都青少年健全育成条例問題の浮動層について

 20日付のダイアリー(都青少年健全育成条例問題の浮動層 - 佳那の日記)に続いて、東京都で改悪された都青少年健全育成条例問題の中間浮動層について書いてみます。

 規制反対の意見の人も、アタシみたいに「今回の条令には反対」の人も、改悪推進派を攻撃することよりも、浮動層を味方につけたり、少なくとも推進派につかないこと、に重点を置いた言説活動をするといいと思います。もし、言説活動をするなら、ですけれど。
 「推進派に向けた反論をするな」と言いたいわけではなく、言説活動によって「味方や理解者を増やす」ことや、「敵の味方を減らす」ことの重要度を意識した方がいい、って意味です。

 言ってしまえば、世間の多数派は、オタッキーな人間が思うほど、アニメやマンガに強い関心もってないし。LGBTが思うほど、セクマイ(性的マイノリティ)についての意識を持ってるわけでもないから。


 例えば、推進派の繰り広げてる言説には、欺瞞的なものが目立ちます。
 反対意見の人は、中間浮動層を意識して、繰り返し、どんな欺瞞があるか、倦まずに繰り返し説いた方がいいと思う。
 まず、中間浮動層の人たちは、条令改悪の経緯だって知らないはずだから。
 アタシが思うには、いきなり「表現の自由を守れ」とかは、例えば、中間浮動層の耳には話題が飛びすぎに聞こえるはず。
 アタシだって「表現の自由」大事だとは思うけど。中間浮動層が、まず、関心を持つのは、「それを許したら、どんな不都合があるのか」だと思うな。


 アタシが、推進派の欺瞞的な言説として挙げるのは、例えば15日付のダイアリー(佳那の日記)で挙げた、公明党の、オフィシャルサイトで公開されてる「『表現の自由』規制せず」という題のコンテンツ
 改悪された条例について「規定の慎重な運用や、健全育成審議会における検討時間の確保などの付帯決議を付けることを提案した」などしていますが。例えば、これがおためごかしでないならば、公明党の都議こそ、率先して現行非公開の青少年健全育成審議会の審議公開化を推進すべき。
 でも浮動層の人は、普通、審議が非公開であることも、議題案件が事前開示されていないことも知らないはずですよね。まったくおためごかしの言いくるめ。

 あるいは、条例案改悪に一貫して肯定的な報道を繰り返してきているMSN産経ニュースの、意見記事。12月16日付けで公開されている「【主張】都性描写規制条例 子供を守る当然の改正だ」という記事は、もっとはっきり欺瞞的です。


 報道メディアが、主張を公開すること自体は、もちろん構わない。社説の類と考えればよく、それも言論の自由の内だから。
 事実報道の振りをして主張が混入してるとかではなく、報道は報道、主張は主張と、読んで区別がつく書き方なら構わない。
 そして、どのような意見だろうと、書き方がフェア(公正)で、偏見に基づいたりしていなければ、とりあえず構わない。
 読む方は、当然、主張の趣旨を踏まえて、賛成とか反対とかを考えるんだから。
(偏見が甚だしい主張などを、市民が非難するのも「言論の自由」)


 そうした観点で、産経ニュースの【主張】を読んでも、例えば、以下の箇所の欺瞞性が目立ちます。フェアさが足りない。
 「都の現行条例でも漫画は規制対象であり、指定有害図書の多くは漫画だ。ただ、性器や性行為を露骨に描いていなければ指定から漏れているのが現状だ。改正案は3月議会に提出されたが、一部の漫画家や出版業界などが『創作活動が萎縮する』などと強く反対し、先送りされてきた。」との箇所。まずここには、欺瞞的な事実関係のすり替えがあります。

 3月に旧案が都議会で否決されたのは、一部の漫画家や出版業界などの反対が主要因ではなく、条文が曖昧で、拡大運用の恐れが強いと議会で議論された結果の議決でしょう。

 そして「性器や性行為を露骨に描いていなければ指定から漏れているのが現状だ」の部分では、条文の拡大解釈(恣意的運用)がすでに容認されている。
 さらに言えば「性器や性行為を露骨に描いて」ある商品で、都庁の青少年健全育成審議会が、旧条例の運用で、有害指定を怠ってるものがある状況も、無視されている。
 青少年健全育成審議会は、旧条例をきちんと運用せず怠ったまま、権限の拡大を要求。議会でゴリ押しをしてそれを通したのだけど、推進派はこの件を隠している。
 例えば、中間浮動層には、こうした点も理解してもらった方がいいと思う。


 ここでこうしたことを、細かく指摘するのは、もちろん、条令改悪の推移を知らない中間浮動層の人が、こうした言説に接せば、言いくるめられたまま、改悪推進派になびいて当然だからです。

 反対意見の人は、規制に反対だろうと、今回の条令には反対だろうと、中間浮動層を意識して、繰り返し経緯を踏まえて、問題点を具体化し、論点を正していった方がいい。

(この記事は、12月22日に書きました)