菅首相の中部電力への要請

 昨晩、菅首相は記者会見で「海江田経済産業大臣を通じて、中部電力浜岡原発の原子炉をすべて停止するよう要請した」旨発表しました。
 予想されている東南海地震震源域を考えると、浜岡原発は立地条件が特別なので、他の国内原発とは事情が違う、って主旨。
 「中長期対策(地震への対策)が完成するまでの間」浜岡原発の原子炉をすべて停止してほしい、って要請で、ここはちょっと気になるものもあります。


 アタシは、昨晩NHK総合(地上波)で放送した「ニュースウォッチ9」での報道で、最初に知ったんですけど。
 さしあたり個人的意見では、首相が要請をしたことには、支持票を1票投じたいです。

 今回の「停止要請」は、法的根拠が無いので「命令」ではなくて「要請」。
 中部電力の方には、「お断り」する権利もあるんですよね。
 まぁ、中部電力も、よぽどの理由を唱えて、腹すえないと「お断り」なんてしづらい状況でしょうから、そこはちょっとだけ同情しますけど。


 「ニュースウォッチ9」の報道では、NHKのニュースにしては珍しいくらい、賛否の意見をバランスよく報道。
 御前崎市の市長さんは「突然のことなのでコメントのしようがない」としつつ、「40年あまり、国の政策に協力してきたのに何のためだったのか」と悔しそう。
 静岡見地知事は「菅首相と海江田経済産業大臣の英断に敬意を表します」と、歓迎。

 名古屋市御前崎市で撮られた街頭インタビューでも、市民の間にも賛否両論が聞かれて。アタシは当然だと思うんですよね。


 アタシ個人は、原発容認派で、原発による発電への依存率は長期的に減らしていきながら、古い原発を新しい安全基準の原発に建て替えていくべきと思ってるんですけど。
 浜岡原発については、大きな地震がいつ起きるかわからないって懸念は重大だと思えます。

 だから、「菅首相が要請をしたこと」については支持票を1票投じたいです。

 一方で、国内の原子力施設に共通した安全基準を、当然法的根拠も伴ってきっちり見直してもらわないと困る。
 そちらはそちらで進めながら、「東南海地震がいつ起きるかわからない」ってことで、浜岡原発については、緊急措置的に「要請」をしたってのは、アタシは理解できると思います。

 もちろん、反対の意見だって出て当然で、それくらい菅首相の「要請」は唐突なものではあった。
 もともとは、5月上旬中に結論を出すって予定で伝えられてましたから。


 今は、実際問題としては、中部電力の判断が待たれる。
 理想的には、地元住民の住民投票で決せられるといいんじゃぁないか、とも思うんですけど。今はまだ、そんな制度確立してないですしね。


 アタシが気になるのは、むしろ、菅首相が記者会見で言った「浜岡原発の、中長期的な地震対策」で、どこまでが考えられているのか。

 前もちょっと触れたことあるんですけど。
 報道で伝えられる「浜岡原発の、中長期的な地震対策」って、なんだか津波への対策に注目されてるようです。
 でも、津波対策だけでは不充分です。

 浜岡原発の場合、むしろ、原子炉と発電用タービンの間に設けられてる配管類が、地震でイッちゃわないか、の方が重大なはずなんですよね。
 浜岡原発については、以前から地盤の脆弱性を指摘する意見もあったんだから、むしろその面の再検証が「中長期対策」で重要度高くないとおかしい。

 事故状態が続いてる福島原発では、配管類のどこかが緩んだ(のでしょう多分)結果の汚染水漏出だけでも、あれだけの大騒ぎになってます。
 浜岡原発で、もし大きな地震で、配管がはずれたりしちゃったら、汚染水がダダ漏れにあふれ出しかねない。

 昨日の「ニュースウォッチ9」で報じてたけど、中部電力は、津波対策として、非常用発電機を原子炉建屋の屋上に設置するそうなんですよね。

 乱暴な言い方すれば、「津波への対策」に限って言えば、とりあえずは、その対応だけでも、一安心。
 福島原発で、建屋の屋根とかが壊れてるのは、あれは水素爆発によるわけで。水素爆発は、非常用電源が喪失した結果起きちゃった。
 原子炉建屋の構造体自体は、大津波にも耐えたんですよね。
 だから浜岡原発の原子炉建屋も、福島原発のそれと同様の強度基準で建設されてるならば、非常用発電機を原子炉建屋の屋上に設置する対策は、津波対策として、かなり安心。


 それは、高い防潮壁を建てた方が「より安心」ですから、そちらも手配するのは結構なことですけど。
 「地盤脆弱性の再検証」や、「配管の安全性の再検証」が、「完璧な津波対策」の陰に隠れたり、後に回されたりするようでは困ります。