今週の“HARDtalk”:暗殺された政治家への娘からの頌辞
BBCのロングランなインタビュー番組“HARDtalk”。
BBCワールドニュースの日本語放送でも観れる、辛口インタビュー番組で、むしろマン・ツー・マンのディベートって感じの番組です。
30分枠、普段は、月〜木の日替わりプログラムとして放映。当たり外れもあるけど、平均点は高いと思います。
- 日本語の番組紹介ページはこちら⇒番組詳細「ハード・トーク HARDtalk」(BBC ワールドニュース)
- 英語の番組紹介ページはこちら⇒Programmes“HARDtalk”(BBC WORLD Service)
今週は、以下のような人たちをインタビュー相手にした番組が放送されました。
- 25日(月):U.K.独立銀行委員会の、マーティン・ウォルフ(Martin Wolf)。
- 26日(火):インド出身の神経学者ラマチャンドラン教授(proffesr Vilayanur S. Ramachandran)。
- 27日(水):ギリシアの公務員組合連合のバシリス・ゼナキス(Vassilis Xenakis)。
- 28日(木):今年1月にパキスタンで暗殺されたパンジャブ州知事の娘、シェルバノ・タシール(Shehrbano Taseer)。
25日放送分は、BBCの女性キャスター、キャリー・グレイス(Carrie Gracie)がインタビュアー。
他は、番組メイン・キャスターのスティーフェン・サッカー(Stephen Sackur)が、ゲストにあれこれ訊いてました。
今週放送分は、“HARDtalk”にしては地味め。月曜、水曜と経済関係の話題だったし、火曜は科学ネタだったから。
月曜日分は、2008年にU.K.社会が経験した金融危機の再発は回避できるのか? ってテーマ。独立銀行委員会は、金融業の銀行部門を構造改革する政策を検討するために設けられた委員会って話。
水曜日分は、1年前にEUとINFからの支援を受け入れたギリシアの財政は、回復しつつあるのか? ってテーマ。公務員組合連合のバシリス・ゼナキス(Vassilis Xenakis)は、ギリシアの財政は構造改革で再建される必要があるけど、今、政府が進めてる方法だと、公務員や民間労働者の負担が厳しすぎる、別の方法が必要、と主張。
火曜日は、脳科学の神経系研究の話題だったんだけど。科学ネタのときのスティーフェン・サッカーって、地味だけど、普段とはまた違ったツッコミが面白くはあるのよね。
火曜日の番組冒頭では、「果たして我々は、我々を、我々たらしめるものが何なのか、本当に知りたいのでしょうか?」だって(笑)。
スタジオに招かれた学者さんから、科学の専門的な話も聴くけれど、インタビュアーとして訊きたいのは専門的な話じゃない、ってアプローチ方針が明確なんだわ。
多くの視聴者も気になるだろう話を聴きだせるように、率直な質問をする。
実は、スティーフェン・サッカーのこうした質問スタイル、相手が芸術家だろうと、政治家だろうと、あまり違わないんだわ。
木曜放送分は、暗殺された、パキスタンのタシール知事の娘さんへのインタビュー。強持てインタビュアーで、売ってる(??)スティーフェン・サッカーのツッコミもいつもより柔らかめと思うな。
時々あるのよね。
でも、訊きづらいことも、率直に訊いちゃうのだわ。やっぱり“HARDtalk”だもんね(笑)。
「タシール知事は、成功したビジネスマンでしたね。普通そうした人は社会活動家にはならないと思いますが、動機はなんだったのですか?」、「父は、そんなに豊かな階層の出身ではないんですよ」、みたいなやりとりからはじまって。
「タシール知事が死亡した直後にあなたは言いましたね『声なき人々の声を変わりに発言してきた』と言ってました。どうやって、社会のこうした人々に手を差し伸べたのでしょうか?」。このスティーフェン・サッカーの質問に、22歳の娘さんが答えてくあたりの画像ファイルが、右ページから見れます。⇒ “Daughter's tribute to murdered politician Salmaan Taseer”
サルマン・タシール知事(Salmaan Taseer)は、今年の1月、自身のボディガードに自動小銃で暗殺されたパンジャブ州知事。
ベーナズィール・ブットー元パキスタン首相の政治的盟友としても知られてた。
日本では、一般に、タシール知事は、リベラル派でパキスタンで用いられてるイスラム教冒涜罪に批判的だったため暗殺された、と評されてるけど。
スティーフェン・サッカーとの会話で、シェルバノ・タシールさんが言うには、生前の知事は、冒涜罪に関わる刑法の拡大運用や濫用を避けるための刑法改正を唱えてた、って話でした。
故タシール知事の母親は、クリスチャンのパキスタン系イングランド人だったそうなので、パキスタンでは、少数派ではあったんでしょうね。シェルバノさんが言うには、生前、知事は女性問題の改善にも尽力し続けた、とのこと。
アタシとしては、「過去10年間、パキスタンでは過激派のテロが増えた。これは前政権が過激派に融和的だったからだ」って旨の発言は、気になりました。
シェルバノさんが言う「前政権」は、多分、ブットー首相とミヤーン・スームロー暫定大統領の、パキスタン人民党系政権のことだろうと思います。