原子力安全・保安院院長、原発事故発生後54日めにして、無責任な謝罪

 日本の原子力施設の監督省庁である原子力安全・保安院資源エネルギー庁所属)の院長は、東京電力が事故を起こした福島原発事故発生後、54日めにして、はじめて、福島県知事に対して謝罪をおこなったそうです。

 福島県で発行されてる地方紙「福島民報」が4日付け記事で報じています。


 「福島民放」の記事によれば「院長は知事との会談後に記者会見し、『全電源喪失への対応ができていなかった。反省し、県民におわびする』と述べたが、監督官庁としての責任には言及しなかった。」とのことで、監督省庁の長としての責任を自覚していない「謝罪」であったようです。

保安院長、対策不備認め謝罪 知事「裏切られた」福島民報、2011/05/04 )

 経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は3日、福島県を訪れ、東京電力福島第一原発事故について佐藤雄平知事に初めて謝罪した。これに対し、佐藤知事は「見事に裏切られた」と述べ、保安院のトップが、これまで来県しなかったことと併せ、国に強い不信感を示した。一方、寺坂院長は知事との会談後に記者会見し、「全電源喪失への対応ができていなかった。反省し、県民におわびする」と述べたが、監督官庁としての責任には言及しなかった。
 寺坂院長の来県は、東日本大震災発生から54日目で初めて。知事との会談は非公開で、約10分間にわたり県災害対策本部がある福島市の県自治会館で行われた。
 県によると、寺坂院長が事故について謝罪すると、佐藤知事は「保安院からこれまで、原発の安全を守る多重防護の取り組みについて説明を受けてきた。見事に裏切られた」と苦言を呈した。
 さらに、佐藤知事は寺坂院長の来県が事故発生から50日以上過ぎていると指摘。「われわれが一体、何度、災害対策本部会議を開いているか分かっているのか。(今になっての来県は)理解できない」と批判した。寺坂院長は来県の遅れをわびた上で、原発事故の収束に全力を挙げる考えを示したという。
 会談終了後の記者会見では、事故原因の責任の所在について質問が集中した。寺坂院長は「長時間にわたり全電源が喪失するという事態に対応できなかった。これを反省し、県民に謝罪する」と繰り返すのみで、監督官庁としての責任については一切、触れなかった。
 さらに、県庁に置かれた政府の原子力災害現地対策本部が関係省庁とのパイプ役を担っていないと批判が出ていることについて、「情報発信や調整機能について十分でない点がある」と認め、改善する考えを示した。
 寺坂院長はこの後、Jヴィレッジ(楢葉・広野町)を訪問し、自衛隊の前線本部を激励したほか、福島第一、第二両原発で東電関係者と事故収束に向け意見交換した。

 原子力安全・保安院は、経済産業省の外局である資源エネルギー庁に属す機関として2001年、自民党森内閣時代に設けられました。
 「原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに発電用原子力施設に関する規制その他これらの事業及び施設に関する安全の確保に関すること」、「エネルギーとしての利用に関する原子力の安全の確保に関すること」他を管轄する機関、――ってことになってます。

 ただし、原子力発電を推進する立場の経済産業省の、外局系とは言っても、管轄下に原発の産業保安を監督する安全・保安院が属すことの不都合は、兼ねてから指摘されてた。
 自民党小泉内閣時代の2003年には、専門的実務的検査については、独立行政法人原子力安全基盤機構に委ねられる体制に。


 原子力安全・保安院は、福島原発の事故発生以降、保安よりも原発事故の危険度を、低め低めにイメージ誘導しようとする世論操作的で不審な言動が目立つ。
 内閣の諮問機関である原子力安全委員会も「保安院が情報を出さない。規制官庁としての見解がない」と批判していた、と伝えられてる。
 また、4月5日には、原発を抱えている道府県14の知事が組織する原子力発電関係団体協議会も、原子力安全・保安院の経済産業省からの分離などを、政府に要望している。


 「福島民報」が報じてる院長の談話「長時間にわたり全電源が喪失するという事態に対応できなかった。これを反省し、県民に謝罪する」とか、「情報発信や調整機能について十分でない点がある」とか、何をいまさらとしか思えません。
 福島原発の事故発生依頼、安全・保安院は、一貫して政府による事故対策の足を引っ張り続けたきた、と思えるのですが。こうした疑念、決してアタシだけの偏見ではないと思います。


 個人的には、安全・保安院が本来果たすとされていた職責は、経済産業省とは無関係な機関に移管して、原子力安全・保安院はとっととリストラしちゃってほしいですね。
 もちろん、事故発生の原因になった不手際、事故発生後の情報隠蔽などについては経緯を解明して、責任者は厳しく処断してもらいたいです。

 ついでに書いとくけど、自民党には、こんな機関を経済産業省の下に設けてよしとしていた、政権時代の原発政策、エネルギー政策をきちんちと自己検証、自己批判して、改めるべきところを改め、そのうえで、ちゃんと、国民に謝罪してもらいたい。