デイリー女装と性自認

 さて。ふと気づいてみたら、デイリー女装な暮らしをはじめて、概ね10年が過ぎてるアタシ。

 アタシは、戸籍上も♂だし、肉体的にも♂だけれど、性自認では自分がオトコと思えない。オンナのつもりで暮らしてる。
 いつの頃から性自認のズレを意識しだしたとかは、一口には書けないのだけど。一応、第2次性徴がうごめきだすより前から、性自認は不安定でした、とは書いておきます。
(できたら、いずれ、そうしたことも書きたいのだけど)

 10年前まで、会社勤めをしてた間は、オトコのふりして勤務してたけど。
 インナーはメンズでも、アウターは上から下まで、マニッシュなレディスでまとめて出勤。
 「インナーはメンズ」て言っても、JOKEYのスキャンツとか、Tバックとか、ともかくメンズ用のごわごわした感じでないヤツ。前あわせなんて、とんでもない。
 アウターは、シャツブラウスにストレッチジーンズ、靴もローファーみたいな。
 編集業務なんて、よっぽど改まった時でもないと、ビジネススーツなんて着ないから。

 と、まぁ、そんな風にして勤めてたのだけれど。
 退社は、ありていに言えばリストラだったんだけど、自主退社の形。
 そう言えば、退社間際に、面白いことがあったっけ。
 歓送会の前に、後輩の女子社員が、記念品をくれるって言ってくれて。何がいいですか? て言うから「何でも嬉しくいただくよ」みたいに言ったんだけど。話をしてるとなんかヘン。
 「夫婦茶碗とかどうですか」とかいろいろ言うんで、聴いてみた。そしたら、アタシは彼氏と一緒に暮らしはじめるんで退社するんだけど、彼氏の意向で専業シュフになる、みたいな噂が流れてたらしい(笑)。
 残念ながら、そんな事情じゃぁなかったんだけど。聞いたときは「えー??」て笑っちゃった。


 編集業もそれなりにストレスの溜まる仕事で。退社して数ヶ月は、命の洗濯……と言っても、怪我とかした獣がもそもそうずくまってる、みたいな感じで過ごしてた、ように記憶してる。
 どうにか細かな仕事をもらって、バイト感覚でこなしだしたのは、半年ほど過ぎようとする頃だったと思う。

 アタシが、デイリー女装にシフトしたのは、この半年間ほどの間のこと。
 それまで、勤めてた間は、週末女装的に、オフ日の夜に、女装で遊びに出かけてたんだけど。(編集業務って、またオフ日も不規則で、実際は「週末」とは限んないんだけど)
 今、思うと、デイリー女装は、心の平安を求めてはじめたんだと思う。

 ♂が、スカート履いて過ごしてたら、世間的には“ヘンタイ”ってことになるだろうけれど。
 アタシの場合、女装は性欲とは直接関係しない。
 そりゃ、なんかありそうな時は、勝負下着とか着けることはあるけどさ(笑)。そんなの純女さんだってすることじゃん。
 女装自体は、性欲と直接関係してるわけじゃぁない。まず、性自認と関係してる。
(もちろん、スカート履く履かないだけがもんだいなわけじゃぁない。ないんだけど、その辺のことはおいおい書いてみたい)

 “ヘンタイ”ってのは、「変態性欲」を略した言葉のはずなんだけど。
 そのことを知らずに使うのは止めてほしいものです。
 異性愛者だろうと同性愛者だろうと。

 知ったうえで、あえて使うなら、それはそれ。
 こちらも同性愛者だろうと異性愛者だろうと。
 「知らずに使う」のとは、別の話になります。

 アタシの場合、気持ちの平安を求めてシフトした(と思う)デイリー女装だけど。はじめてすぐに、オンナ経験値の低さに気づいた。
 例えば、スカート履いてて、かがむ時って、やるとみっともないことになっちゃう振る舞いってあるじゃん。
 週末女装の頃も、わきまえてるつもりだったんだけど。
 デイリー女装にシフトしたら、経験値が乏しいことに気づいたのだった。

 フェミニズム系の純女さんに、スカート敵視して、パンツしか履かない人がいるけれど。嫌がる気持ちはわかる気がします。
 ほかの人にまで「スカート履くな」みたいに言うのは、止めてよねだけど。面倒って気持ちはわかる。

 アタシの場合は、スカートを履くとかで得られる、気持ちの平安のメリットの方が、面倒さのデメリットよりも上回ってるだけ。
 そういうわけで、女装は、アタシの性欲と直接関係してるわけではない。
 アタシの性自認と関係してるのだわ。