン(JOHN BOLTON)。
  • 6日(火):北イタリアで開催されてる国際フォーラムを訪れ、エジプト次期大統領の有力候補、アムル・ムーサ(AMR MOUSSA)。
  • 7日(水):安楽死の権利を求めているU.K.のトニー・ニコルスン(Tony Nicklinson)と、その妻ジェーン(Jane)。1日放送分のリピート。
  • 8日(木):6日放送分のリピート。
  • 9日(金):ニューヨークを訪れ、2001年の911事件当時、ニューヨーク市長だったルドルフ・ジュリアーニ(RUDORUPH GIULIANI)。

 今週放送分は、リピート放送が2度もあって、イレギュラーな感じの編成。イタリアやU.S.へ、スティーフェン・サッカーの遠出が続いたからでしょうか? ちょっと、わかりませんけど。


 5日の回と、9日の回は、9.11から10年ってタイミングを睨んでのセッティングでしょうね。
 ジョン・ボルトンルドルフ・ジュリアーニと、アメリカ中心主義で、新保守主義(ネオ・コンサバティブ)の政界人2人のインタビューが聞けました。

 財政危機と雇用低迷のアメリカで、「強いアメリカ」路線を唱える政治家がいれば、支持者も反対者もいるだろうことは推定できます。

 アメリカ以外の国の市民にとっては、「強いアメリカ」路線や「アメリカ中心主義」と対照的なのは、まずは国際協調路線だろうと思うんですけど。
 ジョン・ボルトンにしろ、ルドルフ・ジュリアーニにしろ、番組を観るとなかなか強硬な主張を持ってることがはっきりわかります。


 番組中、ジョン・ボルトンは、「アメリカは世界の警察ではなく、同盟国を優先的に守る」って趣旨のことを言ってて、これはブッシュ政権が「U.S.の敵か味方か」の二択を他国に迫った方針を継承した考え方と思える。
 ルドルフ・ジュリアーニの方は、番組中、2007年に出馬した共和党の大統領候補予備選でジョン・マッケインに負けたのは、マッケイン候補がU.S.の国家安全保障について、より“良い”メッセージを発したからだ、って述べてる。


 ジョン・ボルトン相手の討論風インタビュー20分ほどから、終盤の3分強ほどをクリップした画像ファイルが、右から観れます。⇒ “John Bolton: Libya 'a strategic embarrassment' for Nato”
 このクリップ画像には、リビアの体制変換へのNATOや、西欧諸国の関与と、中東情勢に対するU.S.のスタンスについて、ジョン・ボルトンが自説を語ってる画像が採録されてます。

 ルドルフ・ジュリアーニ相手のインタビューは、やはり20分ほどから2分ほどがクリップされた画像ファイルが、右から。⇒ “Giuliani: 42 attempted attacks on US stopped”
 こちらのクリップ画像では、ジュリアーニは、9.11の後、阻止されたイスラム過激派によるテロ未遂は、自分が知ってるだけで42あった、と語ってる。このコメントは、ジョージ・W・ブッシュの政策を“正しい”ものだったと評価して支持する趣旨で語られてる。


 ジョン・ボルトン相手のインタビューでも、ルドルフ・ジュリアーニ相手のインタビューでも、W・ブッシュ政権の評価が話題に上ったことは、注目していいと思う。
 ブッシュ政権で外交に関与したボルトンブッシュ政権の政策を擁護するのは意外じゃぁないけど。スティーフェン・サッカーの度重なる(異なった角度からの)質問に対して、ボルトンは、ブッシュ政権下対テロ作戦の“捕虜”に加えられた拷問の類はいずれも合法だ、って評価を崩そうとしなかった。このやりとりは、先にあげたクリップ画像には収められてないけれど、ボルトンの意固地とも言える感じは、目立ったと思うな。

 論旨としては目新しくもないんだわ、いわゆる「“拡大尋問”であって、U.S.の国内法に照らして違法ではない」って意見。もちろん、この意見は、連邦最高法院の裁定を参照しても、オバマ大統領の政治判断を参照しても疑わしい。あるいは、国際赤十字協会の見解を参照してもいい。

 にも関わらず、U.S.政府は、今でもグァンタナモ米軍基地の収容施設を閉鎖できないでいる。
 アタシに言わせれば、事実上の超法規判断でグアンタナモ刑務所は閉鎖できずにいるってことになると思うんだけど。こうしたU.S.政府のジレンマと対応してるのが、拷問を“拡大尋問”と言い代え続ける新保守主義者のレトリックなのでしょう。


 U.S.の経済状況は決してよくないけれど、世界に展開されてる軍事力ではU.S.はなお「唯一の超大国」になってる。
 実際は、U.S.だって無い袖は触れないので、リビアの体制返還への関与は消極的だったりしたんでしょうけど。

 政治経済面では、世界は多極化してるんだけど。にも関わらず図体もパワーも図抜けてるU.S.って国とどう接していくかは、頭の痛いもんだいよね。どこの国にとってもそうでしょうけど、アタシたちの日本国は、U.S.とのしがらみも深く、同盟関係も長いんで、“頭の痛さ”にも独特の性格があるわよね。
 そんな内で、アメリカ社会の内でなお支持率が低くも無い新保守主義者との“HARDtalk”が聞けたのは良かったな。

 ジョン・ボルトンのインタビュー発言は、“ネオコン苦しいな”的なニュアンスが、良くも悪くも出てた。拷問の件とかでは、特に。

 ただ、最初にも触れたけど、インタビューの間ボルトンは「U.S.は世界の警察」なんかじゃぁない、って言ってるんだけど。同盟国は庇護する的なニュアンスで、それは「世界の警察」とは異なる方針なんだって意味のことを言ってる。
 この考え方は、ブッシュ大統領的な「U.S.の敵か味方か」の二択を他国に迫るような考え方で、日本を含めた他国にとっては、はた迷惑以外でないわよね。


 一方、ルドルフ・ジュリアーニ相手の回は、ジョン・ボルトン相手の回よりも、気がかりで頭の痛い断片が多くて、関心を惹かれました。
 それは、政府間の外交ってレイヤーでは、ジョン・ボルトンの方が影響力あるのかもしれないけど。
 U.S.って人口がとても多い国で、ブッシュ流の考え方が、今でも、少なくない人たちに支持されてるのはなぜか? については、ルドルフ・ジュリアーニ相手のインタビューの方が、色々、気になる発言が多かったと思う。



 今週放送された“HARDtalk”では、6日の火曜日放送分、エジプトの有力大統領候補、アムル・ムーサ氏へのインタビューも、かなり興味深かったんだけど。このインタビューについては、別に書いてみようと思います。