サンデー・フロントライン:今週は「特集フロントライン」の報道が良かった

 テレビ朝日系で毎週日曜放送されるニュースショー形式の「サンデー・フロントライン」。8月14日放送分では、「特集フロントライン」で放送された「長崎原発/忘れられた“ホットスポット”」って題の取材報道が良かったと思います。
 この評価、特集の内容が、アタシの不勉強で、初めて知ったニュースってことにも影響されたものかもしれないけれど。

 「長崎原発/忘れられた“ホットスポット”」は、取材報道の類。
 長崎市東部にある間の瀬地区に、66年前に原発が投下された時期居住していた人たちが、今でも原発被爆者として公認されずにいるって事情を報じてくれてた。
 報道の焦点は、例えば「66年もの間、なぜ間の瀬の住人は被爆者として認められないのか?」って問いかけでした(左記の「」内は、報道中のナレーションの一部より)。


 アタシ評価で大雑把な話だけど、今週の「サンデー・フロントライン」、トータルでは番組の水準的な出来だったと思うな。
 番組最初のパートで、次期代表選挙に向かって動き出した民主党の動向を重点的に扱って、スタジオにゲストとして招かれた岡田克也民主党幹事長との座談も交えて構成。
 このパート、それなりに多面的に報じてくれたし、無難な出来だったとは言うんだけど。アタシの考えではかなり無難すぎた。

 そういうわけで、全体を均せば、可も無く不可も無く、的な感じだったのが今週の「サンデー・フロントライン」のアタシ評価。これは、ちょっと辛口の評価かもしれないど。出来としては「中の中」〜「中の上」だったと思います。

 今週スタジオ出演したコメンテーターは、東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋さん、ジャーナリストの後藤謙次 さん、ノンフィクション作家の秋尾沙戸子さんでした。


 さて、毎週、基本的には、概ね3つのパートに大別されてる「サンデー・フロントライン」。
 今週の番組構成は、大まかには、次のようでした。

  • 最初のパートではまず、代表選に向かう民主党の動向を報じて、ゲストとして招かれた岡田克也民主党幹事長とのスタジオ座談も交えて構成。

 番組冒頭でナレーション、「火中の栗を拾うのは誰なのか?」って、煽って。菅首相の次の首相は誰がなる? って関心に主導された報道になってた。

 そーゆー報道の切り口も、まぁ仕方ないと思うけれど。
 例えば、放送時までに代表戦出馬が取りざたされてる民主党議員6人を、「マニュフェスト見直し/マニュフェスト堅持」と「増税賛成/増税反対」とでチャート分けしてくれてた。
 このチャート分け自体は、わかりやすい整理で良かった。
 これが、単に民主党代表候補についてだけの解説なら、構わないと思うんだけど。次期首相になるかもしれない候補についての解説としては、物足りない。

 それこそ「エネルギー政策」と「財政政策」で候補をチャート整理してほしかった。
 あるいは「大連立についての是非」を整理軸にしてもいいかもしれないけれど。アタシの考えでは、文字通りの大連立なんて、今の国政ではあり得ないと思うのよね。
 今のまま、大連立なんかに進んだら、有権者国民の永田町離れはますます進むと思う、って意味で「あり得ない」って書いたのよね。

 ぶっちゃけ、「民主党がマニュフェストを守るかどうか」なんて、民主党支持者や自民、公明の党員でもない、大多数の国民には関心抱けない気がする。
 これは政治不審の1種なのかもしれないけど。
 奇妙なことに、当の国会議員の内には、そうは思ってない方も少なからずおられる様子。

 もちろん、「子供手当てはどうなる」とか、「地方分権はどうなる」とか、「取調べ可視化はどうなる」とか、個別のイシューに関心を抱いてる国民は、それぞれの課題ごとに沢山いるはずだけど。
 要するに、これからの国政に期待されるのは、議員数に頼んだ決定ではなくて、より多数の立場を視野に入れた落とし所の調整、だって思える。


 一言、書いておくと、今週、冒頭のコーナーでは、番組メイン・キャスターの小宮悦子さんが、頑張りをみせてた。先週夏休みでリフレッシュしたのか、それとも今週の冒頭コーナーが重点特集的だったので、バッチリ戦術を練って臨んでたのかしら??
 小宮さんは、前番組「サンデープロジェクト」でメインキャスターだった田原総一郎さんと、どうしても比較されてしまう。それはプレッシャーだろうし、小宮さんが田原さんと同じようなことをしようたって、それはムチャだと思う。
 ただ、そろそろ、小宮さんならではのスタイルで番組の流れをリードしてほしいとは思うのね。そういう面で、今週の小宮さんの頑張りは、番組の出来とは別に、いい感じだったな。特に、岡田幹事長を交えたスタジオ座談の司会では頑張ってたと思います。

  • 2番めのパートは、いつも通り、週間重大ニュースセレクト「これはニュースだ!」。このコーナーについては、後から記してくことにします。
  • 3番めのパートは「特集フロントライン」で、今週は「長崎原発/忘れられた“ホットスポット”」。これは観応えありました。

 「66年もの間、なぜ間の瀬の住人は被爆者として認められないのか?」って問いかけを主軸にした報道だけど、より広く、長崎県で政府、特に厚生労働省被爆地として認めてない地域についてを話題にしてて、間の瀬地域はその典型例として重点取材された、と、そういう報道になってました。
 ぶっちゃけ、原爆投下当時の旧長崎市の行政区分を元に、被爆地か被爆地でないかが線引きされたんだろう、ってのが番組側の整理になってた。

 番組からの質問に対する厚労省側の文書回答は、「科学的なデータがないので間の瀬地区を被爆地とは呼べない」って趣旨だそうだけど。
 爆心地の北東方向十数kmに位置してる間の瀬地区は、旧長崎市市域の北東縁から数百mしか離れてない。
 こうした官庁側の見解に対して、反証を探す調査も間の瀬で行なわれてることも、取材報道されてた。

 白状しとくと、アタシは報じられたような一連の社会問題は、全然知らないでいた。厚労省が認定してる被爆地の外縁に当時住んでた人たちが、「被爆体験者」とカテゴライズされてるってことも、報道レポートで初めて知った。
 報道を観る限り、厚労省側の見解には納得がいかない。強引な線引き、と感じる。

 被爆体験者の人たちが、国に被爆者手帳を交付するよう訴訟提訴も続けらている、とのこと。


今週の「これはニュースだ!」コーナー:
 番組に不定期に出演したりしてる、評論家、解説者、コメンテーターの人たちが、その週の重要ニュースに、1位〜10位の重要度を評価して提起するコーナー。
 重要度はポイント換算されて、ポイント集計。週のニュース10を重要度順に整理するって趣向の週間重要ニュース選です。

 番組の公式サイトで、どんなニュースがセレクトされたか、読めるけど。
 今週は、「G7緊急声明も株安、超円高」って題された一連のニュースが、番組の重要度1位としてセレクトされてました。

  • 1位「G7緊急声明も株安、超円高
  • 2位「退陣条件整い“ポスト菅”加速」

 このニュースは、番組冒頭で重点的に報じられた報道の関連。

  • 3位「格差拡大、若者が・・・ロンドン暴動」

 いい加減、地上波TVの報道でも「フラッシュ・モブ」って概念を使って解説するようにしてもいいんじゃぁないかしらね(??)。

  • 4位「再生エネルギー法案成立へ」

 再生エネルギー法案は成立する方向に調整がついたってニュースだけど。どんな中身で成立するかがポイントよね。このニュースの報道では、神奈川県川崎市で稼動したメガソーラーの取材レポートも短く挿入。この辺は「サンデー・フロントライン」ならではの長期追跡取材でも、いずれ取り上げてほしいところ。

  • 5位「止まらぬ“人口自然減”過去最高」
  • 6位「経産省“更迭”でも退職金上乗せ」

 これは、先週分の「これはニュースだ!」でも、「やらせ引責“原発トップ3更迭”」(先週第2位)として報じられた、資源エネルギー庁長官、原子力安全・保安院院長と経産省事務次官が“更迭”された、ってニュースの続報。先週の記事に付けたアタシ的コメントで、実態としては“更迭”とは言えないっぽい旨書いたけど。12日の金曜日に退職した事務次官氏は勧奨退職扱いの処理で、退職金が1千万円上乗せされたって話。やっぱり「更迭」でもなければ「引責」でもないよね。
 霞ヶ関の規則に添った処理だそうだけど、番組中のコメントでも聞かれたけれど、そんな規則がおかしいわよね。

  • 7位「猛暑! 東北電力逼迫、東電が融通」
  • 8位「汚染懸念・・・72年ぶりコメ先物取引
  • 9位「アップル米トップ企業に」
  • 10位「震災5ヵ月“新盆”で追悼行事」


 ちなみに、番組のサイトを見ると、重要ニュース選定者はピックアップしてたけど、セレクトで10位までに入らなかったニュースには以下のようなものもあったそうです。順不動ってことで。

 これは、原子力安全・保安院に関係する独立行政法人が、2年前までに原子炉が冷却に失敗した場合のメルトダウンメルトスルーに至るリスクを啓蒙するビデオを作ってたにもかかわらず、このビデオが各地の原発施設で現場職員に観られずに来てたってニュース。この件も、できたら追跡取材してほしいな。アタシ的には。

  • 裁判員裁判“可視化”否認事件にも」
  • 「米FRB『ゼロ金利』をあと2年は継続」
  • 「中国のインフレ止まらず」
  • 「元外務大臣で初、前原氏が北方領土訪問」
  • 「五輪向け“なでしこ”メンバー発表」