「ワールドWaveトゥナイト」(NHK・BS1):鎌倉千秋さんの「ニュース・カフェ」は、もうひとふんばり頑張ってほしい

 4月の編成替えで、番組の衣替えのあった「ワールドWaveトゥナイト」。今のとこ、うまく行ってないと思います。
 番組からやる気は感じられるので、観続けてるんですけど。
 色々盛りだくさんなのはいいけど。すし詰めすぎる。
 「そこが聴きたい」って思っても、アッサリ、別のコーナーに行っちゃって、喰い足りない感じが残っちゃう。

 アタシはNHKの視聴料ちゃんと払い込んでるから、不満も言わせてもらいますけど。
 やる気も感じられる番組だから期待もしてるんだわ。


 14日に書いた「ワールドWaveトゥナイト」についての記事では、番組の特集コーナー「ザ・フォーカス」のことを書いたけれど。今日は「ニュース・カフェ」のことを書いてみます。


◎「ニュース・カフェ」コーナーのいいとこ、よくないとこ
 「ニュース・カフェ」のコーナーは、番組のサブ・キャスター(だと思う)の鎌倉千秋さんが担当。
 海外メディアが報道した記事の内、新聞で言ったら「生活欄」「文化欄」のような分野の報道クリップをピックアップ、概ね、報道された出来事を紹介してく趣旨だと思う……。
(実は、「海外メディアの報道クリップの紹介」なのか、「報道された出来事、事件)の紹介」なのか、どっちつかずで煮え切らない感じもするんだわ)


 例えば13日放送分の「ニュースカフェ」だと、「アフガニスタンに中国から輸出される低価格ブルカ」の話題を、確かBBCのレポートクリップを紹介しつつ、スタジオでコメントも加えてた。
 14日放送分は、これは、確実に「サウジアラビアの女性たちの暮らしぶり」をレポートしたBBCのクリップを紹介。
 15日放送分は、東京都内で開かれた、スペインのテノール歌手、プラシド・ドミンゴさんのコンサートについて紹介。これは、「地震原発事故の後、海外アーティストの来日が少なからずキャンセルされてる内での来日コンサート」って切り口でした。
 この日の分は、取材もNHK独自のもの。時々混じるのね。


 さっき、「海外メディアの報道クリップの紹介」なのか、「報道された出来事(ニュース、事件)の紹介」なのか、どっちつかずって書いたけど。
 きつい言い方しちゃうと「他人の褌で相撲を取ってる形」になっちゃってる回が目立つんだわ。


 ただ、アタシは、番組全体の内で、このコーナー存在意義があると思ってます。

 まず、メイン・キャスター河野アナ担当の時事論説コーナー(だと思う)「グローバル・アイ」の方が、経済、社会といった分野の話題が主になってる。それに対して、「生活欄」「文化欄」で扱うような分野の話題を扱ってるのが「ニュース・カフェ」。この分野わけは、有意義と思います。

 それから、「ニュース・カフェ」コーナーは、全般にすし詰め感の強い「ワールドWaveトゥナイト」の内で、比較的、軽やかな感じのペースで進行されてて、これは悪くもない。とは思います。
 1本の報道クリップを基にした紹介に、それなりの時間を割いてるからだと思うけど。時間の割き方は、アタシ、悪くないと思うんです。


 前も書いたんですけど、12日の水曜日放送分で、東日本大震災の被災地に入って活動している、国際赤十字・赤新月社連盟のカナダ人女性、キャサリン・ミューラーさんについてのレポートした回は、かなり良かった。NHK独自取材の回だったし。

 ただ、この回、ジャーナリストだったキャリアも活かして、今は赤十字赤新月社連盟の広報員をしてるって言う、取材相手に救われてた感が強い。
 報道ジャーナリズムについて、きちんとした考えを述べてたキャサリンさんの談話を踏まえて、河野アナも加えたコメントもよかった。えっと、取材した鎌倉アナがまとめ的なコメントをして、それとは別に河野アナが加えたコメントがよかったって話です。

 詳しめの論評は、前に触れた時に書いたんで、繰り返すことはしません。
 ここでは、紹介する報道クリップや取材相手に依存しないようにして、観応えの感じられるコーナーに「ニュース・カフェ」を育てていってほしい、って期待を書いておきます。


◎「ニュース・カフェ」コーナーは、ここを頑張ってほしい
 ぶっちゃけ、鎌倉アナは、紹介する報道クリップをあまりよく読みこんでないような感じがします。クリップのレポターなり、クリップで報じられた事件なりについて、一通りの下調べだけですませてるんじゃぁないか(?)、そんな気がしちゃう。
 実は、ちゃんと読み込んで、調べてるんだけど、時間配分とか、ディレクターさんの方針とかのせいで、うまく活かせてないのかもしれないけど。

 例えば、15日放送分でインタビューしたテノール歌手、プラシド・ドミンゴさんが、どんなキャリアの歌手だとか、アーティストとしてどんな個性の持ち主だとか、コンサートではどんな歌を歌ったか、とかの話題が、取材した鎌倉さんからのスタジオ・コメントでほとんど聞けない。

 「世界3大テノールの1人」だとか、紹介してるけど、そんな紹介は通りいっぺんのものよね。「どんな歌声なのか」コメントしないと、歌手の紹介をしたことになんないじゃん。

 あるいは、「ドミンゴさん自身が、メキシコで暮らしてた時代に大地震に見舞われて、親族の方を何人も震災でなくされた」ってエピソードの紹介してたけど。それが、歌手としての歌い方に影響を生んだのか、生んでないのか、歌手の紹介だったら、視聴者はそうしたことが聞きたいわけ。


 都内で開かれたコンサートの取材画像では、ほとんど、日本語で歌った「ふるさと(故郷)」のとこしか映してなくて。だったら、スタジオのコメントで、ドミンゴさんがどんな歌手なのか、コンサートは全体としてどんなパフォーマンスだったのか、コメント紹介してくれないと、視聴者は物足りない。
 コーナーの最後が「このコンサートは(別の日に)NHKのBS・プレミアで放送されます」で結んでるんだからなおさらなんだわ。

 アタシは、NHKでやる別番組の紹介を「ワールドWaveトゥナイト」の内でしても構わないと思うんですね。
 ただし、ただの番組PRではなくて、歌手なり、コンサートなりのきちんとした紹介があっての上のことなら。

 15日放送分の「ニュース・カフェ」コーナーは、「震災後にあえて来日した外国人アーティスト」って切り口だったから、コンサートの画像紹介では「ふるさと(故郷)」のあたりに絞り込まれた事情は、わからないでもないです。
 だったら、スタジオでのコメントでまで「ふるさと(故郷)」の話題を重ねてもだめよね。画像を補うようなコメントを接いでくれないと、全体として単調さが増すだけ。

 それやこれやで、せっかくの題材(取材対象)を、単調な薄味紹介にしちゃってた。
 乱暴に言ってしまえば「ふるさと」の話題に話を絞りすぎで、かえって、コンサートのことや、歌手のことが一面的な紹介になっちゃってた。
 コンサートのラストの曲なんて、普通、それまでのパフォーマンスを共有してきた観客だから訴えかけてくる、コンサート全体のエピローグみたいなもんじゃん。
 15日放送分の紹介は、「『ふるさと』の歌で、コンサートを代表させた紹介」にはなってなかった。コンサートの一面だけを切り出して紹介の形に整えた、バランスの悪い紹介になっちゃってた。


 14日放送分の、「サウジアラビアの女性たちの暮らしぶり」についてのBBCレポート紹介の方だと。一部をカットして紹介してた。
 アタシ、元になったレポートを、BBC WORLDの方では観てたんだけど、元のレポートは、もっと長かったんです。
 
 それも構わないと思うんだわ。元々のレポートが、どんな趣旨だったか、きちんとスタジオ・コメントで補足紹介するなら。てゆーか、きちんと補足紹介しないから「他人の褌で相撲を取ってる形」になっちゃうわけ。

 例えば、元のレポートでは、「夫同伴でないと婦人が独りで出歩けないサウジ女性が、運転手付の自動車に乗らないと買い物にもいけない(サウジでは、女性の自動車運転は禁じられている)」って実情をレポートした後、運転手付き自動車なんて持ってない庶民や貧困層の女性はどんな暮らしぶりかって、ふうにレポートが続いてく。
 ここで印象的だったから、アタシ覚えてるんだけど、BBCの女性レポーターが「富裕な女性の暮らしぶりを取材することに飽き飽きしました」って意味のコメントを、カメラに向かって言ってたのね。
 この印象的なコメントの部分、「ワールドWaveトゥナイト」で流された版ではカットされてたんだわ。

 カットされたレポーター・コメントのニュアンス、元のレポートを観てない人相手に、的確に伝えるのはそう簡単なことじゃぁないんだけど。「ニュース・カフェ」コーナーでは、そうしたプロでないとちょっとできないような紹介をしてほしいわけ。
 てゆーか「他人の褌で相撲を取ってる形」とか言われたくなかったら、むしろ、やんないとダメよね。プロなんだから。


 ここで話を戻しますけど、そうしたきちんとしたコメントをスタジオで言うには、例えば鎌倉アナ、番組で紹介する分のレポートだけでなくて、元々の尺(長さ)のレポートを数回観なくちゃだめよね。
 あるいは、紹介するレポートを観たら、疑問点を自分で調べといて、コメントに活かすとかさ。

 スタジオでの鎌倉アナのコーナーまとめ的コメントを、河野アナが補うような形のやりとりがちょくちょくあって気になります。こーゆー「約束組み手っぽい」やりとりは、ほんと退屈よね。
 鎌倉アナには、河野アナの方が「なるほど、(元のレポートには)そんなとこもあったんだね」とか言わせるくらい、下調べをしたコメント、してほしいと思います。


 「歌手の歌声がどんなだかコメントしないと、歌手を紹介したことにならない」って書いたけど、キャスター個人の主観的な感想をコメントしなくてもいいのよ。してもいいんだけど、それより前に「(コンサートのパンフレットでは)これこれの歌声って紹介されてるんですね」とか紹介してから、「私も会場で聴いたんですけど」と感想を添えればいい。
 歌手紹介のベーシックなチップスの1つだと思うんですけど。正直言って、なんでそういうことしないのか、不思議です。


 あれこれ、コーナーから感じられる物足りなさの理由を書いてみましたけれど、最初の方で触れたように、必ずしも鎌倉アナのせいだけとも限らないとも思います。
 番組ディレクターのディレクションとか、幾つかの要因が絡みあっていそうな気もするんだわ。
 特に最後に書いた、退屈な「約束組み手っぽいやりとり」なんかは、構成台本にあたるものの出来、不出来とかによるかもしれない。

 でも、視聴者にわかるのは、やっぱり、まずはキャスターの言動とか、放送される画像クリップとかから、だから。そこから論評するしかないのよね。