鳩山前首相、中曽根元首相らが唱える改憲決議に同調

 28日付けで産経ニュースが公開した報道コンテンツによると、28日「新憲法制定議員同盟」は、「新しい憲法を制定する推進大会」を開催。民主党鳩山由紀夫前首相を含む与野党の国会議員や経済団体の代表ら約1200人が出席して、「東日本大震災への対応に際し、非常事態条項がないなど現行憲法の欠陥が明らかになった」とする大会決議を採択したそうです。

超党派議連「現行憲法の欠陥明らかに」 震災関連の非常事態条項の規定なし(産経ニュース2011.4.28)
 超党派の国会議員でつくる「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)は28日、東京・永田町の憲政記念館で「新しい憲法を制定する推進大会」を開いた。民主党鳩山由紀夫前首相ら与野党の国会議員や経済団体の代表ら約1200人が出席し、東日本大震災への対応に際し、「(非常事態条項がないなど)現行憲法の欠陥が明らかになった」とする大会決議を採択した。

 決議では、現行憲法の不備を早急に正すとともに、国家的災害からの復興に向け「新しい憲法の理念に基づいて、新しい国づくりが進められる必要がある」として、衆参両院の憲法審査会で憲法改正議論を早急に開始することを求めた。

 中曽根氏は、来年がサンフランシスコ講和条約発効60周年となることを挙げ、「主権回復から60年たち世界も日本も変わったのに、変わっていないのは憲法だけだ。国民の責任ではなく政治の責任だ」と憲法改正の必要性を訴えた。

 鳩山氏は、憲法審査会が始動していない状況について「わが党の考え方が(まとまらず)さまざまあるためだ。政治の不作為、怠慢によるものだ」と民主党の責任を認めた上で「この状況を早く解決したい」と述べた。自民党大島理森副総裁は「来年は節目の年なので、全力を挙げて憲法改正に取り組む」と決意を語った。

 大会には、国民新党亀井静香代表、たちあがれ日本平沼赳夫代表のほか、公明党みんなの党からも代表者が出席した。

 憲法改正の是非は、国民投票で決せられる決まりになっていますので、改正の前に、改正案の公表と、それなりの時間を設けた是非の議論が公になされるべきです。

 ちなみにアタシ個人は、憲法改正自体には反対ではありません。
 改めるべき点は、きちんとした公開議論と定められた手続きを経て、改められるべきでしょう。


 ただ、産経ニュースが報じた「新憲法制定議員同盟」決議の改正意図は、賛成しがたいものですね。

 賛成、反対自体は、改正案(改正する憲法の文案)が公表されてないので、意見保留しておきますけど。

 産経ニュースの報道を読む限り、「大きな自然災害に際して、内閣に非常事態宣言を発令する権限が憲法に明記されるべき」といった趣旨だろう、と思えます。

 実は、現在も進行中の福島原発の事故については、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力緊急事態宣言が出されています。
 ということは、「新しい憲法を制定する推進大会」の決議は、自然災害に際しても、より強力な非常事態宣言発令の権限が、憲法に明記されるべきだ、って趣旨だろうと思えます。

 「より強力な非常事態宣言発令の権限」って、例えばどんなものでしょう?
 例えば、土地の強制収用のような、財産権の凍結(非常事態下での凍結)とかでしょうか?
 産経ニュースの報道を読んでも、具体的なことはちっともわかりません。

 具体案(改訂なり修正なりの文案)が示されるまで、あらゆる憲法改正要求について、賛成も反対もできないです。

 今回の「新しい憲法を制定する推進大会」による決議表明も、政治的パフォーマンスとしか言いようが無い。


 けれど、アタシは、「新しい憲法を制定する推進大会」による「決議の趣旨」には賛成できないです。
 産経ニュースが報じてるようなものは、欠点でもなんでもない。
 災害時特例法を必要に応じて、議会審議を経て成立させればいいだけのことですから。
 阪神・淡路大震災の時だって、それで済ませてきたじゃぁないですか。

 むしろ、「大規模テロや、自衛隊のクーデタに対する非常事態宣言」とかだったら、検討の余地もあるのですが。
 「新しい憲法を制定する推進大会」いまさら、何を言ってるのでしょう?


 憲法っていうのは、本来、王権や国権を制限するために編み出された法システム。単なる国家基本法の類とは根本的に性質が違うんだわ。

 まあ、財界の人たちに、国権強化に同調する人が少なくない事情は想像できます。
 自民党政権時代の成田空港強制土地収用とか、環境汚染と公害病との因果関係を認めようとしないとか、高度成長時代、自民党は大企業を優遇して富国を達成してきましたから。
 財界としては、震災をいい機会にして、そうした路線に戻したいんでしょうね。

 中曽根元首相のような、高度経済成長時代で脳が化石化してるような政治家が、大企業主導の富国政策を取りたいだろうことも想像はつきます。
 実際、自民党は、今だに中央集権的な復興再生院構想なんてのを真顔で唱えるくらいですし。


 憲法改正で国権を強化することが目的で、その目的達成のためには大震災でも何でも利用してやろうって、与野党の国会議員や経済団体の代表ら約1200人の政治的パフォーマンスは、浅ましいとすら思えます。


 アタシは、特に、鳩山前首相がこの議決に同調してることには、あきれちゃった。

 鳩山前首相、政権をとる前に、「取調べの全面可視化」を公約にしていましたけど。結局、どういう形で可視化が果たされつつあるのか、首相を辞めた後は事態の推移を追っていないのかしらね?

 東日本大震災福島原発事故の陰にすっかり隠れてしまった感があるけれど。
 検察による証拠捏造って、憲法をなし崩しに脅かすような事件が実際に起きたのに、「取調べの全面可視化」って、民主主義国家では当たり前の制度が、日本では、中途半端な形で導入されかねない。
 それどころか、部分可視化なんて、悪用可能な形で導入されちゃうかもしれない。


 なぜ、ここで「取調べ全面可視化」の話を出すか。
 もちろん、国権を伸ばすよりも先に、民権を保護する憲法改正の方が優先されるはずだから。
 物事には、順番ってものがあるのだわ。


 公約していた「取調べの全面可視化」が不徹底な形でしか実現されてないのに、国権を強める決議に同調する鳩山前首相、政治家としての無責任すぎるじゃーん。

 一体、何考えてるのかしら?
 謎だわ。