BBC WORLD NEWS:“Reporters”“This Week”(World Features):今週は、エジプト政変のスペシャル・セレクトを放送

 BBC WORLD NEWSで週末に組まれてる番組枠、“World Features”。日本で視聴できるCSの番組表だと、土、日、月(午前中)に30分枠が何度も組まれてます。実際は、「ウィークエンド・ワールド」、「今週を振り返って(This Week)」、「UKレポート」、他から、セレクトされたプログラムが“World Features”枠内で何度かずつリピート放映される形。
 “This Week”は、「今週のワールド・ニュース」って感じのプログラム。
 “Reporters”も、“World Features”枠で放送される、報道クリップセレクト番組。こっちはキャリアのあるレポーターの現地レポートをセレクト。“This Week”でリピートされるニュースよりも長めになってると思います。


 この土日に放送された“Reporters”は、「スペシャル」と銘打って、カイロを中心にしたエジプト政変関係の報道クリップを事態が推移した順に放送しながら、短い解説を入れてくれてた。
 “This Week”の方の放送はなかったのかな? “U.K.Report”の放映はあったんだけど……。見逃したかもしれないですけど。“World Features”枠に、リビア情勢のBREAKIN NEWS(速報)が入ったりもしたので、そのせいかもしれません。

 “Reporters”の今回分「スペシャル」は、ゼイナ・バダウィ(Zeinab Badawi)がメイン・キャスターに。「1月の後半に(エジプトで)はじまった18日間のデモ」というくくりで、エジプトのピープルズ・パワーと、どのよにムバラク大統領が退陣をしたのか、を振り返るといった趣旨。


 番組は、まず1月25日のカイロ中心部でのデモと警官隊の衝突を報じた、当日の報道クリップから入る。この時点で、警官隊が催涙弾などを使用している様子も、街頭のデモ参加者が、敷石を剥した投石などで応酬している様子も確認できる。街頭で、ムバラク大統領(当時)のポスターが貼られた看板が、デモ参加者に引き剥がされた有名な画像(携帯からネットに流出)も、この日の出来事、として報じられた。
 25日夜のクリップは短かったけれど、騒然とした雰囲気をよく捉えた画像が観られた。現地レポーターの当日のアナウンスで「(カイロ街頭の)デモ隊は、ムバラク大統領が退陣するまで、居残る、と言っています」と報じられた。
 “Reporters”スペシャルの内容を補足すると、この日、「カイロのデモには、当初1万5千人程度が参加」と報じられ、政府側は「2万人〜3万人程度の警察隊を首都圏に配備」して備えていた、とも報じられていた(当時)。
 また、ムバラク政権倒壊後の報道によれば、25日のデモ後頃から、当時の内務省と秘密警察(政治警察)は、スパイ(ダミー)やハッキングも投入した、フェイスブックなどインターネットへの介入を積極的にはじめたらしい。


 “Reporters”スペシャルの構成は、3日後(1月28日)の金曜礼拝の日へと飛ぶ。
 この間、エジプトでは、26日に内務省が集会禁止令を発し、カイロとスエズで、総計3千人規模と言われているデモ集団が再集結。27日には、カイロ街頭の抗議活動はいったん、押さえ込まれたが、アレクサンドリアスエズなどでは、かえって活発化していた。
 27日の6:00PM、政府はエジプトに4社のみだったプロバイダの回線をすべて閉鎖させていたにも課かわらずのことだった。

 “Reporters”スペシャル28日分のクリップでは、ストリートで放火される警備車両、炎上するカイロ警察署の画像などが放送された。
 28日カイロでは、「怒りの日」の抗議に参加するよう呼びかけがなされてた。当日、カイロで街頭に出場した抗議者の人数は、当時の報道で、10万人以上、12〜13万人程度との目算を報じた例が多かったと思う。
 この日の多数のカイロ市民の街頭展開により、警察隊は撤収。
 この頃、U.S.(アメリカ)のGoogle本社は、エジプト政府のネット回線遮断を非難。エジプト市民が、電話回線を通じてネットに接続できるサービスを大々的に展開。また、政権倒壊後の報道では、この頃ハッカー集団アノニマスが、政府側システムに攻撃を開始したと報じられている。


 直後の、29日未明、ムバラク大統領が国営放送で、国政改革を口にし、閣僚の解任、アフマド・シャフィク(前航空大臣)の新首相指名があり、オマル・マフムド・スレイマン・アル=リファイ(前情報長官)の副大統領指名を指名を公表。
 ちなみに、与党国民民主党本部ビルに放火され、炎上したのは28日のこと。28日から29日にかけては、ムスリム同胞団の反政府抗議支持のステートメント公表、軍部のカイロ治安出動、軍スポークスマンの「国民の抗議要求は正当」とのステートメント公表など、抗議活動に影響の大きな動きが相次いだ。

 “Reporters”スペシャルの構成は、2月1日に飛ぶ。
 この間、31日には、シャフィク新首相の組閣した閣僚が、大統領から任命された。
 “Reporters”スペシャル2月1日分のクリップでは、すでに抗議側の拠点になっていたタハリール広場での取材画像をメインに。画像を観ると、「怒りの日」よりも前の抗議集団と比べて、参加者に年齢や性別などの幅が広がった様子が観てとれる。番組は、広場の祝祭気分をよくとらえた画像を流し、現地レポーターも率直に広場の人々の様子を「お祭り気分」と評してた。

 補足すると、2月1日カイロでは、「無期限ゼネラル・ストライキ突入」と、「100万人抗議」とが呼びかけられていた。政府側は、地方からカイロの抗議に参加する動きを妨害する狙いでか、鉄道の運行を停止。しかし、この日、タハリール広場とその周辺には、20万人と目測される人数が集まり、要求は「ムバラク大統領即時退任」にまとめられていった。
 また、1日夜、国営テレビで演説を放送した、ムバラク大統領(当時)は、今年9月予定の大統領選不出馬や選挙制度の改革を約した。しかし、タハリール広場に集結した群衆は、かえってこの演説に怒り、即時退陣の要求が再度強まることになった。
 前後して、当局は、先の27日に閉鎖していたプロバイダ各社のネット回線も復活させた。

 そして、スペシャルの構成は、2月2日分に、この日ムバラク大統領支持を唱える集団が街頭に出場、タハリール広場に行進し、乱入していく展開に。当日、BBCの現地レポーターは、「これほど大勢の(大統領支持派)はみたことがありません」と報じているけど、実は、広場に現れた支持派集団はせいぜい数百人規模、多くても1千人程度だったと思われる。現地レポーターは「よく組織されています。党員を動員したのでしょう」とも「プラカードもよく出来たもので、専門職の手によるのではないか」とも報じていた。
 BBC WORLDの、当日の報道クリップは、抗議派、大統領支持派、両集団の間での投石合戦の様子、負傷者の様子を報道。この時点で、治安出動していた軍部隊は、怪我人の救出活動はしたが、抗議派・大統領支持派の衝突には介入せず傍観。


 スペシャルの構成は、2月10日分に飛ぶ。この間、大統領側が野党との対話を開始したことを、スタジオのキャスター(ゼイナ・バダウィ)がコメントすると、画面は、10日に再度、国営放送に登場し、前回同様9月辞任を唱える大統領の演説画像に。この演説では、デモ隊に暴力を振るったものは処分をする、とも語られた。

 “Repoters”スペシャルでは、省略された形だけど、この間、イスラム教の礼拝日あたった金曜日2月4日に再度のデモが呼びかけられていた。この呼びかけには、エジプトでも賛否両論の声が聞かれたが、結局、後に「退陣の金曜日」「追放の金曜日」と呼ばれる約20万人規模の大規模反政府デモが行われることになった。ムバラク支持派も「忠誠の金曜日」と命名した規模をおこない、数千人が動員された。

 そして、キャスターは、10日のTV演説に失望した反政府活動はさらにエネルギーを得た旨をコメント、大統領官邸への抗議デモもおこなわれたことを語る。さらに、11日金曜日に、大統領辞任が報じられたことまでをスタジオのキャスターが語ると、「ムバラク大統領最後の日」として11日採録分の報道クリップが流される。
 疲労して街頭で寝ている人たち、エジプト国旗や靴を振る群衆の画像が移された後に、スレイマン副大統領(当時)が、短く大統領辞任を伝えたTV演説の画像に。この後は、広場や街頭で歓喜する人々の様子が次々報じられ「30秒のテレビ演説で、30年間のムバラク支配は終わりました」と、レポーターの声が被さる。「今夜はお祝いの日です、明日は厳しい仕事が待っています」と当日のレポートが締めくくられ、その後は、14日の報道クリップで、政府に批判的な人々、政府支持派の人々、反欧米的な人々など、様々なカイロ市民の様子が映され、スペシャルは終わった。