“Cracker”(心理探偵フィッツ)
CSのAXNミステリーでオンエアしてた、“Cracker”(心理探偵フィッツ)が終了した。1月7日からのオンエアで、月〜金に、毎回2回分連続放映で、26日に終了。
放映は嬉しいけど、なんで今?? とか思いながら、毎回観てたら、最終日に、2006年放映の新作、特別編“Nine Eleven”までやってくれたので、嬉しいビックリ(♪)。
“Cracker”(心理探偵フィッツ)は、ハリポタや、007の映画にも出てるロビー・コルトレーン(Robbie Coltrane)主演のテレビ・ドラマ。
北部イングランドのマンチェスターを、主要舞台にして、コルトレーンが演じるのは、警察の嘱託で犯罪者のプロファイリングをしたり、尋問に協力したりする、Dr.フィッツ。
“Cracker”(心理探偵フィッツ)て、「テレ・ムービー」とか呼びたくなるような重厚な作りの連作なのね。
1993年に、Dr.フィッツがはじめて警察の嘱託になる話が、1時間枠3連作でオンエアされ、第1シーズンがスタート。その後、1994年に第2シーズンが、1995年に第3シーズンがオンエアされて、1996年に単発の特別編が作製された。
ロビー・コルトレーン演じる主役、Dr.フィッツは、有能な犯罪心理学者なんだけど。他人のカウンセリングはできても、自分のコントロールがうまくできない奴(笑)。
ギャンブル中毒で、アルコール依存症で、ニコチン依存症なろくでなしで、いつも夫婦喧嘩や父子喧嘩が耐えない。ついでに、元カソリック信徒の無神論者(厳密には、不可知論者かな??)。
ロビー・コルトレーンって、有り体に言ってデブなんだけど。Dr.フィッツも作中で女刑事に「あざらしみたいな図体の中年」とか言われる(笑)。
そんなDr.フィッツが、腹の中のムシャクシャを押さえ込むようにしながら、のっしのっしとマンチェスターの街を歩く様子が、風格のあるろくでなし、って感じで(笑)。最初のシリーズオンエア当時は、「イングランドで1番セクシーな男優」とか言われてたらしい。
このシリーズ、「心理探偵」とは言っても、謎解きミステリーではなくて。犯人が誰で、どのように犯行をおこなったかは、だいたいのエピソードで、視聴者には明かされてる(例外エピソードも有り)。
フィッツが、激しい尋問で、犯行動機をあぶりだしてくとこが、各エピソードの観どころね。
Dr.フィッツって、犯罪を激しく憎むんだけど。犯罪者にもあまり容赦しない奴。心理学者、件、セラピストなので、人間は誰でも追い詰められれば犯罪行為を犯す、的な認識も持ってるはずなんだけど。それだけに、犯人が、どんな理由で犯行を思いついて、どんなきっかけで犯行に至ったかにはすごくこだわる。
作中、「(フィッツの尋問は)精神的なレイプ」とか言われるくらい、激しく言葉の暴力を使うんだけど。アタシが思うには「オレみたいなろくでなしでも、重犯罪は犯さないのに、お前は一体どんな理由で、こんなことしでかした!? 隠さず、飾らず、誤魔化さずに言ってみろ!!」みたいな感じ。
今回、AXNミステリーのオンエアでは、おそらく2006年の新作、本放送直前にU.K.で公表されたらしい、製作インサイドの特番があって。その内で、ロビー・コルトレーンは、犯人の犯行動機や経緯がわかると「ああ、そういうことかと、理由が判明するんだ」「同情するほどのことではないけど、動機は――納得できるんだよ」って語ってる。
このブリッツらしい皮肉っぽいセンスは、“Cracker”の持ち味よね♪
そんなフィッツの尋問シーンも観どころ。ただし、テレムービー形式で、不定期に月に1本くらいのペースでしかやんない、てのもわかる気がする重厚さ。
今回、第1シリーズから観直して思ったのは、旧作シリーズが「きちんと」911事件や、イラク戦争直前のストーリーになってる、ってこと。
特に、U.K.の社会風土の内での、人種差別、性差別、などなどを、フィクションならではの形で描いてて。
911事件や、イラク戦争を経た今のバックラッシュ(反動)の流れの内で観返すと、バックラッシュに至る流れが、1990年代のU.K.では、どんな感じで伏流してたかが、察せられる。
その辺、今、観ると、かえってわかり易いけれど。「世の中、理想を絵に描いたようにはいかないよね」みたいなビターなストーリーばかりで、そこも観応え。
1996年の特別編は、U.K.から中共に返還される直前の香港が舞台で。大学での講演(臨時講義)に招かれたフィッツが、現地で警察に依頼されて犯罪捜査に協力するって話だったんだけど。
2006年放映の新作、特別編“Nine Eleven”は、イラク戦争帰還兵絡みのストーリー。
冒頭では、「あれから数年」、オーストラリアの大学に赴任してたフィッツが、娘の結婚式とかもあって、一時帰国したって導入。
この導入部で、数年ぶりにイングランドに戻ったフィッツが、タクシーに乗って、様変わりしたロンドンの夜景を車窓越しに眺めるとことか、とてもいいのだわ。
今浦島みたいな感じのはずなんだけど。この感覚、アタシたち、今の日本人にも、覚えの無い感覚ではないはず。