浜岡原発(中部電力)の災害対策
中部電力は、20日、浜岡原子力発電所の緊急安全対策を経済産業省に報告、同時に静岡県や御前崎市議会にも説明したそうです。
中部電力の報告は、先月、経済産業省が、電力会社各社に原発の緊急安全対策をまとめるよう出した指示に応じたもの。
浜岡原発には、廃炉予定のものも含めて、現在原子力発電機が5機あります。
- 1号機と2号機が、廃炉決定済みで運転終了。
- 3号機は、現在、運転休止中。
- 4号機、運転中。
- 5号機、運転中。
- 他に、6号機が、1号機、2号機の代替用として建設予定。
3号機は、定期点検のため、運転休止中てことなんですけど。
運転再開が認められるかどうかも含めた議論が、静岡県と御前崎市でも、はじめられてるってことで。いいことと思います。
浜岡原発:中電、緊急安全対策を説明 県、訓練に外部評価導入を
毎日新聞(2011年4月21日 静岡版)
中部電力は20日、東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発での重大事故を受けた浜岡原発(御前崎市)の緊急安全対策を国に報告するとともに、県や御前崎市議会に説明した。中電は、原子炉や使用済み燃料プールへの注水作業や、大津波で全ての電源を失った場合を想定した総合訓練を行うことなどを報告・説明したが、県や市議会からは厳しい指摘が相次いだ。【平林由梨、舟津進】経済産業省が先月、電力各社に原発の緊急安全対策をまとめるよう指示したことを受けた報告で、中電は、3〜5号機の建屋と外部をつなぐ約850カ所ある配管や扉などの防水性に問題や異常がないことを確認、緊急時の電源確保のため3〜5号機の建屋の上に発電機を設置した。また、13年度までに高さ12メートル以上の防波壁を設置し、災害時の非常用発電機を12年度初めまでに高台へ設置することも報告したとしている。
こうした中電の説明に対し県危機管理部の小林佐登志・危機管理監は「訓練は大切だが、できることを確認するのではなく、もっと想像力を使ってあたらなくては、いざというときに対応できない」と述べ、訓練に外部評価制度を導入し客観的な立場で検証する必要性を指摘した。
また、御前崎市議会の原子力対策特別委員会で、中電は「津波対策は防波壁を含め3年以内にすべて完了する」と説明。委員からは「高さ12メートル以上とした防波壁は、市民感情からもっと高くすべきではないか」などの意見が出された。
石原茂雄市長は「福島原発では津波来襲から原子炉建屋の爆発事故まで時間があった。浜岡原発では時間を追った事故想定とその対策をさらに詰めてほしい」と語った。
この報道記事を読むだけでも、原発の安全対策の議論に関わる、難しいポイントが幾つも浮かび上がってきますね。
アタシは、浜岡原発をどうするかは、地元静岡県や、場合によっては隣接自治体も交えて決めること、と思います。理想的には、中部電力や経済産業省も交えてきちんと議論を整理してから、その議論を踏まえた住民投票をすればいいように思います。
実際は、地元や周辺の自治体で決めてもらうとして。
他の地方に住んでる国民にも、参考になることってあるはず。
そういう意図で、ちょっと考えてみたいと思います。
まず静岡県危機管理部の方が言われた、と報じられてる「訓練に外部評価制度を導入し客観的な立場で検証する必要性」。これはもっともな指摘ですよね。
例えば、消防署の人とかと共同で静岡県危機管理部に採点してもらうといいと思うんです。ここ1、2年くらいは、って意味ですけど。
将来的には、もっと専門性のある防災組織なども考えるとして(必要ですよね)。
アタシが思うには、近い将来、道州規模の広域ごとに、原発事故「にも」対処できる専門性の高い災害対策チームを常設していって、地域自治体の共同負担で運営するといいと思うんですけれど。
防災や事故回避訓練の外部評価なんて、本当なら、原子力安全・保安院の職務のはずなんですけど。
あんなお役所は、信頼できないですから。
原子力安全・保安院は、資源エネルギー庁の部局で、資源エネルギー庁は経済産業省の外局って構図。
アタシは、地方自治体は、各自治体でできることから、原発事故対策の見直しするといいと思うな。必要に応じて、隣接自治体で協議してもいい。
もし、中央官庁が、「全国的に基準を整える必要があるから」とかの理由で、何らかの「待った」をかけてきたら、その時は「じゃぁ、新しい基準は、あるいは検査体制は、これこれの条件を満たしてくれ」ってはっきり要求するといい。
アタシが難しいな、と思うのは、御前崎市議会の委員の方が言われた、と報じられてる「高さ12メートル以上とした防波壁は、市民感情からもっと高くすべきではないか」って、ご意見。
このご意見には、難しい問題が幾つか関わってきます。
まず、高さ12メートル以上の防壁とか作るとして、そのコストは、当然電気代に跳ね返ってきますよね。
市民感情として、そいう電気代の上昇に納得できるのかどうか。納得できるなら高い電気代も我慢しなくちゃいけないし。納得できないなら、原発はやっぱり廃止だ、ってことになると思います。
アタシ個人は、原発容認派なんですけど。
「原発容認」の意見を言うからには、考えておかないといけないことはあります。
例えば、アタシの住んでるとこの近くに原発が建設されても容認するのか。
アタシが住んでるのは、神奈川県の横浜市ですけど。
アタシの個人的な意見では、幾つかの前提条件をクリアしてもらえるなら、容認したいと思います。
実際は、住民投票で決定されるべきと思いますけど。アタシ個人は容認したい。
前提条件の方が大事だと思うんですね。例えば、さっき書いた、専門性の高い災害対策チームの常設とかです。
同じように、原発反対派の方々にも、「原発反対」の意見を言うからには、考えておいてもらわないとならない件はあります。
反対意見を言うのは、もちろん個々の人の自由ですけど。
反対意見を言うなら、じゃぁ、原発が担ってる分の発電量はどうやって賄うのかとか。火力発電に頼るとしたら、二酸化炭素排出量の件はどう対処するのか、とか、そうしたことについての個人的意見も考えておいてもらわないと。
高さ12メートル以上の防壁とかを原発施設に求めるとして、当然電気代は高くなるはずですけど、それでもいいのか、それくらいなら原発は止めるのか。
これは、「高い防壁を求める意見」の人には、考えておいてもらえないと困ります。
それから、浜岡原発は、東南海大地震の予想との関連で、かねてから、原子炉建屋とタービン建屋を繋ぐ配管の脆弱性が懸念されてます。
「原発の敷地内を活断層が通ってる」て推定説も発表されてて。
アタシが思うには、この件の検証の方が、津波対策よりも重要度は高いと思います。
(アタシがここで書いたのは「重要度」で「優先度」ではありません
どっちを優先して処理していくかは、地元自治体と中部電力で話し合って決めること、と思いますので)
日本の原子力発電所の場合、津波の直接的な被害よりも、より高い重要度で、津波の影響での予備電源喪失って間接的被害への対処が求められます。
この件は、事故状態が続いてる福島原発の事例からも、あるいは津波に見舞われたけれど事故は回避した東海第二発電所の事例からも言えます。
乱暴に聞こえるかもしれませんけど。
津波の対策だったら、予備発電機設備を、津波にも耐えれる設計の塔のような建物の上に設置して、予備燃料だけは、高台に設置。さらに緊急用電源車も用意した方がいいはず。
こうした対策の方が、12mとか、それ以上とかの防波堤で施設を囲むよりも低コストだし、達成期間も短いはずだから。
「低コスト」って言い方に違和感を持つ人もいるでしょうけど。
浜岡原発の場合は、災害対処で同じコストをかけるなら、防波堤に多額を割くよりも、地盤調査や、原子炉とタービンとをつなぐ配管の改善に優先的に費やした方がいい。
もし、地震で、配管がイっちゃったりしたら、高濃度汚染水があふれ出しかねないですから。
こうしたあれこれが、原発事故対策、原発の安全基準の議論の難しいとこですよね。
日本の原発に共通して言える論点もあれば、地盤や地形の問題など、原発ごと、地域ごとに個別性の高い論点もあります。
その辺も整理しながら、議論が続くようにしていかないと、と思います。