石原都知事のイメージと、石原都政の功罪

 22日に、石原慎太郎都知事が、次の都知事選には出馬しない意向、って報じられて。
 その後、自民党が出馬を要請とか、なんだとかも、報じられてる。


 22日分のダイアリーにも書いたけど、石原都政は12年でも長すぎた、16年なんてとんでもない。
 石原都政の功罪を言ったら、都の財政再建をしたのは、「功」だけど。「財政再建をしたんだから、使途は俺がいいように采配する」みたいに言ってて。石原氏ご本人が、例えば、今年の1月(23日)テレビ朝日「サンデーフロントライン」に出演したときにも言ってた。

 「財政再建をしたんだから、俺がいいように采配」とかで、使ったのが都市銀行東京や、オリンピック誘致活動での散在だったんだから。これらの失策、散在の方は、「罪」だよね。再建したのは「功」でも、その後が悪かった。
 後、今、どうなるか注目される東京国際アニメフェア2011だって、失敗したら、石原都政の失策だし。
 やっぱ、2期8年で止めときゃよかったよね。

 それから、都財政の再建は「功」でも、そのための整理の仕方にも「罪」はあった。都営の児童擁護施設を廃止したりとか。


 昨年年末、公明党の山口代表が、石原都政を「合格点」と評価したことが報じられたときも、どういう判断基準なんだか、不思議に思えたけど。
 自民党の出馬要請も、不思議っちゃ、不思議。

 やっぱり、次の都知事選挙をにらんで、有力候補って評価を自民党はしてるわけよね。
 つまりは、有権者都民からの集票能力が強い、と自民党では思われてる。

 昨年年末、Tokyo MXがやったって言う調査だと、有権者都民の7割ほどが、現都知事を支持って話も聞いてるし。
(これも、アタシは、石原都知事が出演した回の「サンデーフロントライン」で聞きました)


 アタシが思うには、有権者都民の間の石原都知事支持は、都知事の半ば生来の半ば演出された社会的なイメージにもとづていのものと思える。

  • 「都政から日本を変える」ってキャッチコピーのアピール力。
  • 国の政府や、中央官僚に、対等以上にものを言えるってイメージ。
  • 熟議を無視して、即断実行するイメージ。(政策実行のゴリ押し手法)
  • 排他的な論調での愛国心鼓舞。
  • 男性優位主義の性差別言動による、男らしいイメージ。
  • 確信犯的に暴言を繰り返すことで、有権者の間の不満を一時だけガス抜きして、スカッとした感じにする様子。

 こうしたイメージが入り混じって、「頼りがいのある都知事」ってイメージを作ってるんだと思えます。
 こうした「都知事のイメージ」は、「石原都政の功罪」の評価に影響して、フェアな評価(公正な評価)をやりづらくしてる、とも思えます。

 例えば、石原都知事が、三宅島の火山災害(2000年)に際しておこなった、救援活動の行政指導は見事だった。
 非常事態に際して、石原流の強引な指揮も生きた例と思えます。
 でも、非常事態に際しての手法を平時からとってては「ゴリ押し」になるのは当然。


 石原都知事が、「強引な手法」で都政をおこなおうとしてきたことは、実はこれも、ご本人が認めてることなんですよね。
 ご本人の言い方だと「最初から、大統領のような都政」を目指したんだそうです。
 「大統領のような行政」は、日本の行政機構とも、議会運用ともミスマッチですから、どうしたって「強引な手法」になっちゃう。

 実はこれ、最初の都知事就任が決まった前後に、中曽根前首相からアドバイスされたことなんだとか。
 ちなみに、中曽根前首相から石原都知事へのアドバイスは、「大統領のような都政」の他に「都財政再建」や「破壊的な教育政策」もあったそうです。

 もちろん、中曽根前首相がどんな意図を込めて石原都知事に「大統領のような都政」をしろと助言したのかは想像するしかありませんけれど。
 真に受けたんだかなんだか、日本の行政機構や議会運用とミスマッチな「大統領のような都政」を本気でやっちゃったのが、石原都政


 石原都政の功罪の評価を言うにあたっては、幾つかの切り口があるでしょうけれど。
 アタシが思うには、主に2つのくくり方で集約するのがいいんじゃないか、と思います。

 1つは「ゴリ押しな政策実行手法で、都議会の審議を形だけのものに形骸化してきたこと」。
 もう1つは「12年に渡る長期都政の間に、都庁内に不必要な部署を設け実権を与えてきたこと」(例えば「青少年・治安対策本部」って異様な部門が典型)。

 どちらも「大統領のような都政」の手法でしたでしょうし、その結果、石原都政のゴリ押しスタイルが、悪循環的に強まっちゃった。もともと、日本の行政機構とはミスマッチなんだから、ゴリ押しになってくのも当然なわけで。悪循環して無理が累積してきた。
 結果をみると、中曽根前首相も、ずいぶん罪な助言をしたものです。都民にとっても国民にとっても、はた迷惑な結果の助言になっちゃった。


 今、各地の自治体議会で、政策の意思決定過程の透明化が求められてます。つまり、民主主義の形式だけではなくて、運用の民主性が求められてるわけですけど。
 石原都政のゴリ押し手法は、こうした流れに逆行するものです。

 政治的意思決定の不透明さ、説明責任を果たそうとしない高圧的な言動、熟議を拒む姿勢、こうしたゴリ押し行政が、12年間つもりにつもって、都議会の審議も形骸化を強めてきてる。
 これが、長期石原都政の功罪の要点だ、と思えます。