今週の“HARDtalk”:今週放送分は、イエメン情勢が話題の回、UKの安楽死問題が話題の回などに観応えが

 BBCのロングランなインタビュー番組“HARDtalk”。
 BBC WORLD NEWSの日本語放送でも観れる、辛口インタビュー番組で、マン・ツー・マンのディベートって感じの番組です。
 30分枠、普段は、月〜金の日替わりプログラムとして放映。実は、WORLD NEWSで流される番宣スポットだと、Mon〜Thuって表示されてるんだけど。BBC JAPANの放送だと、先週も今週も月〜金でやってくれてた。どうなんてるのかしら??

 中身の方は、回ごとに当たり外れもあるけど、平均点は高いと思います。

 今週放送された“HARDtalk”は、いずれもホスト・インタビュアーは、メインのスティーフェン・サッカー(Stephen Sackur)。
29日の月曜日から2日の金曜日にかけて、次のようなゲストを招いた番組が放送されました。

  • 8月29日(月):スティーヴ・フォーブス(Steve Fobes)。先週火曜日(26日)放送分のリピート。
  • 30日(火):U.K.の脚本家、作家、デヴィッド・ヘアー(David Hare)。
  • 31日(水):イエメンの政治家モハメド・クベィティ(MOHAMED QUBATY)。
  • 9月1日(木):安楽死の権利を求めているU.K.のトニー・ニコルスン(Tony Nicklinson)と、その妻ジェーン(Jane)。
  • 2日(金):イングランド銀行の政策委員会を数ヶ月前に辞めたばかりの、アンドリュー・センテンス(Andrew Sentance)。


 今週放送分では、まず30日放送分が、イエメン情勢。日本の報道番組で、話題自体なかなか報じられない話が聞けたって点、興味深かったと思います。
 それと、9月1日放送分が、話題にしづらそうなテーマを正面から取り上げたって点で、“HARDtalk”らしい観応えがあった。


 29日(月)放送分は、U.S.の出版社フォーブスのCEO、共和党の大統領候補選に出馬したこともあるスティーヴ・フォーブスとの、中継トーク
 先週の火曜日(23日)放送された回のリピート放送で、アメリカ経済の不振不安と政治不審などの話題を討議。


 30日(火)放送分は、U.K.の脚本家、作家、デヴィッド・ヘアーがゲスト。スティーフェン・サッカーによると、現在活動中の作家の内で最もUKに影響力がある作家の1人、らしい。舞台脚本、映画脚本の作家で、映画監督をしたこともある人。
 アタシは、デヴィッド・ヘアーって聞いてもピンとこなかったんだけど。番組でのやりとりを聞くと、舞台演劇や映画などで、イラク戦争とか、同時代的な題材も取り上げることがある人、みたいです。
 リサーチには時間をかけるけど、自分の作品はドキュメンタリーではなくフィクション、シェークスピアの史劇みたいな方法なんだ、的なことを、示唆的に言ってました。

 ロンドンなど、イングランド各地の大暴動の話題をふられた時、自分は暴動の犠牲者には同情するし警察にも同情的だ、と前置きした上で、けれど(キャメロン首相など)政治家が暴動参加者の倫理性を非難するなら、同じように財政危機を招いた銀行家の倫理性も批判すべきだ、って意味の発言をしてました。
 ここは、デヴィッド・ヘアーの作家としてのスタンスがわかりやすいやりとりだったな。


 31日(水)放送分のゲスト、モハメド・クベィティは、イエメン政権側の関係者だったけど、警察隊が首都のデモい銃撃を加えた後、3月には大統領派から離脱したって人。
 イエメンは革命、つまり体制変換に向かっているのか?それとも大混乱に向かっているのか??ってあたりが、インタビューのテーマらしい。


 9月1日(木)放送分のゲストは、安楽死の権利を求めているU.K.のトニー・ニコルスン(Tony Nicklinson)と、その妻ジェーン(Jane)。この回は、番組冒頭、スティーフェン・サッカー自身が「特別な」プログラムって断ってた。
 この回は、ある意味で、“HARDtalk”らしい観応えが色濃い回でした。この件は、記事を分けて書いてみようと、思います。


 2日(金)放送分のゲストは、3ヶ月前に辞めるまで、5年間イングランド銀行の政策委員会に勤めていた、アンドリュー・センテンス(Andrew Sentance)。「今は、制約なく発言できるわけです」と、スティーフェン・サッカー。UKの経済政策、財政政策と、ヨーロッパ経済、及び世界経済の見通しなどについてが、話題になっていました。


 さて、8月31日放送分ですけど。ハイライトにあたる部分をクリップした画像ファイル(4分18秒ほど)は右に⇒ “Yemeni president 'has lost all credibility'”
 ゲストのモハメド・クベィティが、「サレハ大統領は、あらゆる信頼性を喪っている」と主張するあたりが、クリップされてます。

 20分強くらいの番組を通した、やりとりの筋は、次のような導入部から、推察してもらえるでしょうか。
 まずは、番組冒頭、アーバンにあたる部分でのスティーフェン・サッカーのコメント。

「様々な民衆デモが、今年中東で起きたわけですが。イエメンは、なかなか理解しにくいところがあります。
 春、反政府デモによって激しい衝突となり、サレハ大統領自身が重症を負って、今、隣国のサウジアラビアで治療を受けています。
 しかし、まだ辞任していませんし、そして取り巻きたちが依然として旧政権を守っています。
 政治情勢に詳しく、後に大統領派から反体制派に移ったモハメド・クベィティさんに話を聴きます。
 イエメンは、革命、あるいは大混乱に向かっているのでしょうか?」

 続いて、本編冒頭での導入的なやりとり。

「モハメド・クベィティさんです。ようこそ。
 どうもイエメンは、アラブの革命のなかでも、この、ま、普通とは違う。そんな感じがしますけれども」
「ま、イエメンの場合には、もう実は、16年、17年、1994年の内戦以来続いているとも言えるんです。
 特に、我々、南部の出身者に言わせれば、革命などは少なくとも2007年から始まっています。南部の運動が始まった、これは政権へのいわばデモとして始まったんです」
「イエメンはずっと不安定。政治的な暴力が続いているわけですけど。今年に入って、まず、チュニジアの影響を受けましたよね。大規模なデモがあって、特に若者たちがサヌアでデモをした。
 何日もの怒り……えー。そしてその後、4月、5月には暴力的な事態になって。ま、しかし、それは、この運動の理想が覆ってしまったんではないでしょうか?」

 結局、イエメンでは無数の部族集団や政治党派などが複雑に影響しあって活動してるので、このままいくと、分裂していってしまうんじゃぁないか?ってのが、インタビュアーの疑問。
 これに対して、モハメド・クベィティの返答は、イエメンの社会は確かにモザイク的だけど、3000年間モザイク的な社会でやってきてるん、だからソマリアのようにはならない、ってものでした。