「ワールドWaveトゥナイト」(NHK・BS1):論説コーナー「グローバル・アイ」を中心にするなら、河野アナをアンカーとして、しっかり立ててほしい

 4月の番組編成替えで、かなり衣替したワールドWaveトゥナイト」。
 番組からやる気は感じられるので、観続けてるんですけど。今のとこ、うまく行ってないと思います。
 色々盛りだくさんなのはいいけど。全体にすし詰めすぎる。

 多分、番組のメイン・キャスター、河野憲治アナが担当する時事論説のコーナー「グローバル・アイ」と、特集「ザ・フォーカス」のコーナーとが、リニューアルした番組のやる気が現れてるコーナーかな、と思えます。

 例えば、どちらのコーナーでも、NHKの海外総局、支局からの論説が多用されたりしてて。
 「ワールドWaveトゥナイト」の放送枠で3月までやってた「今日の世界」では、「海外メディアが報じたニュースの紹介」をメインにしてたけど。4月からリニューアルした番組では、NHK製作の報道を増やしたいのかな?? そーゆーやる気なのかな? と思えます。


 NHK製作の報道を増やすんならそれで構わないから、ちゃんと報道してほしいと思うな。
 アタシはNHKの視聴料ちゃんと払い込んでるから、不満も言わせてもらいますけど。
 報道と論説を曖昧に混ぜたり、報道だと思って観てたコーナーのラストを唐突に論説でまとめたり、そういうスタイルは止めてほしい。
 論説コーナーをやるんならやるでいいから、きちんと論説コーナーにしてほしいんだわ。

 やる気も感じられる番組だから期待もしてるんだし。
 河野アナにも期待感かなり持てるし。


◎「グローバル・アイ」のコーナー出来の良し悪し
 河野憲治アナがアンカーをしてる「グローバル・アイ」のコーナーは、番組では「河野アナが注目している世界のニュースを掘り下げていきます」って紹介されてます。「多角的に掘り下げていきます」って言われることもある。
 このコーナーは、きっと「時事論説のコーナー」が目指されてるんだろうと思えます。

 つまり、普通の報道でも、海外メディアによる報道クリップの紹介でもないし、ニュース解説でもない路線が目指されてると思う。
 「ニュース解説」としては、特集「ザ・フォーカス」のコーナーが、「ワールドWaveトゥナイト」にはありますしね。

 後、「グローバル・アイ」には新聞や雑誌で言ったら、政治、経済関連に重きが置かれてる感じもあったり。
 同じ番組の別コーナー、女子アナの鎌倉千秋さんがまとめる「ニュース・カフェ」の方が、取りあげる話題に「生活・文化」な感じが色濃くて。そっちとの番組内分担も考えられてるかもしれない。

 「グローバル・アイ」のコーナーはイレギュラーで、日によってやったりやらなかったりするんですけど。最近だと――

  • 12日放送分のでは、ガザ地区(ガザ・ストリップ)住民の、ハマスへの抗議運動の話題。
  • 14日放送分の「グローバル・アイ」は、海南島(中国)で開催された、新興5カ国(Brics)首脳会議の話題から入り、「連携を強めてるBricsの今後」って話題に展開。

――をやってくれました。

 12日放送分「ガザ・ストリップ住民の、ハマスへの抗議運動」は、細かな不満も感じたけど、比較的よかったです。
 14日放送分の「連携を強めてるBricsの今後」は、感心しない出来だったな。
 まだまだ、日によって出来、不出来の差が大きいと思います。


 「グローバル・アイ」のコーナーは、基本的には、NHKの海外支局か海外総局製作の現地レポートを流して、スタジオの河野アナがアンカーになる構成。
 後、たいていは、日本のスタジオにいる河野アナが、海外支局(または総局)のNHKの人にあれこれ質問するパートが入ります。


 で、まず、「海外支局(又は海外総局)製作の現地レポート」の出来によって、「グローバル・アイ」コーナーの出来も左右されちゃってる。
 簡単化して言っちゃうと、海外支局(又は海外総局)製作の現地レポートの出来が、「レポート単体で観ても、視聴者に伝わるものがある場合」には、コーナーの出来もよくなる方向です。
 逆に、現地レポートが、海外支局(又は海外総局)の人のコメントで補われる必要があればあるほど、その日のコーナーは散漫な内容になって、不出来になっていく。

 ひどいときは、スタジオの河野アナがアンカーの立場ではなくなっちゃう。海外のNHK報道マンがアンカーのようになって、スタジオの河野アナが、海外支局の時事論説を承るキャスターみたいになっちゃう。
 こうした回は、概してつまらないんだわ。


 河野アナは、質問のセンスもまとめる力も持ってるアナウンサーさんと思えるから、「グローバル・アイ」のコーナーも、河野アナをアンカーとして立てて、「河野アナによる時事論説」のコーナーとして、きっちり仕上げてってほしい。
 その方が、他のコーナーとの特徴の違いも、相互に引き立てあって、番組全体の構成を良くするだろう、と期待できます。


◎「グローバル・アイ」出来の良い例
 例えば、12日放送分の「ガザ・ストリップ住民の、ハマスへの抗議運動」は、話題自体も刺激的ですけど、現地レポートの出来も良かった。
 ハマスに抗議をしてるガザの人も、取材された人については、ハマスの何に抗議してるのか、かなり伝わるレポートになってて。
 ここが1番良かった。

 ハマスが例によって、ガザの方からイスラエルにロケット弾攻撃、イスラエルも例によって報復攻撃したんだけど、パレスチナ人の子供が巻き込まれて死んじゃった。
 ここで、今までだと、「やっぱりイスラエルは許せない」ってふうに、ハマスがガザの世論を取りまとめていったと思うんだけど。
 今回は、ガサの人たちが「ハマスは、子供がいる公園からロケット弾を撃った。何もこんなとこから撃たなくていいじゃぁないか」ってっ言ってる様子を現地レポート。

 これは、よくわかる話だし、同時に「何もこんなとこから撃たなくていいじゃぁないか」ってとこはやっぱり日本の民間世論とは違うわよねって思える。やっぱり、臨戦態勢にある社会の世論。
 そこを切り出しただけでも、この回の現地レポート、価値があったんだわ。

 河野アナは、日本のスタジオからNHK支局の人に質問してましたけど。質問も良かったです。
 後、12日の番組では、「グローバル・アイ」のコーナー以外でも、「エジプトで準備が進むムバラク大統領の裁判」など、関連したニュースも報じてて、そこは良かった。

 良くないとことしては、ハマスのスポークスマンの談話も聞きたかったし、ファタハや、イスラエル当局が、ガザ地区内の動向をどうみてるのかも聞きたかった。
 けれど、こうした不満も、ささいなものとして納得できるのは、やっぱり話題を報じる現地レポートが、レポートを単体で観ても、報道クリップとして成り立ってるからだと思います。


◎「グローバル・アイ」出来の悪い例
 「現地レポートが、レポートを単体で観ても、報道クリップとして成り立ってる」と、文字で書くと、そんなの報道番組では当たり前のこと、と思えるでしょうけど。
 ところが、「グローバル・アイ」で放送されるNHK海外支局のレポート、そんなこともできてないことがあるんだわ。

 例えば、「グローバル・アイ」、14日放送分の「連携を強めてるBricsの今後」だと、まず中国の海南島で開催されたBrics首脳会議開会式の様子を画像クリップで映しながら解説ナレーションを被せる。出席者の紹介をしながら、議題を紹介すると、もう会議の共同記者会見の画面に映ると、又もナレーションで共同声明の要約を解説。

 この一連の画像って、画像だけ観てても、なんの会議のクリップやらよくわかんないのね。
 だからナレーションが補ってるとは言えるんだけど、このナレーションがまたつまんない。現場臨場感みたいのがないんだわ。
 共同声明の要約なんて、ネットでちょっと検索すれば、いくらでも読めるじゃん。

 つまり、視聴者としては、会議の席上、どんな話し合いをしてどんな議論が交わされたか、とか、どの国がどんな主張を唱えて、どの国がどういう駆け引きを展開したかとか、そーゆーことを知りたいんだけど、その手の肝心なことは報じてくれないわけ。


 「グローバル・アイ」コーナーで使われる海外支局(あるいは総局)製の現地レポートって、コーナー内で、現地の報道マンや、日本スタジオの河野アナが補足コメントを加えることを前提にして、ハショッた画像編集で済ませちゃってることが少なくないんですね。
 レポートの画像クリップだけ単体で観ても、報道になってないの。
 現地レポートだとしても出来が良くない。

 毎回でもないけど、珍しくもなくらいの頻度で、その手の「単体では成り立ってない現地レポート」が使われてます。
(実は、同じような不都合は、同じ番組の特集コーナー「ザ・フォーカス」でも目立つんだけど。今回は、その件は置いておきます)


 で、コーナーでは、「単体では報道の体を成してない画像クリップ」を観て、日本スタジオの河野アナが当然のように中継で支局の人に質問するわけ。

 15日放送分だと、河野アナ「今回(Brics諸国の)共通の課題に結束して対応する、ということのようですけれども。具体的には、どうするということなのでしょうか?」って、NHK中国総局の人に訊いてた。
 この質問へのお返事が「Brics側としては、金融緩和を続けるアメリカなど先進国に対して、Bricsとして結束してものを言っていく必要があります。閉会後の共同記者会見や関係者を取材した限りでは、今回その目的は達成されたとみられ、開催国中国の高官は会議は大成功だったと強調していました」。

 このやりとり、微妙に会話になってないですよね。
 「具体的にどんな対応策がとられてるのか?」って質問に対して、「共同声明は結束してた感じですので、会議は成功だったと思えます」って言ってるだけで、全然、具体的な中身の話になってない。
 だいたい「閉会後の共同記者会見や関係者を取材した限りでは」って、その取材クリップを観せてくんないと、報道になってないじゃーん。
 「取材してみたんですけど、会議はうまくいったと思えます。主催者もそう言ってました」って、子供の夏休みの感想文とかじゃぁないんだからさー。

 NHK中国総局が「関係者への取材インタビュー」とかをちゃんと放送して、その上で、取材者が「この関係者の言うことはもっともです」ってコメントでくくるなら、まだわかるわけ。

 視聴者は、インタビュー画像とコメントのまとめと観比べて、あー、この取材の言うことは信頼できそうだわ、とか、どーも眉唾よね、とか(視聴者)それぞれに判断していくから。

 NHK中国総局の公式見解かなんか知らないけど、「会議は成功だったと思えます」の裏づけになる取材画像ながさないで、総括だけ流すのって、これ報道ではないですよね。
 強いて言えば「論説」の類だし、それも出来の悪い論説なんだわ。


 アタシが思うには、まず「グローバルアイ」のコーナーで使う、海外支局、総局の現地レポートは、レポート画像単体を観ても報道として成り立つもの、を選んで使ってほしいです。

 その上で、レポートを観た日本の視聴者の多くが疑問を感じるだろう点を、河野アナが補足的に論評を加える方向が、好ましい。

 レポートにもなってない画像を流して、海外支局の人が報道にもなってない論評を述べて、日本スタジオの河野アナがそれを承る、みたいなレベルの回は、もう止めてほしい。
 「グルーバル・アイ」のコーナーでは、河野アナを論説するアンカーとして、しっかり立てっていってほしいと期待します。河野アナ、適性あると思うのよね。