都青少年健全育成条例改悪が要望された経緯について

 東京都世田谷区在住の作家、川端裕人さんが、今月(12月)3日、都庁記者クラブでもたれた、東京都青少年健全育成改正案についての記者会見にメッセージを提出されています。
 ほぼ同じメッセージが、川端さんの個人ブログで翌日4日に公開されました
(文面の異同と異同が生じた理由は、ブログ記事内で明示されています)

 詳細は、川端さんのブログ記事を読んでいただきたいですが、「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」に反対の意見表明です。


 川端さんの反対意見の要点は、「都下PTAに対する条例条文の事前説明は充分ではない」こと、「都側が説いている『意図』と『条文』の間には乖離(ギャップ)がある」こと、にも関わらず都側が「東京都の保護者全体の意思を代弁しているかのような強弁を使っている」ことなどが挙げられています。

 川端裕人さんは、世田谷区在住の親として、PTAの在り方について疑問を提起する論考も公表されている方なのですが。
 ブログ記事で指摘されている、「都小Pの支持は、東京都の保護者全体(それどころか、都小Pを構成する個々のPTAすらも!)を代表するものではありません」との意見は、先に改悪された都条例に賛成の人も、反対の人も、まずふまえるべき指摘になっています。


 川端さんのブログ記事で、文中、「都小Pの支持」とあるのは、「都小学校PTA協議会」のことですね。
 12月3日に、青少年健全育成条例改正案(当時)の成立を要請する文書を石原都知事に手渡し、都知事の性差別発言を引き出した団体です。
 12月4日付の毎日jpの報道でも、都小P会長のコメントが、一部でしょうけれど紹介されています。

 報道によれば3日に要望書を石原都知事に届けたのは、都小Pを含める都下PTA団体など5団体。


 ところで、この要望書については、事実関係が明らかにされるべき疑念があります。

 上に紹介した、川端さんのブログ記事で説かれている反対意見とは別の指摘になります。

 それは、都庁側がまず、PTA団体に条例改悪の意図を説明し、それに応じて幾つかの団体が要望書を提出したという経緯についての疑惑です。
 つまり、勘ぐれば、「都側の意図説明」は、「要望書を出してくれという依頼」だった可能性、つまり要望書自体、都側の演出だった「可能性」が疑われます。
 そこまでは疑わないとしても、6月の都議会総務委でいったん否決された改悪案をごり押ししたい都側が、PTAから要望書を出してもらうべく、ことさらに扇情的なサンプルを「さも多数流通しているかのようなイメージ」で誘導した可能性は濃厚です。


 この件についてはYAHoo!ニュースで読める産経新聞配信(12月15日付)のコンテンツが、なかなか刺激的です。「都職員の説得奏功 性描写規制条例 石原知事『大人の責任』」と題されたコンテンツです。
 特に「改正案をめぐっては、6月議会で否決されたことを受け、都の職員が地域のPTAなど保護者の集会に直接出向く説得活動を展開。9月議会への提出も見送り、派遣回数は11月までで計81回。」との記述は、興味深い。

 先にご紹介した、川端さんのブログ記事と併せ読むと、7月から11月まで81回も「説得行為」をしたにも関わらず、都下の5団体しか、要望しなかった、という推測も可能になります。
 確かに、「都小Pの支持は、東京都の保護者全体(それどころか、都小Pを構成する個々のPTAすらも!)を代表するものではありません」と思えます。


 この話題では、度々書いていますけれど、アタシの意見は、コミックやアニメの商品にもレーティング(年齢指定)や、ゾーニング(売り場規制)はあっても構わない意見です。ただし、それは出版や小売の自主規制であるべきと考えています。
 もし、必要悪的な条例で規制されるとしたら、規制の用件は厳格に具体的でなくてはならない、との意見です。
 例えば、「性器を具体的に描いたマンガ本はR15+」と、「性器の挿入を具体的に描いたアニメはR18」とかね。

 何度でも繰り返しますけれど、改悪された条例文は、文言が抽象的、概念的にすぎます。規制側が拡大解釈すれば、好きなように拡大運用できる点が問題です。
 特に、個人の偏見に基づいた性差別発言を公言してはばからない石原都知事が、提案者なのですから。

 それに、都知事とか「幼児を強姦するようなマンガ」とか漠然とした指摘ばかりして、具体的な作品名を挙げないままで、改悪のゴリ押しを押し通して来ているのですから。

 都側、及び、条例改悪に賛成した都議各会派は、過去に遡って、都側が都下のPTA団体におこなった「意図説明」の事実関係を明確にすべきです。
 あるいは、市民の側も、関連情報の開示要求を都庁につきつけ、いったいどんなサンプルをPTA団体に示しながら「説明」をおこなったのか、情報開示を求めて構わない。

 健全育成条例の改悪は、12月15日の都議会総務委本会議で可決されましたが、施行は2011年の7月からですから、それまでに正されるべきことは正された方がいい。
 併せて、今のところは、非公開になっている、青少年健全育成審議会の審議を公開にし、議案も事後ではなく事前に開示させるべきです。

(この記事は、12月21日に書きました)