もう石原都知事は、ご自分の道徳観で健全と思えるアニメだけで、国際アニメフェアを開催したらいいんじゃぁないかしら??

 17日に、アニメニュース Japanimate.comで報じられたのですが、2月16日の都議会で、石原慎太郎都知事が実行委員長を勤めている東京国際アニメフェア(2011年度)の開催や運営について、質疑応答があったそうです。

 アニメニュースの報道は「石原都知事、アニメフェアへの協力を要請、出版10社に手紙を送る」となっていますが。
 民主党のくりした善行議員の「東京国際アニメフェアの開催について」の質問に応じた答弁の中で、実は、フェアへの出展を見合わせた出版大手10社に充てて「フェアの成功に手を携えていきたい」と、都知事から呼びかける手紙を送った、と語られた形。


 都議会での一連の質疑応答の様子は、アニメニュースの報道記事ページに設けられたリンクから録画ファイルを視聴できます。
 民主党のくりした善行議員の質問に応じて、石原慎太郎都知事、東京都産業労働局長、東京都青少年・治安対策本部長の3者が答弁した様子が、観れます。


 さて、質疑応答の様子を観ると、石原慎太郎都知事、及び、答弁した都職員の方々が、いまだに、国際アニメフェアの開催を都庁の側が自ら困難にしてきた経緯を認識していないらしい様子が伺えます。
 あるいは、相変わらず軽視してるかですね。

 まあ政治家さんと、地方自治体とはいえ、首都行政の官僚さんですから、「わかってて、わざとはぐらかしてるんじゃぁないか」とか疑えば疑えますけれど。
 その手の疑いを差し挟むと、話がどんどんややこしくなってちゃうよね(苦笑)。
 それでも、アタシの個人的印象を記しておくと、石原都知事は「何がもんだいになってるのか、わかってない」感じで、東京都産業労働局長は「わかってはいるけど、はぐらかしてる」感じかな(??)。

 石原都知事は、答弁の最後を、質問者のくりした善行議員のことを、「(都条例の改悪に)賛成したじゃないか」と、質問趣旨やこれまでの経緯を無視したトンチンカンな答弁で締めくくってるけど。
 くりした善行議員ら民主党系の都議たちは、「都の青少年健全育成審議会の審議内容全面公開(この審議会の所轄は、東京都青少年・治安対策本部です)」や「慎重な運営」を条件として付け、渋々賛成票を投じた経緯でした。
 今回の議員質問も「審議内容公開」に向けた努力を見せない石原都政、「慎重な運営」が疑わしい高圧的な態度が問われた趣旨なんだけど、何がもんだいとされているのか、理解できてないご様子。

 一方、東京都青少年・治安対策本部長は、実は東京国際アニメフェアの開催なんて、どうでもいいと思ってる様子ですね。
 青少年・治安対策本部長は、議員質問の趣旨をはぐらかした答弁しかしてないし。強いて言うなら「わかってない感じ、わかろうとする姿勢もないまま、はぐらかし答弁をしてる」様子。
 青少年・治安対策本部長が答弁で言ってることは、煎じ詰めれば「これまでは、行政側が必要と認めたときだけ、不健全図書審議で出版社の意見も聞くを方法でやってきてるんだから。それで構わんじゃぁないか」ってことでしかないから。「過去の審議内容や、審議方法が不透明な密室行政に終始してきた」こととかを、それで構わないと思ってる様子が、明らかです。
 くりした善行議員の質問にある「なんで、もっと早いタイミングで出版社と話し合おうとしてこなかったのか?」には、答えようとすらしてないんだもん。
 「これから議論を深める」なんて言われても信用できないよね。


 アタシが思うには、石原都知事、ここまでご自分の政策に拘られるなら、ご本人が「卑しい仕事」と呼んだ出版社とは、きっぱりと袂をわかって、ご自分の了見の狭い道徳観に合致するアニメの出展だけで東京国際アニメフェアを開催したら、いいんじゃぁないかしら。
 昨年末取材インタビューに応じて「(アニメフェスをボイコットする企業は)来なければいい 来年ほえ面をかいて来るよ」「ずっと来なくてもいいよ」と公言したわけでもありますし。


 石原都知事は、アニメやマンガを「子供のもの」でしかないし、「(大人が)子供に夢を与えるもの」って固定観念から抜けられないんだと思います。だから、氏が原案に関わった『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』なんて、大コケにコケる――コケるような企画に関わちゃうんでしょうけど。ご本人は、その辺の時代錯誤がわかってらしゃらないのではないでしょうか。

 青少年健全育成条例に関する、一連の都知事の発言を追っかけてくとそう思えるな。
 つまり「小学生にみせたくないようなマンガ」のもんだいと、「中学生以上、成人未満の青年が興味を持つかもしれないマンガ」のもんだいをゴッチャにしたまま、論じてて。
 理解を得られないと、個人的な道徳観を持ち出して、「これが都民の総意だ」とばかりに、声高に威圧する。
 出発点で、もんだいについて誤認があるんだけど、石原都知事は、どこで話がかみ合わないかわかんないもんで、どんどんヒステリックな発言を繰り返すのよ。

 アタシは、この話題では何度か書いてるけど、マンガでも、R15やR12+みたいなレーティングを考えた方が実際的なはず、と思いますね。


 ともあれ、世界に向けた発信力と競争力を持つアニメコンテンツが、石原都知事流の時代錯誤な狭い了見のもとで、振興されるものかどうか、見ものではある、と思います。
 決して少なくない本数のコンテンツの、原作、原作者や出版社と、アニメコンテンツ産業の関係も、よくわかってられないご様子ですし。
 アニメ、マンガ、ノベルス、ゲームetcの多メディア展開が複合して、市場のコンテンツ消費に相乗効果が生じるって、今の消費メカニズムにも、ご理解は及んでないことでしょう。おそらく。


 何にしろ、政治家としての言葉を撤回、謝罪しないなら、都知事の了見の狭い道徳観に合致するアニメだけで東京国際アニメフェアを開催するしかないでしょう。
(もう1つの方法として、石原氏が、自ら「フェアの実行委員長を辞任するから出展してくれ」と、申し出る手法もあったはずだけど。そのタイミングは、とっくに逸してますよね。
 撤回、謝罪もせずに、招聘の誘いをしたんだったら、なおさら)

 都庁の関連部署の職員の方々は、大変でしょうけど、お仕事ですから頑張ってください。知事は選挙で選出されたんですから、仕方ないですよね。


 もちろん、日本のコンテンツ産業の方は、そんな了見の狭いイベントに振興してもらわなくても構わないわけで。
 「アニメコンテンツエキスポ」で盛り上がっていけばいいと思います。

 石原都知事が暴言を撤回して謝罪せず、都庁側も旧来の事前協議をおこなわず、少数者による密室での審議結果をゴリ押しで押し付けるスタイルを改める気が無いならば、って前提ですけどね。
 都議会での行政側の答弁みるかぎり、とても、撤回、謝罪や、透明化、期待できそうにないですよね。